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2010年頃から急激に広がったITスタートアップムーブメント。スマートフォンアプリを中心に多数の作品が世に送り出された。
しかし、その一方で、静かに消えゆくアプリも多い。中には、投資を受けたにもかかわらず、成果を出せず、ピボットという名の方向転換を繰り返した末、チームもろとも解散。再スタートするパワーすら無くしてしまうケースも実際に発生している。
首都圏の大学生を助けるために、と開発した「クルックー(Cluecoo)」も、消えゆく運命を辿る可能性が高まっているアプリの一つ。
「年内にあと800人は増やさないと、続けられない」。
そう話すのはチームの一員であるデザイナーの土田あゆみさん。
社会人1年目のチームとして立ち上がり、現在メンバーは6人。平均年齢23歳で、システムもデザインも企画も営業も、あらゆる面において経験が不足しているのは当然だとしてもコンセプトは決して悪くはない。
「気づかずに通り過ぎていた才能同士が繋がり、時には助け合い、時には切磋琢磨し高め合って行く。大学生活が、今より刺激的なものになる。
クルックーがそのきっかけになれば、そう心から願っている」
(アプリの公式ページより)。
時には助け合い、時には切磋琢磨し高め合って行く
アプリは2012年の5月、首都圏の31大学限定で、モノやスキルの売買ができるアプリとして公開された。
大学生は、将来の社会を支える才能の卵の集まり。しかし、いきなり大学という接点だけで、全国から集まってくるわけで、自分の能力をアピールしたり、実際に役立てられる機会というのは少ないのが現状。
最近はスタートアップ向けの企画や開発コンテストも増えているのでチャンスはあると思うが、個人ベースで人と人とがつながり、何かを実現するために支えあうような小さな接点づくりを、全ての学生が実践できるとは到底無理な話であり、新卒組が生んだCluecooのようなアイディアは、ニーズを的確につかんでいるのだと感じる。
しかしながら、実際のアプリはというと、首都圏の大学生を対象にしている割には、デザインもサイトに掲載されたメッセージもその特徴を説明し切れていない。UIも一般的なクラシファイドサービスと大差なく、コンセプトの良さが死んだまま。
結果として、期待する成長曲線は描けていなかった。
「同じ大学卒の仲間で活躍しているがいる。いつも仲良ししているになぜ自分達はできないんだろう」。
Mashup Award 8ではコミュニケーションエンターテインメント賞を受賞するなど高い期待度がある割にユーザーは増えず、口コミすら発生していない状況。
苦肉の策か、ユニークなスキルを持った大学生による様々な講座をやったり、学生団体とのタイアップイベントを実施してきたが、アプリ本体への影響は無いに等しい状況。
ローンチからたった7ヶ月とはいえ、使ってもらえず、先もみえない事業にリソースを消費することはできない。チーム全員、それは解っていても前に進めない。そして、事業の今後を決断せざるを得ない、年末を迎えてしまった。
ただ、どうしても夢はあきらめられない。魂を込めた企画だから、できることは最後までやり通したい。
「このサービスが広まれば世界にインパクトを与えられると信じているんです。
単にサービスを流行らせたいというわけではなく、自分たちが思い描く世界を自分たちの手で作りたい。
その為なら時間も労力も惜しまず、何でもやっていくつもりです」(デザイナー 土田あゆみさん)
年末までの数日を迎え、チームが初めたのは最後の呼び掛け。「まだまだ、いいものとは言いきれないけれど、ここでがんばらないと続けられない」そんな、叫びともいえる行動に共感する人が、ソーシャルメディアなどを通じて少しずつ、増え初めている。
「甘えるな」という人もいるだろう。確かに、今までやってきたことを根本からリセットする必要もあるだろう。しかし、抱えている気持なんて全力で伝えなければ相手に伝わらないし、そもそもやろうとしていることに共感されてなければ、呼びかけも徒労に終わるわけだ。
「これで評価されなかったら終わり」。彼ら自身が覚悟を決めたラストランは、そこに共感が集まるかどうかで真価が問われることになる。
【関連URL】
・Cluecoo (クルックー)
http://cluecoo.jp/
・Cluecoo Facebook Page
https://www.facebook.com/Cluecoo
失敗は成功のもとという言葉がある。確かに大きな経験にはなるけれど、成功のきっかけにはなりにくいと思う。アメリアの起業の歴史を調べたデータでもそれははっきりしている。
現状のCluecooは失敗といっても言い過ぎではないように思える。しかし、そこで諦めるか、顰蹙(ひんしゅく)を買いながらでもはいあがるかで未来は変わると思う。これはCluecooチームだけでなく、自分を含めた全ての挑戦者に言えること。ボロボロになったとしても、その夢のためには最後の最後まで全力を尽くすべきだと思う。
昔、幻冬舎 の社長である見城から「顰蹙は買ってでも受けろ」という話を聞いた。そこから、物事の核心をつかんで糧としろ、といいった話だったように記憶する。
夢を叶える技術者。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてのIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。活動タグは創出・スタートアップ・マーケティング・音楽・子ども・グローカル・共感 (現在、書籍「共感資本主義」「リーンスタートアップ」執筆中)。@宇都宮ー地方から全国、世界へを体現中。