モバイル2強崩し Facebook戦略の効果じわり【湯川】

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 時代の主戦場がパソコンからモバイル機器へと移行する中で、圧倒的な強さを誇るのがiPhoneを持つAppleと、Androidを持つGoogle。この2強に挑もうというのがソーシャルの旗手Facebookという構図だ。そのFacebookのモバイル戦略の効果がじわりじわりと現れ出した。

 Facebookのモバイル戦略の柱は2つ。あらゆるモバイル機器上でモバイルアプリが動く「モバイルプラットフォーム」を作ることと、Facebook機能を核にしたスマートフォン「Facebookフォン」を企画、開発すること。前者の「モバイルプラットフォーム」は、10月11日に比較的ひっそりと発表された。後者の「Facebookフォン」は、開発中とWall Street Journalが報じたものの、未発表。

 その前者の「モバイルプラットフォーム」の効果が明らかになり始めた。


 モバイルプラットフォームとは、Facebookのモバイルアプリ上で他社のアプリやゲームの利用を促進する仕組みのことで、具体的にはFacebookアプリ上で友達のアプリ利用状況がひと目で分かったり、複数の友達が同時にアプリを利用していることが大きなニュースとしてニュースフィードに流れるようになっている。

 ユーザーの人間関係(ソーシャルグラフ)を通じてアプリが普及する仕組みなわけだ。

 10月の発表以来、このモバイルプラットフォームの効果がまったく報じられていなかったが、米の出会い系アプリメーカーSnap Interactiveがログイン数の増加をグラフにまとめて発表した。

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 それによるとFacebookのモバイルプラットフォームのリリース直後からログイン数が急増、その後も高いログイン数を維持したままだという。

 アプリメーカーがAppleのAppStoreやGoogleのAndroidマーケットに期待することは2つ。集客と課金システムの提供だ。集客は、Facebookのモバイルプラットフォームに期待できることがこれで分かった。FacebookはFacebookポイントという課金システムを持っている。アプリのプラットフォームとしてFacebookは条件をクリアしているわけだ。

 しかもFacebookはHTML5と呼ばれる注目のウェブ技術でのアプリ開発を奨励している。HTML5で開発したアプリはiPhone、Androidの双方で動作する。高度な機能を持つ最先端のゲームなどは、iPhone向け、Android向けに直接開発したほうが優れたものができるが、それ以外のアプリはHTML5で十分という考え方が広がっている中で、Apple、Googleに対抗する第3のモバイルプラットフォームとしてFacebookに対する期待が急上昇することになりそうだ。

蛇足:オレはこう思う

 Facebookのモバイルプラットフォームの動向って結構大きなニュースだと思うんだけど、一般メディアはもとよりネット系のメディアでもあまり大きく取り上げられない。

 なぜか。

 1つには、Facebookは「Apple対抗、Google対抗」という風に報じられたくないと思っているから。大事なのはマーケットで勝つことであり、メディアで話題を奪い合うことではないからだ。現時点では、Apple、Googleがモバイルの勢力図を分ける両巨頭であり、必要以上に対抗色を全面に出したくないのだろう。

 そのためのPR戦術が非常に巧妙だと思う。

 Facebookのモバイル戦略を最初に報じたのは米TechCrunch。コード名が「プロジェクト・スパルタン」で、目的はApple、Google対抗であるとはっきり報じた。もちろんこれに対してFacebookはノーコメント。TechCrunchは夏に発表と報じていたのだが、結局今年の夏には発表されなかった。

 ところが9月にFacebookが急きょ開発者会議「f8」を開催すると発表。いよいよ「スパルタン」の発表かと思われたが、実際には新機能Timelineに焦点が当てられたものだった。スパルタンに関連するOpenGraphと呼ばれる技術の新機能の発表があったが、技術的なものだったので一般メディアが「モバイル新戦略」として大きく取り上げることはなかった。

 そしてその後Facebookは主要国でローカル版のf8を開催。日本でも開催され、Timelineについての詳しく説明した。日本のメディアも十分に理解し、しっかりと報道した。

 その直後、もうFacebookネタはこれで十分、とメディアが感じた時期に「スパルタン」は「モバイルプラットフォーム」としてひっそりと発表された。しかも同じ日に「FacebookがiPadアプリをリリース」という分かりやすいネタを大々的に発表してきた。Facebookの広報を受け持った日本の代理店もiPadアプリの発表は日本語で長めの資料を用意してきたが、モバイルプラットフォームに関しては発表文はなかった。情報は開発者向けの英語のブログに掲載されただけだった。

 その日のテック系ニュースサイトでは「iPadアプリ」が大きく取り上げられていた。

 非常にうまい広報だなと思う。僕自身、記者時代にこうした巧みな広報戦術を数多く見てきた。専門性のない記者だと、広報の思惑通りに動いてしまうことが多い。

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