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クラシックやロックを問わず音楽やダンス、各種パフォーマンスで生計を立てようとする人の数は日本国内だけで軽く数百万人はいると見られている。しかし、ふと見渡せば、兼業表現者が大半。全く関係の無い仕事をしながら、必死に練習やパフォーマンスの時間を捻出しているのが現実だ。「ステージが少ない」ならまだ希望はあるだろうが、「ステージに出てもお金がもらえない」とか、そもそも生きていけるだけのお金を払う気もないのに依頼してくるケースなど、とんでもない状況が日本に根強く存在している。
ロックギタリストがバイトしながら果敢に挑戦を続けるようなありふれたストーリーを思い浮かべる人もいると思うが、もちろん今でも自分探しのように才能と戦い続けているアーティストも存在する。しかしながら、十分なキャリアも表現力もあるような表現者が活躍できる場の量とその仕組みが絶対的に不足しているのが現状なのだ。
例えば、ダンスパフォーマンスグループ「HAND SIGN」。彼らは手話をダンスに取り入れたエンターテインメント集団で、国内ダンスコンテストで数々の優勝入賞実績を持ち、ダンスの本場、アメリカニューヨークのApollo Theaterで開催されているAmateur Nightで二度優勝し、公式パフォーマーとして認定を受けるほどの実力者。日本でもテレビ出演や山手線のトレインchで手話番組を提供するなど活躍をするものの、彼等は全員、他の仕事で生計を立てているのが現状だという。
2011年7月1日、表現者とそれを利用する人とのマッチングをするサービス「getstage」のグランドオープンを達成したg&hの松山仁氏は「エンターテインメント業界のレーダーにもかからない実力のある表現者を、国内における結婚式や飲食店などのライブなど、これらを積算すればおよそ3200億円市場となり、そこと結びつけたい」と説明する。
パフォーマーのビジネスマッチングといえば、毎年オースティンで開催される音楽やインタラクティブの祭典「SXSW(South by South West)」のメインスポンサーを務めることでも有名な「Sonicbids」がある。getstageは、Sonicbidsがカバーしていないアジア市場に展開する考えだ。
getstageの最大の魅力は仕組みが明確なこと。レーベルとか所属事務所の人間関係とか抜きに(もちろんそれもカバーするようなシステムに進化していく考え)、実力のある人が自分達をPRして、それを評価する人がイベントに招きフィーを支払う。イベント運営者には手数料は発生しない。表現者は月会費525円(30日間体験無料)が必要となる。
明快過ぎて同様のサービスってなかったのか?と調べてみるが、意外なことにいわゆる芸能事務所的な登録制度はあるものの、マネジメントノウハウがあるチームによるインターネットの仲介サービスは存在していない。逆に、これだけ単純だと競合が参入してくるのではないか?というリスクがありそうだが「これまでのマネジメント業務の経験を活用し、音楽フェスタの窓口的立場をやらせてもらうなど、とにかく先駆者として実績を構築していく。パフォーマーについては、まずは1年で3000名、3年で10万まで集めて力をつける」(松山氏)と先行者として、いちはやく市場を形成することで優位に立つ考えだという。
getstageのグランドオープニングの日、クリエイターとその支援者をマッチングするサービス「CAMPFIRE」と共同主催によるイベントが開催された( 『 getstage × CAMPFIRE 』2社による アーティスト支援サービスを伝えるためのイベント開催)。getstage運営のg&hは、ネットエイジとCAMPFIRE 運営ハイパーインターネッツ代表取締役社長の家入一真さんが別途運営するplaywith partnersから第三者割当増資を実施している。イベント当日は家入さんもトークショーに出演し、実に数年ぶりくらいお会いできた。あいかわらずの斬新な発想っぷりだったが、CAMPFIREといいgetstageという表現者支援を本気で考えているようで嬉しかった。筆者は、このイベントのスーパーパトロンとして出資したが、出演パフォーマーの実力の凄さに驚いた。
特にイベントの中盤で出演された「Arisa Safu & The Rovers」に釘付けになってしまった。ARISAさんの魅力とか表現力はもちろん、完璧なリズム部隊、ギターとハープ(ハーモニカ)の味にビビビとなってしまった。彼らも世界に出ようと奮闘しているらしく、getstageやCAMPFIREといった枠組みから、実質的な支援ができるような流れを生むことができれば、日本の状況は変わるのかもしれないと感じた一日だった。
p_getstage_m from campfirejp on Vimeo.
■ 関連URL
・vanguard jazz orchestra
http://www.getstage.com/
僕はIT系イベントでありながら、プロのパフォーマーの方を頻繁に呼んでいる。ビジネスであっても、表現は人の気持ちや心のあり方を変えるからだ。(TechWave一周年記念パーティでは世界的DJ松浦俊夫さんにプレイしていただきました) また、表現や創造性は生命力そのもので、その点ではアーティストでもパフォーマーで起業家でも区別すべきではないという考えもある。というわけで、個人で運営する無料イベントであっても、自分でお金を出してパフォーマンスをお願いするわけだが、プロの彼らは、僕の考えに共感すると「いいですよ、個人の出せる範囲で」と言ってくれる人が多い(みなさん極めて誠実です)。けれど、僕は意地でも正規の金額以上を払うようにしている。なぜなら、そこをエクスキューズしてしまったら、僕の考えや意思にゆらぎが発生してしまうから。彼らがもたらす価値をもっと適切に認め、それを伝える役割を担いたいと思うんだ。
コードも書けるジャーナリスト。イベントオーガナイザー・DJ・作詞家。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代は週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。フリーで関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。“IT業界なら地方で成功すべき”という信念で宇都宮市から子育てしながら全国・世界で活動中。 / ソーシャルアプリ部主宰。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。