民泊の情報提供を行う、AirDNAジャパンのファウンダーでジェイピーモバイル株式会社 代表取締役 CEOの田中 良介氏にインタビューを行った。
民泊物件のリアルタイムデータを提供
AirDNA社はカリフォルニア・サンタモニカで創業し、世界4250都市、200万件を超えるAirBnBの物件を毎日クローリングすることでデータベース化している。今回ジェイピーモバイル株式会社は、AirDNA社と日本国内で物件情報を活用する独占契約を結んだ。
AirBnBに登録された物件データを地域ごとに分析し、リポートを販売。物件数の推移や空室率、物件面積別の1ヶ月平均収入額などの情報を提供する。民泊運営事業者は、競合状況の把握や収益予測など、運営に役立てることができる。不動産事業者は民泊事業者向けに不動産の運用・収益予測を提示できる。
日本のデータは、過去1年間で合計2万部屋以上を調査し蓄積されている。田中氏によると、過去1年間以上のデータを保有し、時系列でデータ分析が可能なのは世界でAirDNAのみとのこと。現在、レポートは東京、大阪のみの提供だが、5月以降は日本全国のデータの提供を開始する。
金融機関を辞め、起業したわけとは
ジェイピーモバイル株式会社の社長を務める田中氏は、シドニー大学を卒業後、アーンスト・アンド・ヤングフィナンシャルサービス株式会社、オーストラリアの投資銀行のマッコーリーキャピタル証券株式会社、ウェリントンマネージメント・ロンドン支社に勤務後、起業。
起業した理由について尋ねると、
「金融機関に勤めていると、報酬も高い。それを捨ててまで起業したのは、金融機関に勤めているとお金が右から左に流しているようで会社の実態が見えないと感じていた。上場企業の投資家の場合は、既に行われたことを元に投資判断をする。過去の情報を元に将来を予測することに限界を感じていた。」
「リアルの世界の中でどういう意思決定が行われていて、どういう将来の予測をたてているのかを知りたい。実際にやってみたい、と思うようになっていった。」
「人生は一度しかない。一からものを作るということに対して、達成感が違うと思った。買った株が上がった場合は、運かもしれないし、本当に自分の読みがあたったのかもしれない。
しかし、事業はそうではない。事業は運の要素はそれほど多くはない。人が集まるのも金が集まるのも自分次第。そこに魅力を感じた。」と語ってくれた。
COOはメタップス社の執行役員も務めた婁飛氏
ジェイピーモバイル株式会社の取締役最高執行責任者COOは、2015年8月に上場したメタップス社の執行役員も務めた婁飛氏。
上海、台湾、香港にも法人があり、AirDNAジャパン以外にもSIM販売事業や、民泊支援事業として民泊ホスト専用のモバイルWIFIルーターを提供する民泊WiFiサービスを行っている。従業員は各支社を合わせて30名ほどで、田中氏自身は海外と日本を行ったり来たりしている生活のようだ。
「最初は面白そうだなと思って始めた事業が、出会う人と話し合う中で、どうやったら受け入れられるか、どうやったら売れるのかを考えた結果として今のところにたどり着いた。」とのこと。
民泊向けサービスを提供していく中で、今回提供を開始したAirDNAジャパンにたどり着いたとのこと。このビッグデータを活用したビジネスは、いくつか構想があるようだ。特にデータビジュアライゼーションなど、デザイン、エンジニアリングには、注力していきたい分野の一つのようだ。訪日外国人の観光行動を分析できるツールではナイトレイがあるが、民泊に絞ったデータビジネスは興味深い。民泊関連では、株式会社百戦錬磨が総額約14億円の資金調達を発表している。当該分野でのビジネス展開は今後も目が離せない。