第31回WABフォーラム 「企業デジタルネイティブ時代」
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会は2017年3月21日、東京・TEPIAホールにて第31回WABフォーラムを行った。会場では、代表幹事である田中滋子氏が2017年のWeb広告研究会宣言として、「企業デジタルネイティブ時代」を発表した。そのほかに、二部構成のセミナーを実施。ここでは、そのセミナーの模様をレポートする。
「デジタルネイティブ」は自然になっていくもの
第一部は資生堂ジャパンEC事業推進部長であり、5月に行われる「コマースサミット」のボードメンバーでもある徳丸健太郎氏が登壇し、「企業がデジタルネイティブになるためには」をテーマに講演を行った。徳丸氏は、同社の「Watashi+(ワタシプラス)」の取り組みを例に挙げながら、デジタルマーケティングの基本はデータの活用と管理であると述べ、データ活用においてはデータを「貯める」「分析」「使う」という3つのフェーズそれぞれに課題があると指摘した。
そのうえで、企業が“デジタルネイティブである”と言えるためには、「デジタルの本質を理解し、あらゆる場面の意思決定や様々な施策にデジタルを活用し、具体的な成果を生みだしている状態」に“自然に”なることが必要とした。さらに、企業がデジタルネイティブ化する過程で想定できる課題として、「既存領域とのギャップ」「ツール導入の目的化」「ケイパビリティのギャップ」の3点を挙げ、それぞれの点について詳細を述べた。
最後に、「企業デジタルネイティブ」を目指すからこそ、担当者はデジタルではない領域にも積極的にかかわり、考え方が異なる人と出会う機会を設け、常に新しい考え方を身につけるべきと述べた。
デジタルネイティブの本質理解に向けて必要なこと
第2部は、「デジタルネイティブになるってどう思う?」について、ビービットの渡辺春樹氏をモデレーターに、NECの田中滋子氏、インプレスの安田英久氏、コニカミノルタの中村俊之氏、ワコールの北見裕介氏、ライオンの内田佳奈氏、インフォバーンの木内愛氏が登壇した。冒頭で、宣言における「企業のデジタルネイティブ化」とは、「デジタルネイティブの顧客数が増える中、それに適応して進化していくこと」であると説明があったうえで、パネルディスカッションがスタートした。
パネリストの多くがデジタルネイティブ世代であることから、冒頭に「そもそもデジタルネイティブ化という概念が理解しにくいのでは」という意見が挙がった。また、もはやデジタルは、生活者にとってもごく当たり前のことであることから、新聞、雑誌、テレビなどの施策と同列であり、もう特別視するべきではないという声もあった。
しかし、デジタル領域の業務が専門職のように扱われている企業がまだ多く、場合によっては、皆が手を付けたくない部署になってしまっているところもあるという現状も指摘された。それについては、デジタル領域のあらゆる業務が、企業に自然なもとのとしてさらに浸透しなければならないという声があった。
また、今回の宣言である「企業デジタルネイティブ」については、マーケティングのデジタル化、コミュニケーションのデジタル化ではなく、もっと戦略部分の話である点が重要であるとし、デジタルの施策について話をする社内の対象者が変化しているという指摘もあった。その点については、「アナログではなく、デジタルにおける『過去の成功体験』を振りかざす人出てきた」「企業の上層部には説明ではなく分かりやすい結果を示せばよい」など、それぞれが意見を交わした。そのうえで、企業にデジタルネイティブの人材を増やすためには社内で常に情報をアップデートする機会を常に設けて、デジタルの“本質”を理解するようにしていくことが必要、とした。
フォーラムを通じて実感したのは、最近までよく言われていた「デジタルについて上の理解が得にくい」がいまだ課題のようでは、他とくらべて取り返せないくらいの差がついてしまうということ。まだそのレベルにとどまっていると感じる企業の担当者は、一刻も早く、そこを抜け出すために動く必要がある。社外も含めて周囲を見渡し、抜け出すために役立つ人・情報などを総動員するなど、解決策はきっと見つかるはずだ。
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