途上国の勢いを肌で感じる「Mobile World Congress 2013」レポート【 Quipper本間拓也 @TakuyaQuipper 】@maskin

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[読了時間: 2分]

イギリス発 Quipper 本間拓也氏登場です

編集チョのmaskinこと増田真樹です。
去る2013年2月25日から28日にかけスペイン・バルセロナで開催された世界最大級の携帯通信関連のカンファレンス「Mobile World Congress(MWC)」。Firefox OSを初め、多数の技術やプラットフォームがここで発表され話題となっているのは周知の通りで、日本からも多くの企業が出展していました。
様々な記事や参加レポートが上っていると思いますが、このイベントを商談の場として奔走した側として、イギリスのQuipper社の本間拓也さんにレポートをして頂きました。

Quipper社は、南場智子氏や川田尚吾氏と一緒にDeNAを創業した渡辺雅之氏が立ち上げた会社で、渡辺氏は2010年末にDeNAを去ってロンドンに渡りQuipperで教育市場に参入しています。
今回レポートを寄稿して下さった本間さんは、現在絶賛世界拡大中のQuipper で、Marketing DirectorとしてMWCに参加。アフリカ(ナイジェリア)・南米(ブラジル)・タイ・イスラエル・ヨーロッパの主要プレーヤーとの商談してきたとのことで、ただMWCに参加するだけでは得られない深い情報をお伝え頂いています。

途上国の勢いを肌で感じる、Mobile World Congress 2013レポート【@TakuyaQuipper 】

 Mobile World Congressに参加するのは3年連続になります。Googleが巨大なブースを構えAndroidのピンバッチをばら撒きAndroid祭りと化した2011年(写真参照)、Samsungがスペイン人美人コンパニオンを大型動員し参加者の注目をかっさらった2012年に比べ、2013年度の展示会自体は驚きに欠け、目新しいものもほとんどなかったように思います。Google・Apple・Facebook・Amazon・Microsoft といった中心プレーヤーも不在で、僕のまわりでも不満を口にする参加者が続出でした。

TechWaveFinal
(2011年の様子。GoogleのAndroidピンバッジデザイナーと)


 その一方で、今年は各国の通信キャリアには例年に比べて大きなスペースが与えられ、何とか新規加入者数を増やしARPUを高めることを命題にする各国キャリアが一生懸命商談をしていました。グローバルモバイル教育プラットフォームを目指す我がQuipper社も、とりあえず各国の状況を理解する、そしてあわよくば何らかのビジネス機会があればと思い、事前に10数件世界中の通信キャリア等とミーティングをセッティングしました。この記事では、展示会そのものについてというよりも、そのミーティングで得られた各国のモバイル(特にモバイル教育)に関する知見についてご紹介できればと思います。

どのキャリアも「モバイル×何か」を求めて一生懸命

 各国キャリアとの商談・ミーティングを経る中で一番印象に残ったのが、どのキャリアも「モバイル×何か」を模索して必死だということでした。先進国・途上国問わず、キャリア数社が新規加入者を奪い合う中、差別化要因として多くのユーザーに刺さる独自サービスを提供する必要があります。また、成長率が鈍化し、ARPUもあまり増えていないキャリアが多く、ボイス・SMS・エンタメ(Ringtoneなど)に続くマネタイズ方法も求められている現状です。

 そんな中、「モバイルヘルスケア」、「モバイルペイメント」、「モバイル教育」などに大きな注目が集まっていました。モバイル教育プラットフォームを目指すQuipperとしては、この領域においてグローバルレベルで大きな波が来ているのをミーティングをこなす中で感じましたし、ヘルスケアやペイメントといった他の領域でも非常に面白い事例をたくさん聞くことができ、いわゆる「革命前夜」なのだ、という感覚を強く持ちました。

 一例として、Samsung Smart School(下記写真)を挙げてみます。生徒全員と先生がタブレット(Galaxy Note 8.0)を持っている状況を想定して作られたこのサービスでは、出席確認・生徒同士チャット・先生生徒間チャット・E-Book・ノート機能・教育アプリ(計算機、ゲームなど)・グループアクティビティ・時間割・宿題・レッスンスライドアップロード機能、等の機能が高い次元で、かつ素晴らしいUI/UXで提供されています。

 教育サービスは個人的にかなり見ているものの、この完成度は圧倒的でした。もう既に17カ国で開始されており、タブレット学校市場に対するSamsungの本気度合いが伝わってきます。これからモバイル教育領域はどんどん競争が激しくなっていき、市場として成長・成熟していくのでしょう。

 Quipper自身も、どのキャリアを回っても予想を遥かに上回る好感触で、ほとんど全ての相手とネクストステップに進むことができました。このグローバル規模でのモバイルという巨大な波にしっかりと乗れている、という確信が得られたのは大きな収穫でした。

 まだこれらの領域で世界を席捲するようなサービスは誕生していないものの、あと数年で人々の生活を大きく向上させるようなものが出てくるであろう、というのが会場でのコンセンサスだったように思います。

TechWaveFinal2
(Samsung Smart School。実際に生徒になって授業を受けてみた)

成長著しいアフリカ・南米。アジアは独自の生態系

 次に強く印象に残っているのは、途上国、特にアフリカと南米の成長・勢いの著しさです。

 スマートフォンがこれらの国にも凄まじい勢いで広まっているのは周知の事実だと思いますが、通信キャリアの人たちのスピード感、アグレッシブさ、ハングリーさにも非常に感銘を受けました。

 幹部クラスの人たちが朝から晩まで 4日間フルでミーティング(スケジュール帳を見せてもらいましたが、20分くらいのミーティングが本当に合間なく詰まっていました)、その限られた時間の中でバシバシとネクストステップを決めていく(判断を持ち帰らない)、パーティーやイベントも積極的に主催・参加し、その中でも物事が決まっていくスピード感は圧巻でした。

 僕もアフリカの通信キャリアやアフリカで多くのユーザーを持つOEM・サービスプロバイダーが一斉に集まるパーティーなどに招待され参加して来ましたが、隣のレストランでパーティーをしていた先進国の人たちがちょうど行われていたクラシコ(サッカーのバルセロナ対レアル・マドリード)に夢中になっていたのと対照的に、そんなものには見向きもせずにハングリーに商談を続けていました。

 話を聞くと、ビジネス的な側面はもちろん、「モバイルは自国の成長と国民の幸福のために非常に大切なインフラであり、それを担う自分たちが必死に頑張る必要がある」と皆、口を揃えて当たり前のように言っていました。

 モバイルマネーで有名な「m-pesa」はケニア発ですし、UNESCOが次世代モバイル教育のモデル国としてナイジェリアとセネガルを選んだり、様々なモバイル関連のイノベーションの芽が着々と途上国で育っているのを実感します。これらの国のキャリアは、Vodafone・Telefonica・Telenor等の欧州キャリアの子会社が多く、かつ植民地時代の影響から文化的・言語的にも欧州に近いため、お互いに知見をシェアし合いながらモバイル革命を牽引していくのだと思います。

 一方で、アジア(特に中国と東南アジア)においては、勢いこそは上記国と同等もしくは上回るものの、もっと混沌としていて、外からは参入しにくい独自のルール・生態系を構築しています。これらの国の人達の話を聞く中で面白いと感じた事例としては、タイ政府が1年生と7年生に計160万台(!)のAndroidタブレットを配布するOne tablet per childプロジェクトをもう始めていたり、インドネシアでスパムが横行した際にサービスプロバイダー全員からユーザー情報が剥奪され皆ゼロからのスタートになったり、「なにそれ?」というものがたくさんありましたが、ただ、グローバルでやっていく以上、このカオス感はつきものなのでしょう。

まとめ

 シェアしにくい情報が多く、ジェネリックな内容になってしまいましたが、簡単にまとめると、

 ・展示会自体にはここ数年の勢い・驚きはなかったものも、MWCは、通信キャリアが一斉に集まり商談を進める非常にいい機会・場である
 ・途上国の勢いが際立っていた。スピード感重視で、拙速上等のスタンス
 ・モバイルはやはり何だかんだで世の中を大きく変えていて、あと数年でヘルスケア・ペイメント・教育といった領域でさらに大きな変化が待ち構えている、というコンセンサスがある
 ・Quipper自身もその巨大な波に乗れればいいし、日本からグローバルなプレーヤーが出てくるのも大いに期待。今年の日本ブースはFullerや宮城県NPOテクノロジー集団を中心にとても賑やかで注目されていた。特にFullerは大健闘

という感じになると思います。

非常に有意義な時間を過ごせました。

PS

 一般ホテルが非常に高かったので(市街地から外れたさびれたホテルで一泊300ユーロ程)、Airbnbを初めて使ってみたのですが、便利(バルセロナの栄えている地域のど真ん中)・安い(一泊20ユーロ)・楽しい(ホストが案内してくれる)の三拍子揃っていて、とても満足度高かったです。一人で旅行する際にホテルに泊まることはもうないな、と思いました。

【関連URL】
・Quipper Quizzes
http://www.quipper.com/
・Mobile World Congress 2013 | The world’s premier mobile industry event

http://www.mobileworldcongress.com/
・スカイプ創業者、Fab CEOらが起業家精神を語る、「ATOMICO Open Office」日本初開催 【増田 @maskin】 : TechWave
http://techwave.jp/archives/51762176.html

蛇足:One More Thing…
24858_380492162913_4217829_a Quipperはグローバルモバイル教育プラットフォームを目指すと同時に、ドライで皮肉っぽい、そしてwittyなブラックジョークが飛び交う英国的オフィス環境を目指して努力しています。2月に日本オフィスも開設しました。英国本社及び日本オフィスで、エンジニア、企画プロデュース、ディレクション、バックエンドなど職種・領域問わず仲間を募集しています。記事に書いた通り、モバイル教育という領域では世界のトッププレーヤーの一つという自負はあります。スタートアップらしく、一人ひとりが主体性を持っていいスピード感を保ちながら働く環境に魅力を感じる方は、ぜひご連絡を!
著者プロフィール:Marketing Director @ Quipper Takuya Homma

東京大学経済学部在学中に、「ウェブ進化論」の著者梅田望夫氏に弟子入り。東京・シリコンバレーを拠点に活動し、同氏と飯吉透氏の共著「ウェブで学ぶ」の執筆に関与。
その後東京大学を中退し、University College London(英国)に入学。在学中にインド・中国・アフリカを廻り、途上国におけるモバイルラーニングに大いなる可能性を見いだす。同時期に代表渡辺に誘われ、在学中から手伝いをはじめ、9月にUS事業および全社マーケティング担当のディレクターに正式に就任。サッカーが得意。

https://twitter.com/TakuyaQuipper
http://www.facebook.com/takuya514

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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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