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2011年12月1日にオープンしたCo-baの名前は「工場(こうば)」から来ている。前回取り上げたLightningspotがネット系を中心に集まっているのに対し、広義のクリエーター(いわゆるデザイン関連だけではなく、新しい価値を提供しているNPOや社会起業家)のためのコワーキングスペースを掲げている。お互いのアイディアや人との繋がりも共有し、自分たちのプロジェクトを生み出していく場所でもある。
運営する株式会社ツクルバは、不動産業界出身の村上さんと建築家の中村真広さんが共同で創業。Co-baも中村さんを中心に設計された。
プロモーション
Co-baについて特筆すべきはプロモーション。一部前後はあるが、流れを簡単に図式化すると以下のようになる。
ティザーサイトが話題に
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greenz.jpやシブヤ経済新聞、Lifehackerなどメディアで取り上げられる
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CAMPFIREでのプロジェクトスタート
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記事やCAMPFIREのパトロンになったことのRTがTwitterで広まる
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Co-baのFacebookページに人が集まる
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申し込み
1,ティザーサイトが話題に
9月中頃にティザーサイトをオープンさせたところ、2週間で100以上の「いいね!」が集まる。
「当時、コワーキングスペースが徐々に話題になり始めていたタイミング。分かっている人たちが、コワーキングスペースが広まるのは良い事だと「いいね!」してくれた。イノベーター層が反応してくれたのだと思う。」と村上さんは当時を振り返る。
greenz.jpを皮切りに、その後Lifehacker、シブヤ経済新聞にも取り上げられた。
2,CAMPFIREでのプロジェクトスタート
マイクロ・パトロン・プラットフォーム「CAMPFIRE」は、クリエイティブなアイデアを実現させるために個人から少額で出資を募れるwebサービスである。10月初頭、CAMPFIREでのCo-baのプロジェクトはスタート。支援金額に応じCo-baのステッカーや一定期間の利用券などで報いる設定を立てた。
この時点で相当「跳ねた」(村上)という。3日目であっという間に目標額の30万円を突破。(執筆時での総額は75万円超)
目標額の30万円では施工費の足しにもならないが、CAMPFIREを使ったその狙いは?
「まず、親和性がある。CAMPFIREはクリエーター向けのプラットフォームであること、家入(一真・ハイパーインターネッツ代表)さんがやっているので、web界隈をキャッチアップしている人に伝えられる。」
「CAMPFIREを使って、インフルエンサーの目に触れさせたかった。本当にいいと思ったからではなくて、友達だからという理由でRTやShareで広げてくれても意味が無い。嬉しいんですけど。」
「そして、CAMPFIREのクリエイティビティが好き。社会貢献やソーシャルグッドなことを固くなりすぎず表現したい。カジュアルに捉えて欲しい。それがwebの力だと思っている。CAMPFIREは東北支援の真面目なプロジェクトだけでなく、お馬鹿なプロジェクトもやってる。その遊びと真面目のバランスが好き。僕らもパンクな部分と真面目な部分、両極端を兼ね揃えた人でいたいと思っている。」
Co-baに大きな影響を与えたのが、ニューヨークのコワーキングスペースNew Work Cityを運営するTony Bacigalupo(トニー・バチガルーポ)氏だ。New Work CityはKickstarterで18,000ドルを集めたことで知られる。
Tonyさんが来日講演を聞いた村上さんは、「オープン前にファンの行列が出来ていた。」「あとはどのように盛り上げていくか、それだけを考えていた。」という言葉にコワーキングスペースの理想の姿を見出した。
以来、村上さんはオープン前からのファン作り戦略を考えていた。「New Work CityとKickstarterなら、日本ではCo-baとCAMPFIREだろ」と狙っていたという。CAMPFIRE代表の石田光平さんもCo-baのプロジェクトについて、ソーシャルメディアの使い方、PRなど全てが上手くはまった。みんなで作った感じがすると評価。「Co-baはCAMPFIREの中でベストプロジェクト」と賛辞を送った。
3,Facebookページの役割
さらに、自社メディアとしてFacebookページが大きな役割を果たしている。「今日、木材が届きました」など内装施工の様子を逐一写真投稿したことでファンが増え、オープン前にはFacebookページに700超の「いいね!」がついた。
「ずっとFacebookページで見て、気になってて。出来上がったのを見たら申し込んじゃった。」人もいた。その人はCo-baのCAMPFIREプロジェクトを知らなかった。何かのきっかけでFacebookページに「いいね!」を押し、その後ちょくちょく写真がウォールに流れてきたそうだ。
村上さんは決してマーケティングの専門ではない。ソーシャルメディアマーケティングに関する本を何度読んでもしっくり来なかったが、やってみて分かったことがあるという。Co-ba以外にもFacebookページの運用経験はあるそうだが、そこでは友達からの「いいね!」は集まったが、有効な「いいね!」はなかったと反省する。
「それって自己満足じゃないかと。僕らが凄いと思ったのは、ソーシャルメディアの時代にメッキはすぐ剥がれるということ。例えば1000「いいね!」があって中身を見ると、期待度が高かった分マイナスが何倍にもなる。入居する友達は「いいね!」を押しているけど、そうでない友達はあまり押していない。」
友達のお情けで水増しされた「いいね!」は結局逆効果ということだろう。
利用者はどこからどうやって集まった?
「様々なんですが、Twitterでなんか見て、そこからFacebookページをずっと見てましたという人が多かった。Twitterは「CAMPFIREでパトロンになりました」とか記事のRTとか入口が多い。CAMPFIREで支援してくれた人も最終的には、自社メディア(Facebookページ)に集まりコンバージョンされた。」
この結果、初期募集枠の40名はオープンを待たずに埋まったのである。(2012年の1月中旬頃より、入居者の二次募集を開始予定)
Co-baの今後
どのような人を集め、ここから何を生み出していきたいのか?
「僕らがワクワクするものって、世の中にどれだけインパクトがあるか、社会貢献と言うか世の中的に良いことと思われるサービスを僕らも良いなと思うので、僕らの最近の軸は”ソーシャルグッド”。」
一方で村上は今後集めたい利用者として、リチャード・フロリダが提唱する「クリエイティブ・クラス」を援用する。「クリエイティブ・クラス」とは一種の知的労働者階級のことだが、より創造性による労働を営む層で、その存在が問題解決など街の活性化、成長に貢献するとされている。(Wikipediaへのリンク)
勧誘系の人以外は基本的にOKとのことだが、Co-baでは入居前に必ず面談を行っている。
「説明をして、少しでもしっくり来ないなら、僕らは奨めない。ここにいて作業して、他の人とワイワイやっているというイメージが付く人には使ってもらいたい。」
「Tonyさんから学んだことは、僕らはオーナーと利用者という関係でなく、僕らも参加者としてここにいる。フラットな関係を築くことで、自然と良いコミュニティが出来ると思っている。」
村上さんは最後に、「ツクルバは、空間軸・リアル軸に強みをおいて、リアル・ウェブ問わず場づくりを行っていきたい。Co-baは典型的な「場」。ここから世の中を良くするようなイノベーションが起こる場所。そういう価値観の人が集まって。ムーブメントを起こしたい。」と締めくくってくれた。
今回の取材では村上さんがインタビューに答えたが、プロモーションの根本はコンテンツ力があってのもの。クリエーターを狙ったそのコンセプトや、建築家の中村さんらが手がけた設計・施工が多くの人を惹きつけたことは言うまでもない。
また、オープン前だったこともあり内装の雰囲気が撮れなかったのは残念だが、その様子はCo-baのFacebookサイトなどで是非見て欲しい。
写真家、広義の編集者。TechWave副編集長
その髪型から「オカッパ」と呼ばれています。
技術やビジネスよりも人に興味があります。サービスやプロダクトを作った人は、その動機や思いを聞かせて下さい。取材時は結構しっかりと写真を撮ります。
http://www.linkedin.com/in/okappan
iiyamaman[at]gmail.com