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シリコンバレーの老舗ベンチャーキャピタルKleiner PerkinsのMary Meeker氏のプレゼンテーションが、ネット業界の「今」を概観する優れた内容であるとして過去に大きな話題になったことがあるが、先ごろ行われた米Wall Street Journal主催のイベントAll Things Dカンファレンスでの同氏のプレゼンテーションの内容も非常に興味深い。すべてのスライドがBusiness Insiderにアップされているので、時間のある方はぜひ全部ご覧になっていただきたいが、その中で私自身興味深く感じたスライドを幾つかピックアップしてみた。
中国、インドを核にしたアジアの時代
2008年から2011年までの3年間におけるネットユーザーの増加を国別で見たグラフだが、やはりアジアの伸び率が半端ない。上位4カ国は、中国、インド、インドネシア、フィリピンと、アジア諸国が独占している。
中でも突出しているのが中国で、3年間で2億1500万人がネットを始めている。2位のインドの3倍の数字だ。
2011年現在でのユーザー数は中国が5億1300万人で、米国の約2倍。
普及率で見ると米国は79%とほぼ飽和状態だが、中国は38%、インド10%と、中国、インドともにまだまだ伸びしろがある。
ケータイ大国日本は健在
3Gの携帯電話のユーザー数では、米国が2億800万人で首位。日本は1億2200万人で2位。しかし普及率では日本が95%とダントツ。高速インターネットが可能なケータイを使ったアプリやサービスのテストベッドとして日本は最適の場所と言える。
Androidのシェア急増
iPhoneが発売されてからのスマートフォンのOSごとのシェアを4半期ごとに追ったグラフ。Androidのシェアの伸びが加速度を増しており、iPhoneとの間に大きな差が生じつつあることが分かる。
FacebookのOpen Graphの効果
このプレゼンテーションでわたしが一番興味を持ったのがこのグラフ。Facebookがユーザーの人間関係のデータ(ソーシャルグラフ)をサードパーティに開放し、そのデータをもとに友達が今何をしているかが「ニュースフィード」に表示される仕組みのことを「Open Graph」と呼ぶが、このOpen Graphがどの程度の新規ユーザー獲得力を持っているのか具体的なデータが公開されることはこれまであまりなかった。
Open Graphとは、例えばOpen Graphに準拠したアプリを使って音楽を聞けば「〇〇さんが〇〇という曲を聞いています」という情報が、友人のニュースフィードに流れる、という仕組みのこと。「〇〇さんが〇〇という記事を読んでいます」「〇〇さんがジョギングしています」「〇〇さんが〇〇のレシピを使って料理をしています」といった具合に、ユーザー自身が文章で情報を発信しなくても、Open Graphに準拠したアプリが自動的に情報を流してくれるようになる。
このOpen Graphに準拠することで、スマートフォン向け動画共有サービスとして人気急上昇中のviddyがどの程度、新規ユーザーを獲得したのかを示すのがこのグラフだ。Open Graphに準拠し、友人がviddyを使って動画をアップしたという情報がFacebook上に流れるようになってから、わずか7日間で1700万人のユーザー増につながったのだという。
情報が友達を通じて流れることで、どの程度の影響力を持つのかが示されたことになる。
今までは新しいアプリに関する情報は、ニュースメディアや専門ブログ、AppStoreやAndroidマーケット(Google Playに改名)を通じて入手することが多かった。AppStoreの人気ランキングに入れば、さらに多くのユーザーを集めることができるため、アプリ開発者はとりあえず一瞬でも人気ランキング入りを目指したものだ。
それが今回のこのグラフのように、Facebookの友人関係を通じて流れた情報に影響されるユーザーが多いことが明らかになりつつある。ニュースメディアや専門ブログ、AppStoreランキングなどだけに頼る必要がなくなってきたわけだ。
これはアプリプラットフォームとしてのAppStoreやGoogle Playの影響力の低下の可能性を意味するし、さらに言ってしまえばマスコミやポータル、インフルエンサーなどといった上から下への情報の一方通行の流れの影響力の低下の可能性をも意味することになる。
「上から下への情報の流れ」vs「横同士の情報の流れ」。この2つの情報の流れ方が、消費行動に与える影響が今後どのように変化していくのだろうか。Facebookなどのリアル・ソーシャルグラフの普及に従って詳細なデータが入手できるようになる中で、影響力の変化が広告・マーケティング予算の変化につながっていくのだと思う。