ソーシャルで「好き」を「仕事」にする方法 勝屋久氏【湯川】

News勝屋久

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6a00e5501fa6ea8834015436f19312970c-150wi プロフェッショナルコネクターと名乗る人物がいる。元IBM Venture Capital Group パートナー日本代表で、勝屋久事務所代表の勝屋久さんだ。人と人とをつなげるプロだという。

 そんなことが仕事になるのだろうか。生活できるだけの所得を得ることができるのだろうか。

 勝屋さんは言う。「この人とこの人がつながればおもしろいというインスピレーションが湧くんです」。そして実際にそういう人達をつながると、ものすごい効果が生まれる。つながった人からは感謝され、勝屋さん自身も楽しい。このおもしろい、楽しいを繰り返してきただけ、と勝屋さんは言う。

 勝屋さんに感謝する人たちは、勝屋さんにいろいろな仕事を依頼している。会社の顧問や大学の講師、アドバイザー、講演、イベント審査員など。確かに人と人とをつなげることで、勝屋さんは自分自身と家族の生活を支えることができている。

 「今は、インターネットやソーシャルメディアのおかげでオモロい人やオモロいテーマ設定に、人やお金などのリソースがふんだんに集まる時代。友人の高須賀宣さん(サイボウズ創業者)から学んだ事ですが、本当にそうだと思います」と勝屋さんは言う。

 おもしろいテーマ設定に、人や資金が集まる時代になったことは理解できる。米Kickstarterがその好例だ。kickstarterのサイト上でプロジェクトの概要とそのプロジェクトにかける思い、必要な資金などを記入すると、そのプロジェクトを成功させたいと思う人たちから資金が集まる仕組みになっている。kickstarterのサイトを見れば、ミュージカルから環境保護プロジェクトまで、資金を必要とするありとあらゆるプロジェクトが名乗りをあげていて、実際に資金も集まっているようだ。日本でもCAMPFIREというサイトで同様に資金を集めることが可能だ。(関連記事:CAMPFIREのプロジェクトが大成功! オープン前にファンを創ったコワーキングスペース「Co-ba」の”ソーシャル”な志向【本田】アーティストの活躍の場を創出する「getstage」、CAMPFIREと共に表現者支援へ 【増田(@maskin)真樹】

 でもオモロい人に、人や金は集まるのだろうか?オモロいというだけで、勝屋さんのように好きなことをして、生活できるようになれるのだろうか。

 確かにインターネットやソーシャルメディアのおかげで人とつながったり、つながった人との関係を維持するのが容易になった。一昔前のように毎晩飲み歩かなくても、知人、友人を数多く持てるようになったのは、確かにソーシャルメディアのおかげだと思う。

 だからと言って、その人間関係によって生活が支えられるほどには、なかなかなれるものではない。

 いやなれる、と勝屋さんは言う。

 どのようにすればなれるんだろうか。

 「高生命エネルギー体になるんです!」キリッ(勝屋さん)

高生命エネルギー体になるには

勝屋さんによると、生命エネルギーが高いと、オーラがきらきら輝き、人を魅了するようになるのだという。多くのサラリーマンは、本当にやりたいことをしていないので輝いていない。なので人を魅了しないし、人とつながりにくい状態なのだという。まずは「オモロい社会人になることが大事なんです」と勝屋さんは言う。

 勝屋さんの「オモロい社会人」の定義は、輝いている人、自分らしく生きている人、誰かのためになっている人、道を貫こうとしている人、他人の目を変に気にしない人、地に足がついている人、なのだそうだ。そういう人は、生命エネルギーが湧き出ていて、人とつながりやすい状態にあるのだという。
 
 どうすれば「オモロい社会人」になれるのだろうか。それにはまず自分の「オモロさ」が何であるのかに気づき、次にその「オモロさ」を極める必要がある。その「気づき」と「極める」の両方のプロセスに、人とのつながりが不可欠なのだと言う。

 「人間って、案外自分のことは分からないもんなんです」と勝屋さんは言う。自分の「オモロさ」が何であるのかは、他人に聞くほうが早いという。

 勝屋さんは昨年、25年間勤めたIBMを退社した。その際に、これから手がけていきたいことを箇条書きにして友人たちに見せて回った。ところが友人たちは箇条書きにした項目の大半を否定した。「これ単にあんたの趣味じゃない」と一蹴する友人もいた。「びっくりした。自分のことは自分が一番分かっているはず。憤りさえ感じたくらい」と勝屋さんは言う。

 ところが勝屋さんの「オモロさ」を分かっていたのは友人たちのほうだった。ある友人はわずか3分程度で勝屋さんの強みを活かしたプロジェクトを箇条書きにしてくれた。「かっちゃんのいいところは、一番目はこういうとこ。なぜならこういうところに、こういうように役に立つから。2番目は・・・」。社会の役に立つ・・・。その軸が勝屋さん自身の箇条書きには含まれていなかった。「僕は多くの会社のアドバイザーをさせてもらってるんです。その企業を分析し、アドバイスを与えることができる。でも自分のことは分からなかったんです」と勝屋さんは言う。

 プロフェッショナルコネクターという肩書きも、友人であるセプテーニホールディングス社長の佐藤光紀さんがつけてくれた。関係性が密になればなるほど、仲間が「オモロい自分」を見つけてくれるわけだ。

 「オモロい自分」は生まれ持ったものが半分、これまでの人生でつかんできたものが半分、の場合が多いという。勝屋さんの場合は、人と人をつなげることが楽しいという感性は生まれ持ったもの。一方でIBMの営業職で培った各種ビジネススキルは、これまでに築きあげてきたもの。この両方が合わさって、勝屋さんの「オモロさ」、独特さ、魅力を作り上げているのだろう。「ドキドキワクワクするという自分の感覚。そして毎日、前向きにチャレンジし自分のスキルを伸ばしていくということ。その両方が大事なんです」と勝屋さんは指摘する。

感謝を受け取ることで「オモロさ」を極める

 さて、その「オモロい自分」をさらなる高みにまで育て上げてくれるのも、他人との関係性だという。その「オモロさ」で生活できるようになるには、他人との関係を通じてその「オモロさ」を極める必要があるというわけだ。

 自分の「オモロさ」、つまり「自分の価値」を社会に提供し、そのお返しに「感謝」を受け取る。この「感謝」が「自信」につながり、さらに「オモロさ」に拍車がかかる。この好循環のループを繰り返していけば、「オモロさ」に磨きがかかり、それで生活できるほどのレベルになるのだそうだ。

 多くの人は、自分の価値を提供することをある程度はこなす。感謝されるのがうれしいからだ。一方で、多くの人に足りないのが、相手の気持ちを素直に受け取るということ。「日本人に多いんですが、謙虚さのあまりほめられても『とんでもございません』とか『わたしなんて』という思考回路になってしまう」と勝屋さんは指摘する。自分に自信がないので、ほめ言葉を受け止められないのだそうだ。

 しかしこの「感謝」「賛辞」を受け取るということが、自分の自信につながる。「自分はOKなんだ。自信を持っていいんだ」と自分自身にOKを出すことにつながる。自分のことをOKだと受け入れられるようになれば、さらに社会に価値を提供したい、という好循環に入る。

 幼いころ勝屋さんは絵を書くのが好きな少年だった。ところが小学2年生の時に視力検査で色弱であることが判明した。現在も正確に見えているのは2色だけで、それ以外の色はほかの人と見え方が異なるようだ。

 その検査で大きなショックを受け、絵をまったく描かなくなった。就職活動の際も色弱を理由に志望企業に入社できなかった。親を恨んだこともあったという。

 ところが1年前から絵が描きたくなって、描き始めた。小学2年以来だ。絵を見た人からは、ほめられることが多くなった。でも自分にコンプレックスがあるので、そのほめ言葉をなかなか受け入れられないでいた。「自分なんか」という気持ちが邪魔をした。何人にもほめられたが、受け入れられなかった。

 あるとき、プロの画家にほめられた。さすがにそのときはうれしくなった。「でも正直言うと色弱なんで色がよく見えていないんです」と言うと「いや、色も悪くないよ」「いいんじゃない、むしろ」と言われた。また別のときに別のプロの画家からもほめられた。その日から、絵に関するほめ言葉を受け止められるようになったのだと言う。

 今では機会があることに、絵で自分を表現するようになった。講演のスライドも自分で描いた絵を使うようになった。最近では「言葉よりも絵のほうが勝屋さんの思いが伝わりやすい」と言われるほどだ。勝屋さんの絵でTシャツを作りたい、絵葉書にしたい、というオファーまでもうらうようになったのだという。

 「だれにでも本来は受け取る力があるんだと思います。受け取ればいいんだけど、その力が隠れてしまって受け取れない人が多い」と勝屋さんは言う。

 感謝や賛辞を受け取り、「オモロい自分」を極めていくことが大事なのだ。「この絵があるとき夢に出てきた。慌てて描きました」。

 「これを拡大していけばオモロい人になれる。何か自分にできることを周りの人のために始める。そして感謝される。感謝を受け取って自信を少しつける。自信が少しついたなら、さらの多くの人に与える。多くの人から感謝される。それを素直に受け取ってさらなる自信につなげる。その自信をベースにより多くの人に与える。さらに多くの人から喜ばれる」。

 これを続けて、無限のループを拡大させていけば「オモロい自分」「輝く自分」になれる、と勝屋さんは主張する。そしていずれ勝屋さんのように、その「オモロさ」を提供することで、生活の糧を得ることができるようになるかもしれない。

忍び寄るネガティブゾーンの罠

 日頃は無限のループを拡大させたいと思っても、ときにはだれもがネガティブなループに陥ることがある。特に社会人になり会社に入ると、いろいろな責任を持つようになり、自分の好きなようには生きれなくなる。社内の人間関係に悩むこともあるだろうし、住宅ローンや教育費の重圧に苦しむこともある。そして「自分なんかだめだ」と卑下したり、「悪いのは世の中だ」と他人のせいにしたりするようになる。ついには感覚が麻痺してきて、自分らしさ、自分のオモロさを失う結果にもなりかねない。

 こうしたネガティブなループの手ごわさは、一見すると思考が論理的に見えることだ。日本経済が低迷しているのは事実。業績が悪化している企業が多いことも事実。少子高齢化で、経済成長が望めないのも事実だ。ここから考えがどんどんネガティブゾーンに入っていく。このまま今の会社にいても状況が悪化する一方ではないか。とはいえ年齢を重ねると転職はむずかしい。もう現時点で転職できないのではないか。このままだと借金せざるを得なくなるかも。一度借金すれば金利が雪だるま式に増えていくのではないか。最後は自己破産、家族崩壊に陥るのではないか・・・。

 一見、論理的に見える思考なのだが、その通りに進むという根拠はまったくない。普通の精神状態なら、悪い方向に思考が進むこともないが、ちょっとでも精神が弱っていれば悪い方向に思考がどんどん進んでいく。根拠はなくとも一応論理的なので、加速度的に思考がネガティブになり、なかなかその思考から抜け出すことができなくなることも少なくない。

 今は底抜けに明るい勝屋さんだが、勝屋さん自身も、過去にこうしたネガティブ思考の罠に陥り、一時は自殺を考えたこともあるという。

 大事なのは、ちょっとでもネガティブゾーンに思考が入りかけたら、すぐに頭を切り替えることだ。「オモロい自分」追求の好循環ループで得た「感謝」や「賛辞」が、悪い思考を打ち破る「武器」になってくれる。好循環ループが確立してくれば、ネガティブゾーンに陥る確率は格段に低下する。

 「人間って、ちょっと間違うと悪い思考にはまる。僕もたまにネガティブゾーンに入ることがある。急に将来が不安になったりするんです。今はでもネガティブゾーンに入ってもすぐに戻るコツをつかんだ。ああ、また来た、今度はこの手で来ましたか、って余裕で客観視して、軌道修正できるようになりました」と勝屋さんは言う。

拡大ループを妨げる固定観念

 他人との関係性の中で、自分の「オモロさ」に気づき、他人との関係性の中で、「オモロさ」を極める。その好循環のループの拡大を邪魔しようというものがある。それは、先入観、バイアス、思い込み、固定観念などと呼ばれるものだ。こうしたものがだれの心の中にも存在する。「固定観念に気づくことがスタート。自分で自分の世界を狭めるものがあることに気づくことが大事。固定観念を外すことが必要なんです」と勝屋さんは指摘する。

 勝屋さんにも、固定観念を抱いて自分の世界を狭め、自分を小さくさせた経験があるという。

 勝屋さんの場合は、大学教授という肩書きに対する固定観念があった。7年ほど前にある大学教授の講演を聞き、その教授の話し方が非常に上から目線だったので、憤りを感じたのだという。別の大学教授も同様の話しぶりだったので、「大学の先生という職種自体に偏見を持ったんです。大嫌いだとさえ思いました」と勝屋さんは語る。

 ところがあるとき、勝屋さんは素晴らしい大学教授に出会った。「なかなかのヘンタイで、このおっさん、オモロいヤツだなと思ったんです」。でも同時に「この人は例外だな」と思い込もうとしている自分もいた。そうこうするうちに別のおもしろい大学教授に出会うことになる。続いてまた別のおもしろい教授に出あった。

 「そこで気づいたんです。大学教授は、みんな上から目線で話すわけではない。単に僕自身の思い込みだったのかもしれない、ということを」。

 その思い込みが外れたとたん、大学教授の友人が一気に増えたのだという。

 政治家も同じ。5年くらい前には「政治家はだれも同じ。日本の役に立たない連中ばかり。いなくてもいいくらい」と考えていたのだという。でも最近になってすばらしい政治家に出会った。「この人に日本は変えるだけの力はないかもしれない。でもこの人はいい人」と思えた。そうしているうちに、また別の政治家にあったら、いい人だった。そこで気がついた。「またやっちゃってた。僕の思い込み」。そこで政治家に対する思い込みが外れた。その後は、政治家に友達が増えたという。

 ほかにも苦手な人がいたそうだが、苦手な人は往々にして自分自身が持っている欠点を持っている人だ気づくようになったと勝屋さんは言う。自分が自分自身の欠点に気づき、なんとかその欠点をなくそうと思っているのに、その欠点を全開にして接してくる人がいる。自分自身の欠点が嫌いだからこそ、その人も嫌いになるというわけだ。「そのことにあるとき気づいたんです。嫌いな人が自分と同じような人間なんだと思ったら、だんだんその人のことがかわいそうに思えるようになってきて」。

 こうした経験を通じて、仕事では嫌な人がだれもいなくなった。どんな人でも仕事では付き合えるようになったという。嫌な人と付き合うことで、自分の嫌な部分が見える。それを見せてくれているんだと思えるようになったのだと言う。

 勝屋さん自身、まだすべての固定観念を外せているわけではない。既得権益保持者に対する憤りがある。まだ人の目を気にしすぎるところもあるという。「もしこうしたことがなくなれば、僕はもう1つ上のステージに上がれるのではないかと思う。意識的に固定観念を外そうとすることが大事だと思っています」と勝屋さんは言う。

 友人との付き合いを通じて自分のオモロさを認識し、友人との付き合いを通じて自分のオモロさを極めていく。それを繰り返すことで、「高生命エネルギー体」になり、人を魅了する。そうすれば、人やお金などのリソースがふんだんに集まるようになる。勝屋さんの言う通り、これがインターネット普及以後の社会における、1つの生き方になるのかもしれない。

 これまでの社会でもこうした生き方は、一部の人が実践してきた。しかしインターネットが普及したことで、人とのつながりの維持が、格段に容易になった。人を通じた情報の伝播力が高まってきた。おもしろい人物により多くの人や資金が集まる時代になり、より多くの人がこのような生き方を実践できるようになってきているのかもしれない。特にFacebookなどのソーシャルメディアの普及で、実名でのネット上の付き合いが増え始め、今後ますますこうした生き方が広がっていく可能性がある。これが情報化社会の主流の生き方になるのだろうか。見守っていきたいと思う。

勝屋さんのブログ:
勝屋久の日々是々

蛇足:オレはこう思う

 僕も自分自身の本当の「オモロさ」に気づかないでいた。自分の「オモロさ」は、分析力や文章力だと思っていた。でも周りの人に聞くと「自然体なところ」「人のゆるやかな輪を作るところ」だという。意外だった。

 勝屋さんのお話を聞き、自分のことを見つめ直してみた。そしてこれまで自分の強さだと思っていた分析力、文章力で、実は既にほとんどお金を稼いでいないということに気づいた。これは驚きだった。

 本も書かないし、原稿料を貰える執筆もしない。講演も断っている。ブログでさえ、広告収入を稼ごう、ページビューを増やそう、という思いで運営しなくなった。

 僕自身の最大の収入源は、TechWave塾を始めとするTechWaveコミュニティー内のイベントだ。それにTechWave塾も自分が講義することはほとんどなく、講師を呼んで議論のMCをするだけ。実は「人のゆるやかな輪を作ること」で、生活させてもらっている。そこが自分の最大の「オモロさ」だったわけだ。

 未来を読み解くことが楽しい。人の話を聞くのが楽しい。それをみんなと議論するのが楽しい。集まった人たちは、そうした場を僕が提供したことに対して感謝してくれるようになっている。そしてTechWaveコミュニティの心地よさは、主に口コミやソーシャルメディアを通じて伝播している。TechWave塾の開催要項はブログで宣伝するが、最近は「友人の紹介」で入塾を希望する人が増えてきた。そして僕は、そのお陰で生活の糧を得ることができるようになっている。確かにソーシャルメディアの登場で、こうした生き方が可能になってきているのかもしれない。

 これからも自分のこの「オモロさ」を極める方向で進んでいきたいと思っている。

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Posted by tsuruaki


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