変化が著しく、かつ様々な分野において最先端の取り組みがなされるアメリカ。ここでは、在米30年で、これまで数々の日系企業の米国進出をサポートしてきた、MIW Marketing & Consulting Group,Inc. の代表 岩瀬昌美氏による現地レポートをシリーズでお伝えします。売り場、現場の最前線で何が起きているのかはもちろん、いまなお米国に在住しているからこそ分かる生活者の反応や日本市場との対比なども交えてお届けします。
2回目は、米国のスーパーマーケットのオンライン戦略と生活者の意識の現状についてお伝えします。
レジに並びたくないけど、店員とのコミュニケーションは必要と感じる利用者
カナダで行われた、スーパーマーケットに関する最新のリサーチ結果からは、日本も学ぶことがたくさんあります。
1053人への最新の調査で分かったのは、買い物客が一番嫌いなのは「レジの長い列に並ぶ」こと。日本と異なり、この調査では、顧客の1週間の平均買い物回数は 1.29 回。そして滞在時間も、驚きのたったの32分! 日本だと主婦は毎日とは言わないまでも、もっとスーパーに行きつつ、滞在時間は長いの
ではないだろうか。週に1回強しか買い物に行かないにもかかわらず、調査対象者の一番嫌いなことがレジの行列に並ぶこと。そのため、半数以上の人がセルフチェックアウトを支持しています。
その一方で興味深いのが、買い物客が一番欲するのはヒューマンインタラクション、つまり店舗スタッフとのかかわりです。一見矛盾するように思えますが、私もTARGETなどで買い物してセルフチェックアウトに行く際、そこに店員がいることを確認しています。なぜなら、何か不備があった時にすぐに問題解決してもらえるという安心感がないと、むしろ通常のレジよりも時間がかかってしまうのでは、という不安感があるためです。
そしてこの調査結果で少し驚きだったのが、買い物客のほぼ半数、49.4%がオンラインで生鮮品を買ったことがなく、これからも買わないであろうと回答したことです。この項目については、日本の主婦に聞くともっと高くなると思います。私 自身、買い物をするときにはリンゴなら傷がないもの、レタスなら茶色くなっていないものを吟味します。日本であれば、お刺身の鮮度など主婦が自分の目で確かめてから買いたいものが北米の主婦よりさらに多いのではないでしょうか。
これらのことを鑑みると、日本でのスーパーマーケット各社の生鮮オンライン戦略強化は一考の余地ありと感じます。さらに、スーパーマーケットの来店客は店頭での衝動買いが多いため、(コストコに行くとうっかり大量買いしてしまい、結局無駄にしてしまったこと、よくありますよね?)オンラインに力を入れすぎると、衝動買いする来店客に対する機会損失にもつながります。
したがって、スーパーマーケットが今力を入れるべきことは、お客様の無駄な時間を省く店舗の自動化と地道な対面での楽しさ・安心感という、オフとオンの両面強化です。オンラインの生鮮販売強化はまだ少し先の話のように感じます。