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ソフトバンクが、米携帯3位のスプリント・ネクステルを200億ドルで買収合意した件についての記者発表を行った。登壇したのはソフトバンク 代表取締役社長の孫正義氏とスプリント・ネクステル CEOのDan Hesse氏。
冒頭で、孫社長は16歳で単身アメリカに渡った時のエピソードを語った上で「何もしないことは安全かもしれません。挑戦をする時は様々なリスクが生じる」と買収の難しさを踏まえながら「再びアメリカに挑戦することができることを嬉しく思う」と述べた。
世界トップに匹敵する通信事業会社へ
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スプリントは米国携帯3位で5600万の契約者を抱え、16%のシェアを持っている状態。「ちょうどボーダフォンを買収した時のソフトバンクと同じポジション。当時 “10年以内にNo1シェア” と言って笑われましたが、6年が経過した今、この買収によりグループ総契約者数は9600万となり、日米の市場を見ても、全米トップのAT&T、ベライゾンに匹敵するユーザー規模となり、売上でも世界3位となるに至りました」と孫社長は説明する。
スプリントにとっての買収
なぜ競争の激しい米国市場に挑戦するのか、なぜスプリントなのか、多くの人が感じる疑問に対し孫社長は「まずアメリカ市場についてですが、日本を遥かにしのぐ巨大な市場で、スマートフォンの稼動台数は3.5億台と世界トップ。ARPU(1ユーザーあたりの売上高)についても、日本と同レベルで世界トップとスマートフォン戦略の最先進国にある」と説明する。
そんな中でスプリントは、以下のようにベライゾンとAT&Tの2社寡占状態の中、ポストペイド(後払い)で全米3位、通信収入成長率およびARPU成長率では全米1位と急速に業績を回復している。
以下はスプリント社が計画する業績回復プランだが、まさに2008年からの計画が順調に推移している状態で、次なる「2.投資」のフェーズにソフトバンクからのオファーがあったという話となる。
ではなぜソフトバンクなのか、その理由は、日本国内におけるスマートフォン販売を牽引してきた点と、もう一つこれまでの買収劇にあるという。
買収とV字回復
孫社長が「赤字三兄弟」と揶揄する三社は、いずれも低迷後にソフトバンクが買収し、V字回復をしてきた会社だ。特にボーダフォンでは “会社がダメになる” とまで言われるほどの無理な借入をしたが、返済計画を前倒しするほど順調な状態で現在に至っている。
スプリントCEOのDan氏は「投資フェーズに入った今、ソフトバンクからの投資により競争力が強化され、V字回復を果たしたノウハウを得ることができると考えている」と話しており、度々のV字回復手腕を大きく買われたのが今回の買収と言えそうだ。
孫社長が今回の買収で強く主張する点は「投資における60%を現金で投資している」ということ。現金を投資することでスプリント社の経営状態健全化が実現する。また、買収資金の調達で、ソフトバンク株主に影響が出ない形を取っていることも詳細に説明した。
「今回の買収で格付け会社のレーティングは若干下がるのはやむを得ないでしょう。しかし、ボーダフォン買収の時とは比較にならないほど健全で、影響は軽微です」(孫正義社長)
売上高6.3兆円の携帯事業者の誕生
日本経済の歴史で最大の投資となる今回の買収劇。成立後は売上高6.3兆円、NTTドコモを抜き、国内トップはもちろん、世界3位の携帯事業者が誕生することになる。
ソフトバンクの買収戦略において最も重要なのは「スケールメリット」と言える。インフラを持つ事業者は、ユーザー数が増加することで利益率が向上するほか、スマーフォフォンについてもネットワーク機器についても販売台数で世界でトップとなることで、メーカーへの交渉力が増加するからだ。
現在、デバイスにしてもサービスにしても世界を照準にしていなければ、これまでのような成長は期待できない状態にある。ソフトバンクの孫社長の戦略は、リスクはあるものの経済低迷する日本においてはやらなくてはならないものなのかもしれない。
【関連URL】
・発表資料 [PDF]
http://webcast.softbank.co.jp/ja/press/20121015/pdf/20121015_01.pdf
・当社によるスプリントの戦略的買収(子会社化)について[PDF]
http://webcast.softbank.co.jp/ja/pdf/20121015_01/20121015_01.pdf
・ソフトバンク、スプリント・ネクステルを200億ドルで買収へ、70%の株式を所有 今後半年で買収完了 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51765529.html
・ソフトバンクも認める、スプリント・ネクステル大型買収交渉の行方 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51765155.html
・一部報道について | ソフトバンク株式会社
http://www.softbank.co.jp/ja/news/press/2012/20121011_01/
孫社長も記者会見の中で話していたが今後高齢化社会に突入する日本においてこうした世界戦略は重要に思える。消費財であれば東南アジアや中国・インドに目を向けなければいけないが、やはりITにおけるカードは北米にあるということだろうか。
本件、日本のサービスの状態に直接的な影響がすぐに出るわけではない。スプリントの回復と成長、そしてスケールメリット効果が出るととき、日本にどんな世界が拡がるのか注目したい。
夢を叶える技術者。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてのIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。活動タグは創出・スタートアップ・マーケティング・音楽・子ども・グローカル・共感 (現在、書籍「共感資本主義」執筆中)。書籍情報・ 詳しいプロフィールはこちら