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「最近の業界用語を知らない人も多いし、アドテクが普及する前の、2,3年前の日本の状況に近いですかね」ー。2月22日から24日までインドの首都ニューデリーで開催された「ad:tech New Delhi」に、日本企業で唯一出展していたadingoの小澤昇歩さんはそう語ってくれた。
米調査会社comsCoreによるとインドのネット人口は約9000万人。数字だけ見るとものすごい数だが、インドの人口は12億人。10%にも満たない普及率だ。
さらにあるメディア企業関係者は、名前を出さないことを条件に「実際にはもっと少ないはず。実感値だと5000万人くらいじゃないか」と語ってくれた。
ad:tech New Delhiの入場者数はまだ正式に発表されていないが、恐らく3000人前後。日本のad:techより一回り以上小ぶりだ。小澤さんの言葉が、インドのネット業界の今日の表面上の全体像を表しているのだと思う。
ただ一方でインドほど多様な市場はない。一言で概要を総括できる市場ではないということも事実。個別には、アドテク周りで目を見張る動きもある。個々の企業の話については、今後何らかの形で発表していきたい。
ところで多くの人と話する中で気になった話が1つある。携帯電話の4Gがインドの一般大衆にも受け入れられるような低価格帯で年内にもスタートするといううわさだ。最初に事情通のVCからその話を聞いたときは単なるうわさとしてあまり真剣に考えなかったのだが、別の大手企業の幹部からより詳細な話を聞き、大きな可能性を感じるようになった。
インドでは3Gはそれほど普及していない。2Gの利用者が7000万人に達しているというのに、3Gのユーザーは700万人程度しかいないという。鳴り物入りで始まった3Gだが、普及に手こずっているようだ。
インドの業界関係者によると、その理由は単純に価格にあるという。2Gだと月額300円程度なのに、3Gだと800円から1300円くらいの料金になる。人によっては月給の半分くらいの料金だ。これでは一部の富裕層にしか普及するはずがない。
3Gがこうした価格帯になったのは、3Gに期待が高まり、財閥系を中心とした通信事業者間が一斉に公開入札に参入、3G電波帯域の利用料が競り上がったため。通信事業者が政府に支払う高額利用料がペイするには、消費者が通信事業者に支払う利用料金も高めに設定せざるをえなくなったのだという。
ほとんどの財閥系の大手通信事業者がこの競争入札に参加して大金を失う結果になったのだが、その入札に参加しなかったのがMukesh Ambani氏率いる財閥系のReliance Industries社だ。Ambani氏は3Gを見送り、代わりに4Gに全力投球してきた。同社は唯一、インドのほとんどの事業領域での4Gライセンスを取得できたらしい。
このAmbani氏なのだが、長期的視野に基づいて投資ができるというもっぱらの評判だ。
ある実業家は「10年前にインドの電話料金を革命的に値下げしたのもMukesh。1回の電話料金が15ルピー(約25円)もかかっていた時代に、1ルピー(1.6円)に設定した。業界関係者は、そんな料金設定ではなりたたないはずって批判した。その後Reliance社内の紛争などいろいろあったが、結局今は、Mukeshが思ったように1回1ルピーになっている。彼は長期的視点から投資ができる数少ない実業家だ」と語る。
そのMukesh氏が4Gに乗り出すのである。10年前の電話料金を革命的に引き下げたときのように、思い切った料金設定で4Gを一気にインド全域に広めるのではないか、という期待が高まっている。
もし12億人という巨大な人口を持つインドで、こうした期待通りの価格帯で4Gが始まれば、いったい何が起こるのだろうか。
ハード、ソフトの両面で巨大な市場が登場する可能性がある。注意深く見守っていきたい。
今回から数回に渡ってインドの記事を執筆したいと思います。インドに行く前から、インドってこれからすごいことになるんじゃないかって期待を持ってたんだけど、実際に行ってみてその期待が確信に変わった。21世紀にインドは間違いなくシリコンバレーを超えるイノベーションセンターになるのだと思う。そう確信するに至った経緯を、これから数回の記事で書いていきたい。
その予告編(?)はこの記事。ITはアーリーアダプターのものにあらず インド発テクノロジーが世界を目指す