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おサイフケータイと言えば、日本が世界に先行するモバイルアプリケーションの分野。ところが日本の携帯電話に搭載されている非接触型IC技術と同様のNFC(近距離通信)と呼ばれる技術がスマートフォンに搭載され始めた。またこれをきっかけに、世界のIT大手がモバイル決済サービスに乗り出そうとしている。世界のIT大手の参入で、リアル店舗での決済やマーケティングに大きな変化が起きる可能性がありそうだ。
米Bloomberg通信によると、米書籍販売大手Amazon.comがモバイル決済サービスの検討を始めたという。Amazonは、オンラインのコマースで培ったノウハウやブランド力を、モバイル機器を使ったリアル店舗でのコマースにまで応用しようと考えているようで、その一環としてスマートフォンに搭載され始めたNFCの「おサイフケータイ」的な利用方法の検討を始めているという。
米Microsoftも、モバイル決済機能を搭載したモバイルOSの開発を進めており、年内発売予定のWindows Phoneには標準搭載される見通しという。携帯電話メーカー大手のNokiaとの協業が見込まれている。またNokia自体も、NFCを自社開発のモバイルOS「Symbian」搭載スマートフォンの2011年の標準機能にすることを明らかにしている。(関連記事:Microsoft Is Said to Plan Mobile Payments in Phone Software – Bloomberg)
Googleは、自社主導で開発した最新鋭スマートフォン「Nexus S」にNFC技術を既に搭載済み。マスターカード、Citygroup、それに店舗側のリーダー端末を開発するVeriFone Systemsと共同で、モバイル決済の仕組みを開発中といわれている。まだプロジェクトの初期段階だが、サービスは年内にもローンチされる見通しだそうだ。Googleは決済手数料を取らずに、店舗側からの広告やクーポンの出稿代金を取るようなビジネスモデルにするものと見られている。(Google Pursues Role in Mobile Payments – WSJ.com)
またGoogleは、米シアトルでNFCを使ったマーケティングの実験を始めている。参加する店舗は「Recommended on Google(グーグルに推薦されています)」と書かれたポスターをショーウィンドウに張ることができる。このポスターには超小型NFCチップが貼り付けられていて、Nexus Sでタッチすれば、その店舗のおすすめ情報やクーポンが入手できるようになっているという。(Google LatLong: Trailblazing in Portland)
同様のマーケティング施策は、日本のミクシィも既に実用化できる段階になっている。(mixi、リアルなモノにチェックインできるAndroid2.3向けサービス公開 : TechWave)
一方、個人間少額決済大手のPaypalは、iPhone同士をコツンとぶつけるだけで、個人間の決済ができるSendMoneyと呼ばれるサービスを始めている。iPhone同士をコツンとぶるけることでTwitterアカウントなどを交換できるBumpと呼ばれる人気アプリの技術を応用した。(Could PayPal bump NFC’s P2P ambitions into touch? • NFC World)
AppleはNFC技術をiPhoneに搭載する方向で技術開発を進めているが、詳細は明らかになっていない。モバイル決済だけではなく、パソコンとの同期などにNFC技術を応用することなども検討しているようだ。(How the iPhone, NFC and Mac App Store Will Enable Remote Computing [Exclusive] | Cult of Mac)ただ次世代iPhoneにはNFCは搭載されないといわれている。(Next iPhone, sans near field comms – Hardware – News)
米国では、おサイフケータイ的なモバイル機器の利用はまだそれほど普及していない。ただQRコードを使った決済などの利用は一部で始まっており、米スターバックスが店頭での支払いにスマートフォンの画面にQRコードを表示する仕組みを採用したところ非常に好評で、3ヶ月で300万人が利用したという。これを受けてQRコードがマーケティングを大きく変えるのではないかという意見も出始めている。ただQRコードが普及する前に一足飛びにNFCを通じたコマースへと移行しようという動きもある。Googleは店舗情報のデータベースGoogle PlacesにこれまでQRコードを掲載していたが、先ごろNFCの導入を考慮してQRコード表記を削除している。(関連記事;Google Officially Ends Support For QR Code in Places)
米調査会社Gartnerによると、2014年には世界のモバイル決済のユーザー数は、3億4000万人、モバイルユーザー全体の5%になる見通し。決済総額は2450億ドルになると予測している。
AmazonのオンラインのECとオフラインの店舗のビジネスを合体させるという考え方は非常におもしろい。Googleが決済手数料を取らないというビジネスモデルも興味深い。世界のIT大手がおサイフケータイ事業に参入することで、今までなかったような利用方法やマーケティング施策が次々と登場してくるのだと思う。オンラインtoオフラインのビジネス領域が一気に広がるかも。
気になるのは、AppleがiPhone5にはNFCを搭載しないもようということ。やはりAppleがNFCを搭載する時期が、オンラインtoオフラインの事業領域に大変革が訪れる時期だと思う。