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札幌で開催されたInfinity Venture Summitで500 Start upsのDave McClureさんたちにお話を聞いた。Daveさんと言えばシリコンバレーの投資家たちを引き連れて日本、中国、ブラジル、メキシコなで世界各地を飛び回り、その土地の有望なスタートアップ企業に投資するgeeks on a planeというプロジェクトを主宰していることでも有名。ご本人は奥様が日本人ということで何度も来日されているが、geeks on a planeとしても過去に2度ほど30ー40人ほどの投資家を引き連れて来日している。
そんなDaveさんなんだが、日本のスタートアップとしてはこれまでにオンライン翻訳サービスのmy gengo、ソーシャルレンディングのaqushu、SEOツールのginzametricsなど、TechWaveでも取り上げたことのあるサービスの幾つかに出資。「個人的には、中国市場より日本市場に興味を持っている」と語る。多くの投資家が中国市場にばかり気を取られていて、かえって日本市場にチャンスがあるのだと指摘している。
また彼はイケてるサービスにばかり注目が集まり過ぎだとも指摘する。原文では「イケてる」ではなく「セクシー」という表現を使っているのだが、「ソーシャル」であるとか「シェア」であるとかいった旬なキーワードを含むおしゃれなアプリやサービスばかりが話題になっているが、そうしたアプリやサービスがビジネスとして成功することはまれで、もっと地味に有益なサービスに力を入れるべきだと話している。
例としては女性向け生理用品のECサイトを挙げている。決して旬でイケてるサービスではないかもしれないが、社会に求められているものであり、確実な売り上げが見込める。
500 start upsはそうした、目立つわけではないが実際に社会に価値を創出しマネタイズが可能なサービスに注目しているという。
詳しくは下のインタービュー動画をご覧ください。
地味なサービスこそチャンスがあるというのは本当にそう思う。昨今のスタートアップブームで、スタートアップの経営者のお話を数多く聞いてきたが、ARであったりGPSであったり、旬な技術を使って見ず知らずの人と出会ったり情報をシェアしたり、とかいうような「イケてる」サービスやアプリの話ばかり。
そうしたc向けサービスって広告ぐらいしかマネタイズの方法がなく、広告収入ってよほど広く利用されるサービスじゃないとたいした額にならない。
シリコンバレーならある程度のユーザーを獲得すれば大手ネット企業に買収してもらうという方法もあるけれど、日本だと買収してくれそうな大手って限られている。
なのでそれなりに人気のアプリやサービスでもマネタイズに苦労し、やがて姿を消していく。そんなことの繰り返しだ。
それでも「イケてる」サービスを目指す若者が後を絶たないのは、非常に残念。メディア的にはそうした「イケてる」サービスのほうが取り上げやすいということがあるので、そうしたサービスを華々しく紹介するメディア関係者を批判するつもりはないが、僕はあえて警鐘を鳴らし続けたい。昨年秋に「シリコンバレー進出というバブル TechCrunch Disruptに参加して【湯川】」という記事を書いたら一部から批判を受けた。失敗を恐れずに果敢に挑戦するのがベンチャー企業だし、失敗は将来の糧になる、というのが主な批判だった。僕もそれは事実だとは思うんだけど、みんながみんな「イケてる」領域ばかり狙うのはどうかと思う。英語がペラペラで自分が日系アメリカ人になったくらいのつもりでシリコンバレーという土地に馴染んでいく覚悟がないようでは、シリコンバレーに出かけても大きな成果は出せないと思う。
よくよく考えてみれば日本のスタートアップの目指すべきカタチって次の4つぐらいしかないんじゃないだろうか。
①非言語の領域で確実にマネタイズ可能なもので世界に挑戦する(例:ソーシャルゲーム)
②一か八かFacebookの次のプラットフォームを狙う(例:LINE)
③「イケてる」サービスを持ってシリコンバレーに移住して大成功して大手ネット企業に買ってもらう(例:まだなし)
④既存の企業や産業をITでよりよくする(例:無数)
もしソーシャルゲームに興味がないのなら、④の領域でDaveさんの言うようにもっと地道に社会に価値を提供できるようなサービスが成功する可能性が最も高いと思う。