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蛇足:僕はこう思ったッス「ソーシャルとリアル、そしてデジタルネイティブについて」 【増田(@maskin)真樹】

[読了時間:7分]

蛇足:僕はこう思ったッス

・)お邪魔します。一連のデジタルネイティブ云々の議論に興味を引かれつつ、正直「定義して意味あんの?」と感じました。

 自分は小学1年の時からプログラミングをやって中学でソフト販売、18歳で商業誌に寄稿するようになった際はメールで依頼があり、テキストデータで納稿。結婚式は世界初のネットライブ披露宴をやり、(MS社員の演出かもしれないけど)ビルゲイツさんから祝電もきた。英語版AOLにはまっていた流れで家内と出会い(日米間でチャット)、息子は入学前からUbuntuでネットサーフィンしています。DJはフルデジタル。確かに私の人生はデジタルによって大きく変わったというか、メインイベントにデジタルがからまないことは少ないくらいです。見方によってはコテコテのデジタル人だけど、スケジュール帳は紙だし、楽器演奏は生チェロ、生ピアノ、出会った全ての人に感謝する気持ちが絶えないし、家事育児もやり、子供や仲間との時間を何より大切にします。iPhoneだって必要に迫られて購入しているわけで、「デジタル依存はしてない」とは言わないけどフリーク的なものではないわけです。だから私は「自分はデジタルネイティブみたいなもの」と説明はするけれど、そうではないと思っています。だって、ITとかネットってもう当たり前のものだもん。




 ちなみに、私自身にネットの促え方に大きな変化があったのは2001年に米から帰国した直後です。プライベートで家族が倒れ赤ちゃんもいるので育児と看病と仕事を同時にこなすという大変な時期が何年も続き、栃木という片田舎にひきこもり、パソコンに向かうのは1日1時間程度と、凹みまくっていた時です。私を支えてくれたのは、リアルのご近所さんではなく日本いや世界中のあちこちにいる出会ったこともない人達でした。ブログの記事に共感してくれる人や雑誌や書籍の読者がネット経由で支援してくれることもありました。実際にそこから仕事に発展していき、今もずっと栃木で東京や海外のクライアントの仕事をしています。僕はこれをデジタルネイティブだからとは思いません。もちろんバーチャルなんかとは違い血がかよっていますし、私自身はむしろリアルご近所と希薄な交流しかしない人よりもリアルネイティブだと思います。

 アメリカのシリコンバレー地域では1990年代前半には、すでに地域の掲示版としてお母さん達ですらBSSを普通に使用していまして、公園なんかにいくと「昨日あのサイトに新しい機能が追加されてさ、、」「それよりすごいベンチャーが登場したのよ、便利なのよ」みたいな会話が平然と行われていたわけです。だから「Googleスゴイっす人生変わります」「Appleはこれだからいいんです」みたいなデジタル絶賛組が主役の日本は時間でいえば10年以上、致命的なほどに遅れています(もちろん北米にも世界にもフリークはいますよ)。ただ、そういう認識というか文化の差はとてつもなく大きいけれど、浸透度合いはもう同じくらいになっているはずです。GoogleとかYahooとかサービスを使うだけなら、日本でも小中学生だって普通にやっていて、大学生なんかが「Google使っているから俺たちすげえよ」とか言っていると小学生は嘲笑します“何が?”って。

 小中学校やPTAは、ネットのコミュニケーション(メールやチャット、ゲーム系SNS)には、極端な警戒感を示します。あれだけ事件事故が発生し依然おさまらないのだから当然です。これはIT大好きな人達(アーリーアダプター)のほとんどが真面目に認識しておらず、そんなことがあることを認めようとさえしない人もいます。「スマートフォン使えば」とか「あの機能を使えばいいじゃん」とかそんなことは一般ユーザーには非現実なわけです。事業者も「うちらは業界団体つくって協議したり努力します」とか愚行政治家かよと毒づきたくなるほどです。一方で、中学生なんかが「Twitterはもう終ってるよねー」とか言ってる現実もあるよと説明してもまず信じてくれません。アーリーアダプターというか自称デジタルフリークと、現実の普通の人のネット利用との乖離は依然としてすごいものがあると思います。デジタルネイティブのくせにそんな現実も知らないの?と皮肉っぽく思うこともあります。

 高齢者が面倒くさいパソコンやスマートフォンを使いこなるか疑問ですが、IP電話などなどネットワークやITの恩恵は自然と受けているわけです。デジタル技術を使いこなす米シリコンバレー主婦がネット民と定義されるわけもなく、そもそもネットだリアルと区別する発想そのものが終ってる感が充満していると思いますので、デジタルネイティブかどうかという話はやめたほうがいいんじゃないかと思うわけです。

 当初インターネットは相互接続型のネットワークのことでしたが、色々な解釈がされてきていました(最近の論調では、ウェブサイト=インターネットという人が多いように見えます)。そこに2000年以降CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)が登場しネットに個人が進出する土壌が醸成され、社会生活と親密度の高いサービスが増えてきた。それで、そこいら辺は「ソーシャルネットワーク」といえそうだ。それでいいんじゃないでしょうか?ムーブメントというか。

 その上の話として、FacebookとかTwitterとかmixiとかがいろいろサービスを展開するのは本当にエキサイティングです。ここだけにフォーカスすれば、インターネットのサービスが「人」を軸になることで、実社会により大きな影響が及ぼされるだろうという期待ができるからです。しかし、その期待感と現実の一般社会には乖離があります。そこにぶらさがる人と、そうでない人に認識の差は生まれるとは思いますが、それをデジタルネイティブかどうか定義付けるほどの差はないと思いますし、その程度でとらえた方が、発展につながるのではないでしょうか。

 ネットやITはバーチャルなんかではありません。小さきものに光を照て、人と人との縁をケアし、私達の生活を豊かに実りあるものにするものだと、僕は信じています。

■ 関連URL
・ソーシャルはリアルに傾くのか、デジタルネイティブは未来を生きているのか【湯川】
http://techwave.jp/archives/51526576.html
・蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】
http://techwave.jp/archives/51525441.html
・デジタルネイティブ世代と、オールドタイマーの狭間で感じること【鎌田慎也】
http://techwave.jp/archives/51526705.html

著者プロフィール:文筆家・イマジニア 増田(maskin)真樹

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 十代からメディアクリエイターとして企画設計からマーケティングまでマルチな才能を発揮。週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で活躍。雑誌ライターとして90年代を疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスの起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導する。

 数年間の休眠後、現在TechWaveのスタッフライター1号機として活動する他、書籍などを中心に執筆活動および講演活動を展開。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。DJやイベントオーガナイザー。スタートアッププロジェクトのアドバイザー等として活動。ユニークな経験、独自の情報ツール等を武器に、徐々にフルスロットル状態へ。

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