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電通が2009年(平成21年)日本の広告費を発表した。2009年の日本の総広告費は5兆9222億円、前年比11.5%減だった。新聞広告費は大きく減少し、インターネット広告費についに抜かれた。
予測されていたことだし、驚きはない。「湯川さんの予測通りになりましたね」と笑顔で話しかけてくれる人もいるが、どちらかと言えば気持ちは沈んでいる。「ネットは新聞を殺すのか-変貌するマスメディア」というぶっそうなタイトルの本を出したのが2003年。もう7年も前になるのか、と感慨深い。今読み返しても、当時の主張は今とほとんど変わっていない。
本が出た当初は、ずいぶんと新聞業界内で批判されたものだ。共同通信のベテラン編集委員からは「こんなタイトルの本を出す人間が業界内にいるとは信じられない」とまるでわたしが業界の裏切り者であるかのような書評を書かれた。警鐘を鳴らしたことが業界内で評価されることはほとんどなかった。情報革命は、情報を扱う産業に革命的な変革を迫る。昨日の延長線上に明日はない。この当たり前のことが、台風の目の中にいるとかえって見えづらいようだった。
警鐘を鳴らすだけではなく打開策も示してきたつもりだ。新聞は氷河期を前にした恐竜である。寒さと飢えをしのぐために「電子新聞」という洞窟を探したり「有料化」という木の実を探すのに必死だ。だがたとえ洞窟や木の実で一時的な寒さと飢えをしのげたとしても、氷河期はやってくる。洞窟や木の実だけでは氷河期は乗り越えられない。新聞は哺乳類へと進化する必要があるのだと訴え続けた。
どれだけ訴えても相手にされなかった。仕方がなかったので、自分一人で哺乳類に進化することにした。それがこのTechWaveだ。低コスト運営と進化が可能な体制で、新しいメディアの形を模索し続けたいと思っている。
だが考えてみれば、恐竜が哺乳類に進化するなどということは、かなり無謀な話なのかもしれない。恐竜のボスたちは、なんとバカな提案だと考えたことだろう。
統計という形で氷河期のさらなる進捗が示され、洞窟の中に残してきた仲間たちのことを思うと心が痛む。せめて若い仲間たちが、哺乳類への進化を思い立ってくれることを期待する。そのためには、自分自身がこのTechWaveを成功させ、哺乳類への進化の可能性があることを示さなければならないと思う。どんなことをしてでも成功させなければならないと思う。
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