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1/26に、GREEが中国のネット企業Tencentとの提携を発表しました。
グリー、中国最大のインターネットサービス企業Tencentと業務提携
http://www.gree.co.jp/news/press/2011/0126.html
発表直後からtwitterでも話題になっており、同社の海外戦略への注目度の高さが見て取れるところです。以下、自学のため今回のGREEの提携を中心に、日本の三大SNS、mixi、GREE、モバゲー(DeNA)の中国進出についてまとめてみました。長文乱筆恐れ入りますが、興味ある方はぜひ。
今回、GREEの提携先として登場しているTencent社、日本ではあまり知名度がなく、いまいちピンとこない方も多いかもしれません。(もちろん、登録ユーザー数は6億4000万弱、アクティブユーザー数は4億人前後だ、と言われれば規模感には驚くと思いますが)。同社の中国での知名度は非常に高く、日本ではweb業界の関係者よりも中国株投資家の間で「成長株」としてよく知られていました。
同社について詳しく知りたい方は、以下の記事がわかりやすくオススメです。
シリコンバレー企業がTencentについて知っておくべきこと
※概論としてよくまとまっています。
※売上分析、ビジネスモデル、競合など、非常に充実した分析。参考になります。
もともと同社は「QQ」という名前のインスタントメッセンジャーサービスで拡大し、そのユーザーに他サービスを提供することで拡大してきました。QQの登録ユーザー数は6億4000万人弱。派生サービスとして、ポータルサイトやSNS、オンラインゲームを運営しています。そして、近年同社の有力な収益源として挙げられるのがアバターやバーチャルアイテム、そしてオンラインゲームからの収益です。もともとポータルの広告収益などでも成功していたところ、あるいはその高い利益率(Tencent社の最近の値は約70%前後)を踏まえるとGREEとのビジネス面での方向性は似通っている印象があります。
興味深いのは、その戦略も非常によく似ている、という点です。GREEとTencent社の重要な共通点、それは「オープンプラットフォーム戦略の体現者」ということでしょう。GREEもTencent社も、自社の内製コンテンツにこだわりをもってはいましたが、いずれもその門戸を開放することで、プラットフォーマーとして更なる成長をとげています。
プレスリリースによれば両社今後は互いのSmartphone向けプラットフォームの仕様を共通化し、ひとつのコンテンツを両プラットフォームに展開できるようにする、とのこと。基本的には、Smartphone自体を見据えてのコンテンツ充実、外部パートナー(GREEにソーシャルアプリ・ゲームを提供するデベロッパー)の惹きつけ、というポイントがありそうです。やはり、Tencent社のもつ膨大なユーザー数は、外部パートナーにとっても魅力的であり、この共通プラットフォームに参加することは有力な選択肢となるでしょう。
なお、GREEのプレスリリースでも触れられているとおり、2010年11月、東アジア中心に4000万ユーザーをもつSNS「mig33」にも出資をしており、おそらくこちらとも同様の提携を進めていくのでは、と見られています。
[jp]グリーがシンガポールに拠点を置く携帯SNSのmig33に出資——初の海外投資案件
最近、米国子会社進出の話題もあったGREE。
今回のTencentとの提携で、アジア圏では大きな存在感を示した、と言えそうです。
というより、中国進出においてこれ以上のカードはそう無いのでは? とも。
個人的には、北米・欧州市場でも同様の提携を目指すのか、あるいは引き続きアジア圏に注力するのか、が気になるポイントです。日本国内での展開もかなり手堅い同社、こうした提携を更に拡大していく、というのもありそう。うまくいけばGREEを軸に有力なSNSが繋がっていく「SNSプラットフォーム」化というのが、この先には見えてきそうです。ある意味、Facebook帝国に対するGREE共和国?
と、やや話を広げすぎましたが、いずれにしても、2011年はGREEにとって海外進出本格化の年になりそうですね。注目。
さて、以上のようなGREE・Tencentの提携を踏まえ、日本の同業他社の中国進出についても触れておきたいと思います。
まずmixiについて。
以下の記事の最後で触れられているように、mixiは中国進出ではGREEに先行しており、2010年9月に中国大手SNS「Renren」(http://renren.com/)を運営するOak Pacific Interactive社との提携を発表しています。
※記事末尾のmixi-Renren提携への言及あり。湯川さんのコメント、いつも大変勉強になります。
興味深いのは、mixiが最大手Tencentではなく、Renrenを選んだ、とされる理由。上記の記事によれば
・Tencentはネット企業としては最大手だが、必ずしもSNSで強いわけではないこと
・TencentのSNSはいわゆる「自由参加のコミュニティ型」であること
・大都市圏ではRenrenの方が普及していること
という3つが挙げられています。こちらの詳細はともかく、mixiはRenrenを選んだ訳です。なお、Renrenはmixiのプレスリリースによれば1億5千万ユーザーを抱えている、とのこと。仮にこちらがmixiの重視する「良いソーシャルグラフ」を形成いているとすれば、やはり魅力的なプラットフォームです。
「Cyworld」「Renren」「mixi」でパートナー向けのより大きな市場の形成を目指して
なお、こちらの提携も「ソーシャルアプリのプラットフォームの共通化を進め、ソーシャルアプリケーション プロバイダー(SAP)が容易に(複数の)プラットフォーム上で事業展開できる仕組み」。mixiの場合、同様の提携を韓国最大手のSNS「Cyworld」やドイツの「Vznet」(ファーツトネット)とも結んでいますから、SNS各社の提携戦略としてもはや定石化しているといってもいいでしょう。
こうしてみると、mixiは中国・韓国・ドイツと非英語圏に強い印象があります。これは意図的なものでしょうか?
Facebook日本進出を踏まえ、同社がどのような海外展開を進めていくかは興味深いです。mixiは今のところ、この大きなプラットフォームにおいて純然たる「ソーシャルネットワーキングサービス」の提供者であることを自負しているように見えます。そのため、内製ゲームなどは出していない状態です。mixiにはZynga社の超有名タイトルFarmVilleの日本(語)版が提供されています。この点から、Facebookに近い「リアルな友人同士」が楽しめるゲームやアプリ、あるいは「良いソーシャルグラフ」を活かした広告、キャンペーンなどに特化していくのではないか、と考えています。
根強いファンが多いmixiなだけに、独自色をどう活かしていくか、注目です。
さて、最後はモバゲーを運営するDeNAについてです。
同社は若干毛色が異なり、2010年7月に中国の携帯SNS「天下網」を買収、子会社化しています。
Breaking: DeNA, Japanese Leading Mobile Social Networks Buying Chinese Tianxia
実は、DeNAは2006年11月に独自に中国に子会社を設立、2007年2月には携帯SNS「加加城」というサービスを展開していました。
DeNA北京、中国におけるサービスの提供を開始〜携帯電話専用無料SNSサイト「加加城」を開設〜
しかし、以下の記事で触れられているように、「加加城」のユーザー数は数十万規模にとどまり、単独拡大から「天下網」買収による拡大に方針転換した、とみることが出来そうです。
※買収への経緯、当時の状況などがわかりやすいです。
DeNAは米国ngmoco:)買収などから「海外進出=買収」のイメージが強いのですが、こうした2段構え、3段構えのパターンが多いです。(米国でも同様に、独自進出→数社の資本業務提携→キープレイヤー買収、という流れ)。
なお、「天下網」のユーザー数は買収発表段階では900万人、現在は1800万人程度。上記2社に比べるとかなり小規模です。これは、同サービスがモバイルSNSであることが大きいかもしれません。中国では3Gサービスが2009年に本格化、携帯でのインターネット利用は成長中、といったところです。
※中国における携帯ネット人口の増加などのデータ多し。
なおDeNAの中国戦略については、先日このような報道がされていました。
Japanese Mobile Phone Gaming Platform To Enter China Next Month
※mobageプラットフォームとしての参入についてを報じている
Leading Japanese Mobile Social Games Platform, DeNA, Plans its First Move into Chinese Market
※DeNAやmobageについての解説記事。平易で分かりやすい。
端的にいうと、DeNAのもつ「Mobage Open Platform」(米ngmoco:)のPlus+を改称、日本のモバゲータウンと統合した世界ブランドの名称)に、近々、中国の外部デベロッパーがアプリを公開できるようにする、というWang Yong氏/CEO, DeNA China Technology Companyのコメントが紹介されています。
これは視点としては中国側の外部デベロッパーに朗報かもしれません。「mobage」は、Plus+ network/米ngmoco:)に登録する北米のiPhoneユーザー1750万、あるいは日本のモバゲータウンの携帯ユーザー2000万に対してゲームを公開できる(かもしれない)という話題だからです。(規模感では中国が圧倒的ですが、端的に売上や1ユーザーあたりの課金額を考えると、北米/日本市場はかなり魅力的かも)。
「mobage」は(日本市場以外の)Samsung製Android端末への搭載も予定されているため、中国でのSmartphoneユーザーの拡大も追い風になるかもしれません。
なお、ngmoco:)やPlus+については以下をどうぞ。
「モバゲー」スマートフォン版公開 Samsungと協力して海外展開も
※DeNAの国際戦略、「mobage」について詳しい記事です。
update:ディー・エヌ・エーのngmocoの買収は本当だった——買収額は最大で4.03億ドル
※DeNAの米子会社ngmoco:)とその買収、Plus+について分かりやすく紹介されています。))
DeNAの場合、自前のプラットフォーム拡大が海外戦略の軸になっています。海外の大規模SNSとの提携を主とするmixi、GREEとは若干異なるのは、企業として戦略からでしょうか?
今後は買収したネットワーク同士の統合やSamsungとの提携での端末搭載の成果がどう出てくるか、がポイントとなりそうです。
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(追記)
先ほど、DeNAとGREEの中国進出を比較した記事を見つけました。
こちらも分かりやすくまとまっていたのでご紹介を。
グリーのTencentとの業務提携にみる、グリーとDeNAの中国戦略の比較
2社の中国での活動スタイル、特に投資や業務提携の形からGREE-TencentとDeNA-天下網の組み合わせではGREEが一歩先を行っている、との分析。投資家目線からの整理が大変分かりやすいです。
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以上、日本のSNS3社の中国戦略をまとめてみました。なにぶん、浅学な学生のまとめたものですので抜け漏れ、誤りなどがあるかもしれません。ぜひご指摘いただければと思います。以下にtwitterアカウントを記載しますので、叱咤激励、ご助言ご指摘などお待ちしております。
twitterアカウント
http://twitter.com/edy_choco_edy
長文乱筆、ご容赦を。最後までご覧いただきありがとうございます。
(注記)なお、私は現在DeNAにてインターンをしておりますが、同社インターン等を通じて業務上知りえたことは一切ここには反映しておりません。全て一個人としての見解であり、内容の正確性については最大限努力しておりますが、保証することはできません。また、ここに記載されているリンクについてはご自身の判断でご利用ください。悪しからずご了承お願いいたします。
著者プロフィール:田中翔太(たなかしょうた)@edy_choco_edy
都の西北にて国際ビジネス法を学びつつ、ソーシャルゲーム/webサービス周りで働く2012卒就活生。
現在はDeNAにて週3日、某有名ソーシャルゲームタイトルの企画・分析・運営のインターン、リクルートにてHR領域の新規SNS事業立案のインターンなど。twitterアカウントは@edy_choco_edy
早稲田大学法学部3年。浜辺陽一郎(国際ビジネス法)ゼミにて幹事長。国際法務(国際取引法、諸外国の会社法制、独禁法の域外適用、海外子会社の内部統制・コンプライアンス)などを中心に専攻。総合電機メーカー法務部、DeNA
サマーインターン、リクルート(web領域)インターン、シリコンバレー訪問(twitter社、ngmoco:)社、Booyah社、Sequoia
Capital 、500startups)訪問などを経て、ソーシャルゲームやwebサービスに目覚める。2012年卒DeNA内定者第1号。趣味は散歩。