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2~6歳対象 デジタル世界を学べるiPadアプリ「kinderpan (キンダーパン)」、親と子の豊かな日常のためのプラットフォーム 【増田 @maskin】


[読了時間: 2分]

 デジタル機器に対する子どもの関心や対応の速さには目を見はるものがある。2歳にもなれば、iPad/iPhoneの操作にも慣れ、小学生になるころにはYouTube動画が友達との話題にも上がり出す。

 しかし、現在のコンテンツは、子どもを遊びに没入させるばかりで、“デジタル” や “インターネット” の良さを理解させる仕組みが適切に提供されているとはいいがたいのが現状。子をもつ親としては、ゲームだけでなく、ITやネットの良いところを体験し、現実の生活を豊かにし、成長に役立てたいと思っているのに、なかなかそういう機会がないのだ。

 ファンタムスティック (Fantamstcik) が11月13日に公開したiOS向け無料アプリ「Kinderpan(キンダーパン)」は、一見すると単純な知育系アプリなのだが、親と子の関係を強固にしつつ、世界に拡がるインターネットとの関係を自然と学ばせてくれる仕組みが用意されている。

作り込まれた世界観


 アプリはまず保護者のユーザー登録ありき、その後、子どもがアバターを作成し、それをユーザーアカウントとしてログインして利用する仕組み。保護者は8人まで、子どもは3人まで登録することができる。

 子どもが自分のアバターを選択すると、冒頭のようなメイン画面が表示される。非常に作り込まれた世界観で、画像と音声も自然の素材にこだわり、動きもユニークで子どもなら見ているだけで触りたくなる雰囲気になっている。

 メイン画面は一種のメニューになっており、左右のスワイプでコンテンツを切り替えられるような仕組みで、左なら知育コンテンツ、右なら世界のユーザーとの交流という具合。

 以下は知育コンテンツの画面。公開時点で3つの作品が利用できるようになっている。いずれも触ったり、親と一緒に楽しめるようなもの。


自然と学べるITコミュニケーション

 メイン画面の下部にカエルがペターっと張りついているが、これをタッチすると「お絵描き」機能が立ち上がる。アルファベットやひらがなをなぞったり、自由に絵を描いたりすることができるもの。

 iPadの写真を撮影して、そこに上書きする形で文字や絵を描くこともできる。

 このような作品は、親や家族にとって全て見ておきたいものだが、普通のお絵描きアプリでは機能がなかったり、子どもには到底送付できないような煩雑な手順でしか実現できないのが常。しかし、「Kinderpan」には2タップで登録されている保護者だけにメールで送信できるようになっている。

 こうした子どものITコミュニケーション体験支援として、世界のユーザーとの簡易的な交流を実現する機能もある。子どもたちが各自でデザインしたアバターを見られるというもので、住んでいる地域の国旗からその国のことを学ぶこともできるようになっている。

 ファンタムスティック社のCEO 兼 ファウンダー シェイン・ベルトン (Shane Belton) 氏は「このアプリを通じて、“今日は、アメリカのTamくんと友達になったよ” といったような会話が日常で行なわれるようになって欲しい」と語る。

「ITでリアルな親子の関係を豊かにしたい」

 シェイン氏は語る「デジタルコンテンツには問題が沢山ある。まず、子どもにやらせるというだけで、親の抵抗に会うのではないか。それなら、親も安心してやらせることができ、かつやらせることでリアルな生活が豊かにすることはできないか、という思いでこのアプリを作りました。

 デジタルというと、型にはまるばかりで子どもの創造性を欠落させてしまうコンテンツが多いと思うのですが、日常にある子どもたちの身の周りのものを活用することで、想像がふくらむ素材を多数盛り込みました。

 こうすることで、子どもたちは “アプリの世界にだけ没入するのではなく” 日常の世界で創造性を発揮したり、親とのコミュニケーションを活発に取るようになるんです。

 もちろん「Kinderpan」でも、ITネットとリアルの関係性を深める試みとして、知育コンテンツに出てくるキャラクターや紙相撲のペーパークラフト素材をPDFで提供して、印刷して親子で実際に楽しんでもらえるようなこともやっていきます。

 あくまで子どもと親が主役、それに取って変わるようなサービスを提供するのではなく、「Kinderpad」を必要がある時に使ってもらって、それらを通じて、子どもとの距離感を埋めていってもらいたいと考えているんです」。

 2-6歳に限定した教育プラットフォームは世界を見ても皆無に近い状態。シェイン氏率いるファンタムスティック社は、知育コンテンツ販売プラットフォームを提供し、そこでの学習状況を保護者がチェックできるなどの機能で子どもたちへの関心を高めてもらえるようにと考えている。市場を切り拓くことができたら、コンテンツプロバイダー等との連携も視野に入れている。

 現在の「Kinderpan」は、開発期間はたった4か月の、いわばシェイン氏が描く構想の雛形。今後、利用状況を見ながら、機能やコンテンツを拡充していく考え。特に、子ども達が親を交じえ安全にコミュニケーションできる機能は「良いものにしていきたい」(シェイン氏)とのことだ。

【関連URL】
・Kinderpan | iTunes App Store
https://itunes.apple.com/jp/app/kinderpan/id563146305?mt=8
・キンダーパン(Kinderpan) | 親と子をつなぎ心と知能を育むアプリ
http://jp.kinderpan.com/

蛇足:僕はこう思ったッス

小学から高校まではネット戒厳令がしかれたままの状態。なぜか日本IT業界では、この大問題に真っ向から立ち向かい良くしていこうという動きがない。問題は親にあるとも言えるが、実は2-6歳、そして小学校低学年あたりの教育期間や学童、PTAなどは「デジタルは触れさせたくない」という意見が多数を締めている状態が続いている。「Kinderpan」は、まさにその課題を的確に認識し、世界規模で変えていこうという野心的なサービスといえる。ただ、規模があればいいという発想のものではなく、親でもあるシェイン氏の愛情あふれる、子どもと親の豊な日常のための新しい世界が始まったということだと理解している。
著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 夢を叶える技術者。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてのIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。活動タグは創出・スタートアップマーケティング・音楽・子ども・グローカル・共感 (現在、書籍「共感資本主義」執筆中)。書籍情報・ 詳しいプロフィールはこちら


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