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1月22日から25日までスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)では、様々な角度から暗号通貨やブロックチェーン技術について議論が行われました。
ダボス会議では、影響力のある世界ブロックチェーン協議会(Global Blockchain Council)の新しい共同議長が選ばれました。ケニアでBitPesa暗号通貨決済サービスを開発するスタートアップ創業者であり、起業家のエリザベス・ロシエッロ(Elizabeth Rossiello)氏が就任しました。 WEFのマネジメントが世界ブロックチェーン協議会-各国大臣、規制当局の代表ならびにブロックチェーンおよびデジタル資産を扱う事業家などが所属する-に期待しているのは暗号通貨のさらなる推進です。
WEFの参加者は、早くも2016年には人々の日常生活の変容に対するブロックチェーンの重要性に気付きました。世界の銀行システムのために国際決済銀行が貢献しているように、世界ブロックチェーン協議会が「トレンドセッター」になり、世界のフィンテックにおける基準と規範の創設者、推進者になることができるとWEFは考えています。
今年のダボス会議では、「暗号通貨の話題性は薄れている」というような声も聞こえましたが、クリプト領域の深刻な問題について話し合う場も多く、昨年よりもわくわくしながら有望プロジェクトについて議論することも多かったです。
例えば、イングランド銀行の上級顧問であるハフ・ヴァン・スティーニス(Huv van Steenis)氏は「暗号通貨は最優先課題に含まれていない」と述べました。しかしその後すぐに、州が進めている支払い受け取りにあたる、暗号通貨ソリューションを活用した決済サービスなどを含んだ金融システムの将来に関わるようなプロジェクトに対して、積極的に取り組んでいると付け加えました。
暗号通貨懐疑論者たちは自分の知識不足に立ち止まった
批判的な発言もありました。PayPalのトップ、ダン・シュルマン(Dan Shulman)氏によると「社内ではそれほど多くの小売業者が暗号通貨を受け入れているとは見做していない」と述べました。ダボス会議2日目にクリプトに関して懐疑的な立場をとるノリエル・ルビーニ(Nouriel Roubini)氏は、ブロックチェーンと暗号通貨に対して以前と同じ意見を繰り返し、分散レジストリ技術は単なるコンピュータープログラム中での表現に過ぎないと述べた。つまり新しい金融技術が多くの人を戸惑わせているという事実を証明したと言えるでしょう。
香港証券取引所のトップ、チャールズ・リー・シャオジャ(Charles Li Xiaojia)氏からも同じような話題が出ました。彼は、マイニング事業者が将来の事業計画をどのように考えているか完全に把握するまで、香港証券取引所への上場を承認するつもりはないと述べました。
マスターカード のアン・ケアンズ(Ann Cairns)副会長は、暗号通貨が既にさまざまな金融取引で使用されており、通貨的な機能を果たしている現状を無視し、「ビットコインは特性上、”プロダクト”のようなものです。通貨として使われるのは不適切です」との意見を述べました。 同時に、彼女は、マスターカードがある銀行と共に独自のブロックチェーンを開発するプロジェクトを実施していると述べました。
暗号通貨は欠かせないものである
しかし全体的にはネガティブな話よりポジティブな話の方が多かったです。
投資銀行ゴールドマンサックスから出資を受けたサークルという会社のジェレミー・エレアー(Jeremy Ellair)社長は、暗号通貨を支持している多くの人々の意見を明確に反映するかのように下記の意見を述べました。「暗号通貨のないデジタル時代はあり得ない、分散型ブロックチェーンソリューションを実装しなければ人類は生き残れないでしょう。」ちなみに、エレアー氏はステーブルコインというものについて前向きに捉えています。彼は、既にこのような法定通貨に担保されたコインへの取り組みを発表している民間企業や個人に続き、各国の中央銀行が参入することになるだろう、と考えている。
CoinSharesのトップマネージャであるメルタム・デミロース(Meltam Demirors)氏は、スピーチの中で次のように結論付けています。「銀行にほとんど与信がないミレニアム世代の人々が、暗号通貨採用の大きな原動力になりつつある」。
バミューダのデイヴィッド・ビュルト(David Byurt)首相は、ブロックチェーン企業と暗号通貨企業の業務を積極的に支援する銀行の設立を発表しました。ビュルト首相によれば、2019年にはそのような企業の数は倍増する予測です。 ちなみに、ビュルト首相は世界ブロックチェーン協議会の40人のメンバーのうちの一人です。つまり彼の考えはWEFのリーダーたちから支持されている可能性が高いと言えるでしょう。
IMF国際通貨基金の専務理事であるクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)氏も暗号通貨へのさらなる前向きな気持ちを示しました。 新しい金融技術を支持する彼女の声は強いメッセージを伝え続けました:「イノベーションを止めることはできない」。 ダボス会議でラガルド氏は自身の意見として、経済危機の時などの有事の際に、世界の中央銀行が金融システムのバランスをとる機能を果たすことはほとんどできなくなり、現代の経済が機能する方法を大きく変える新しい技術にますます多くの期待が寄せられている、と述べました。 フォーラムの全体的な雰囲気は、暗号通貨に関して前向きであることがわかりました。 暗号通貨業界は規制当局と深く対話をしようとしています。 しかし一部の国では、すでに暗号通貨との競合に直面している銀行やその他の金融市場機関に対し緩和条件を作り出すことによって行政当局が進歩を阻止しようとするかもしれません。 その場合でも、そうした規制当局の過ちは、世界の金融システムの変革を加速させるだけでありそれらを減速させることはできないでしょう。
【ソース】 ・https://decenter.org/ru/davos-2019-i-kriptovalyutnyi-mir-do-chego-dogovorilis
蛇足: ロシアンOLちゃんです 各国首脳と経済界のリーダーたちが一堂に会するダボス会議は、それぞれの国家、地域で何が重要視されていて、それらがどのように議論されているのかを感じることができる数少ない機会です。特に日本のように保守的な国家にとって、最新の経済トレンドや海外のリーダーたちの考えに触れることができるという意味では、唯一の貴重な機会なのではないでしょうか。そのような貴重な場で、これだけ多くのクリプトに対する言及があったということは驚くべきことです。 記事内の報告ではポジティブな意見とネガティブな意見があったという記載がありますが、実際にはビットコインは通貨ではないがブロックチェーンには大きな可能性がある、といったような部分的な否定意見であり、クリプト、ブロックチェーンという大きな領域で考えると、それが将来的に社会に採り入れられることを前提として議論されているテーマの一つに過ぎないように感じられます。 こうした世界のリーダーたちの確信に触れ、私個人としてもワクワクする気持ちになりましたが、保守的な国家のリーダーたちにとっても、何か重要な気づきを与える機会になっていることを願うばかりです。