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2万人を集めるテックイベント「collision」が2017年5月2日から4日にかけて米・ニューオリンズで開催されました。
スタートアップや企業のイノベーションをリードするエクゼクティブが集結するこのイベントですが、日本からの参加は極めて少ない状態。TechWaveでは特派員を派遣し、ここでしか読めない特別レポートをお届けしています! (第1弾・第2弾・第3弾)
オグルヴィ女性CMOが語った、第2のユナイテッド航空にならないためのブランディング改革ーニューオリンズのビックイベント「collision」特別レポート第4弾
第4弾は「ブランディング」のステージについてお届けする。オグルヴィの女性CMO、ローレン・クランプシー氏が登壇し、ブランディングについて語った。今はわずかなミスがブランド崩壊を招く、CMOにとって酷な時代だ。ましてユナイテッド航空のような事件が起きてしまっては…
セッション登壇者
[スクリーン&座席左]
Lauren Crampsie (ローレン・クランプシー): Ogilvy Global CMO
[座席右] インタビュアー
Matt Vella (マット・ベラ): TIME Magazine Executive Editor
ブランディング改革は社員一人ひとりが重要
マット・ベラ(TIME Magazine): 今、もしかすると一番CMOになるのがタフなんじゃない?
ローレン・クランプシー(Ogilvy): 本当にそう。私なんてエージェンシーのCMOだからバジェットもないし(笑)。今、消費者は実に多くの選択肢に囲まれていて、ブランディングが果たす役割は極めて高いわ。ユナイテッド航空やペプシがいい例だけど、本当に一瞬で崩壊する。
マット・ベラ(TIME Magazine): そんな中で今後変化していく、または改革が必要なことってなんだろう?
ローレン・クランプシー(Ogilvy): まず一つは、消費者が自社ブランドの一番のオーディエンスだという概念を変えること。社員一人ひとりがとても重要。社員がブランドを作っているということと、社員が将来クライアントになることもあり得るからですね。
もう一つは、失敗を受け入れること。ブランドもエージェンシーも失敗した時にちゃんと失敗を受け止めて次のアクションに活かす。いつも上手くいくわけじゃないから、失敗してもいいんだと関係する全員が受け入れることはとても大事ね。
マット・ベラ(TIME Magazine): 社員を大事にするっていう点についてだけど、社内へのメッセージは誰が発信すべき?どうやるのが効果的?
ローレン・クランプシー(Ogilvy): ビジョンを理解することは社員全員の仕事。だけど苦境にある時、変化の時にはやっぱりCEOがメッセージを出すべきだと思うわ。それをサポートするのが、CMOの役割。人間ってやっぱり変化はストレスに感じるから。何か大きな変革をする時にはCEOがメッセージを発信することが社員の信用にもつながると思う。
マット・ベラ(TIME Magazine): CMOとして既存ブランドと新規ブランドどっちで働くのがいい?
ローレン・クランプシー(Ogilvy): うーん、難しい質問ね。CMOの観点からすれば、新規ブランドの方がいいかな。ただ、新規ブランドのほとんどは、プロダクトとユーティリティだけに注力している。ブランディングが手薄だと、やがてプロダクトがコピーされて知らない間に競合にブランドを確立されてしまう、ということも多々あるわ。逆に既存ブランド、例えば大手小売などは、ロイヤル顧客をちゃんと囲い込めているのかどうか。アマゾンは、アマゾンプライム会員があるけど、その人達って本当にロイヤル顧客なのかしら?ロイヤル顧客を上手く囲い込んでいる例としては、アメックスのメンバーシッププログラムがあると思うわ。
エージェンシーは、触媒となってパートナーシップを促進する役割を果たすべき
マット・ベラ(TIME Magazine): ブランド構築の際のパートナーシップについて聞かせてくれる?
ローレン・クランプシー(Ogilvy): エージェンシーは全部やらなくていいと思う。できないから。自分達の得意なところをやればいいと思うの。これからのエージェンシーに求められるのは、触媒(カタリスト)となってパートナーシップを促進する役割。クライアントが達成しようとしている目的に最適なチームをアサインすること。
今までクリエイティブ、メディア、そしてエージェンシーが結束したり離れたりという関係を繰り返しているけれど、今は結束に向かっている時期だと思う。この流れを上手に取り入れてパートナーシップを組んでいくことが、今は成功の秘訣だと思う。そういうポジションを築くとクライアントに依存しない仕組みができるから。あとは、クライアント側は知らないことは知らないって言うことも重要かも。
マット・ベラ(TIME Magazine): もし知らない事があったとしても、クライアントは「知らない」とは言わないんじゃない?
ローレン・クランプシー(Ogilvy): ひとつのミスも許されないCMO達の恐怖心があるから言わないというケースが多いんじゃないかしら。ユナイテッド航空の事例もそうだけど、少しでも間違うとアウトだから。
マット・ベラ(TIME Magazine): 最後に、Mad Man時代はなつかしい?
ローレン・クランプシー(Ogilvy): Mad Man時代にはロマンがあるとは思うわ。ただ、そうした環境はミレニアルやGenZ世代には適合するのが難しいと思う。今でも残っているカルチャーはあるけどね。例えば、ミーティングルームでクライアントにピッチするシーンとか。CMOに関していえば、Mad Man時代に比べてCMOの地位が格段と上がってる。今やCMOって時にはCEOよりパワフルな立場だからね。
(編集部補足:“Mad Man”・・・1960年代のニューヨーク広告業界を舞台とした、米・AMC製作のテレビドラマシリーズ。Marketing、Advertising、Digital、Media、Agency、Networkの頭文字から取っている。)
(以上)
【関連URL】
・Collision Conf
https://collisionconf.com
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昨今、日本でもエージェンシーの在り方について各所で話題になっています。同じエージェンシーとしてどう考えているのか、セッション後にローレンさんに聞いてみました。「日本で起きていることはもちろん知っています。重要なのは、トップが社員とコミュニケーションを取ることだと思います。難しいですが。オグルヴィでもまだまだ始めたばかりです。ただ単に長時間労働ということではなく、ジェンダー問題など色々な課題がありますからね」。とのこと。別のセッションではCiscoのCMOが社内ミーテイングの時間を設け、会社のことについて疑問に思っていることを誰でも質問できるという取り組みをしていると話していました。大企業は、トップが社員とコミュニケーションをとる機会は少ないでしょうから、こういった取り組みは社員の信頼度をアップさせるのかもしれません。顧客とのコミュニケーションばかりに気を取られ、ブランドを一緒につくる社員とのコミュニケーションを怠ってはいいブランドは作れないのだなと思いました。