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BCNランキングによると、携帯オーディオプレーヤーのメーカー別販売台数シェアで、2010年8月第1週、第2週とソニーがAppleを抜きトップシェアを獲得した。
昨日テレビでニュースを見ていたら、たまたまこのニュースが流れていて、ソニーの関係者らしき人が「音質にこだわっていいものを作ってきたのが評価されたのだと思う」というようなことを語っていた。
そうですか。それはすばらしいですね。
ここでちょっとたとえ話。
あるところに味にこだわるまんじゅう屋がいました。「曽根屋」というまんじゅう屋です。あんこの味は甘すぎず、量は多すぎず、絶妙のバランスなんです。当然街中で人気でした。
同じ街に、もう一軒まんじゅう屋ができました。「りんご屋」というお店です。もともとパソコンを作っていた人が脱サラしてまんじゅう屋を始めたのだそうです。
「あんな素人に負けるわけがない」とたかをくくっていた曽根屋の主人でしたが、りんご屋は次々と新しいタイプの和菓子を作ってきました。特に「ぽっどまん」シリーズは人気で、一口サイズの「ナノまん」は大ヒットとなりました。いつの間にか曽根屋のまんじゅうがそれほど売れなくなっていました。後発のまんじゅう屋に客を取られたのでした。
りんご屋は新しく「スマホケーキ」というものまで作ってきました。ケーキの中にあんこが入っているんです。「なんだよ、和菓子屋のくせにケーキまで作りやがって。あんこの味では勝てないので、どんどん変わったものを作りやがる。あんなの絶対売れないよ」と曽根屋の主人は思いました。
ところがスマホケーキは大人気になりました。あまりの人気でりんご屋のほかの商品まで売れなくなりました。またりんご屋が新しい「ぽっどまん」を開発中といううわさが流れ、新商品が出るまで買い控えるお客も出てきました。
スマホケーキの人気とぽっどまんの買い控えで、りんご屋のまんじゅうの売り上げが落ちました。まんじゅうだけの売り上げを比較すると、曽根屋のまんじゅうのほうが今月は多く売れたそうです。感想を聞かれた曽根屋の主人は「あんこの味にこだわってきたのがよかったんだと思います」と答えました。
めでたし、めでたし。
消費者の嗜好などが変わり、戦いのルールが変わったときに、企業が取ることのできる戦略は2つに1つ。リスクを恐れずに消費者の嗜好の変化に対応するべく業態を変化させていく、という戦略が1つ。もう1つは、餅屋は餅屋、リスクをおかさずにコアコンピタンスに集中する、という戦略。
どちらの戦略を取るかは企業次第。どちらが正解で、どちらが間違いというわけではない。ただ後者を選んだ場合、消費者の嗜好などの変化に伴い、コアコンピタンスの対象の市場が急速に縮小することが圧倒的に多い。それに従って事業規模も縮小せざるを得ない。
「コンテンツで勝負します」というメディア企業も同様。それも1つの戦略だが、それで事業規模を維持できると考えているのであれば、大間違い。リストラや給与削減は避けられない。市場が縮小するなかで従来のコアコンピタンスを強調することは、事業規模が縮小することを受け入れたと宣言していることにほかならない。