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今、コンピュータやスマートデバイスを前に、新たな気付きを得たり、社会における問題解決の手段としてITやネットをどう活用するかを考えている人がいるのだとしたら、少なからずダグラス・エンゲルバード (Douglas Carl Engelbart)氏の功績の恩恵を受けていると言っても過言ではない。
彼は、マウス発明者であり、GUIやハイパーテキスト、グループウェアなどの現代のコンピューティングに不可欠なユーザーインターフェイスを考案開発した人物。人間の知的能力や創造性を発揮させることに人生の過半数を費やした。
そんな彼が2013年7月2日夜、永眠したことが、娘である Christina Engelbart 氏のメールが公表されることで判明した。享年88歳。
ダグラス・エンゲルバード氏は、1945年7月に公開された Vannevar Bush 氏によるエッセイ「As We May Think」(山形浩生 氏による日本語訳 [PDF])に多大な影響を受け、知的労働者同士が情報の海を行き来することによる集合知が、世界の問題を解決する糸口になると提唱。
後の1962年、スタンフォード研究所(SRI)に勤務していた時代に、長年温めていたビジョンを「Augmenting Human Intellect: A Conceptual Framework」(人類の知性の増強)と題したレポートをまとめた。
(写真(by @maskin):シリコンバレー地域にあるSRI。1999年撮影)
まだ、コンピュータがただの計算機の時代に、「人の知性を増強」する道具と定義し、「ブートストラッピング(bootstrapping)」という手法までをも生んだ彼は、その後さらに、SRIインターナショナル内に「Augmentation Research Center (ARC)」を設置。
世界初のマウスや各種ユーザーインターネット、WWWにも影響を与えたハイパーテキストシステム「NLS」を開発した。NLSは、インターネットの前進であるARPANETの2番目に接続されたノードとしても有名だ。
彼の功績を知るには、1968年にSRIのARCで公開された「”Mother of All Demos”」という有名なデモンストレーションが最適だ。90分のデモのうち、24分間がビデオアーカイブとして残されている。
【関連URL】
・Fwd: Doug Engelbart
http://www.ietf.org/mail-archive/web/ietf/current/msg80472.html
・Doug Engelbart Archive – Doug Engelbart Institute
http://dougengelbart.org/library/engelbart-archives.html
・マウスの父、ダグラス・エンゲルバート氏インタビュー ~過去の点を結んだ線は、未来に渡る橋になる
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0322/engelbart.htm
・自分が死んだとき何を残したいですか?:MIT 石井裕教授 「未来記憶」【梶原健司】
http://techwave.jp/archives/51781886.html
彼のビジョンにある知的労働者に人生を賭けている今の自分にとって彼の死はとても大きい。やすらかに眠っていただければと思う。心より御冥福をお祈りいたします。
変化し続ける高エネルギー生命体。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてのIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなどほとんど全てのIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ブログCMSやSNSの啓蒙。ネットエイジ等のベンチャーや大企業内のスタートアップなど多数のプロジェクトに関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。活動タグは創出・スタートアップ・マーケティング・音楽・子ども・グローカル・共感 (現在、書籍「共感資本主義」「リーンスタートアップ」執筆中)。@宇都宮ー地方から全国、世界へを体現中。
メール maskin(at)metamix.com | ChatWork(Voice/Video) | 書籍情報・ 詳しいプロフィールはこちら・Twitter @maskin・Facebook