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3年前の今日、2010年10月6日に革新的なiPhoneアプリがAppStoreにリリースされました。
同年6月にiPhoneは解像度が4倍のiPhone4へと進化し、さらにカメラ性能が大幅に向上するiPhone4sがリリースされる1週間前という狙い澄ましたタイミングでリリースされたこの歴史的なアプリ「Instagram(インスタグラム)」の、その後の躍進は皆さんもご存知の通りですね。
今回はInstagramがゼロから1億5000万ユーザーへと成長した軌跡から、そのGrowth(グロース)へのエッセンスを7つご紹介したいと思います。
※2012.7月から成長が鈍化しているように見えるのは、それまでが登録ユーザー数での開示だったのが2013.1月からMAUでの開示になったからです。
1.徹底したフォーカス(集中)
InstagramはFacebookが買収を発表する直前、3000万ユーザーに到達するまでiOS版のみの提供でした。かなり驚異的な数字ですが、とにかくひとつのプラットフォームに徹底フォーカスしてUI/UXからバックエンドの増強まで着実に改善を積み重ねています。そもそもこのサービスの生い立ちから貫かれている哲学がフォーカス。前身となるソーシャルチェックインアプリ「Burbn」を「どう使って欲しいかではなく、どう使われているか」という視点で写真共有機能のみにフォーカス、ピボットして生まれたのがInstagramというアプリです。まわりの雑音に振り回されず、提供する体験を絞り、その上でユーザーをとにかくハッピーにする。それだけに集中してひたすらサービス改善に取り組んだ結果が初期の成長を後押したんですね。
2.完璧なバイラル成長エンジン
エリック・リースによるリーンスタートアップでは、サービスの成長を3つにモデリングして分類しています。「スティッキー(粘着)」「ペイド(支出)」「バイラル」がその3つですが、この中でも特にバイラル成長エンジンの教科書とも言えるのがInstagramのグラウンドデザイン。サービス開始時からTwitterやFacebookなど外部の強力なSNSへ美しい写真を手軽に共有できる点(アウターソーシャル性)をユーザー体験として重視、「そのサービスのコアなユーザー体験そのものが口コミとなる」というバイラル成長エンジンを見事に体現したと言えます。
3.コミュニティデザイン
加速度的に口コミを拡げるアウターソーシャル性に対して、集めて来たユーザーをいかにムダ無く定着させるか、グロースにおいてはいかに新規ユーザーを獲得するかと同じぐらい、いかに離脱ユーザーを減らすかが大事ですね。Instagramでは当初からフォロー/フォロワーのインナーソーシャル性を持ち、質の高いコミュニティを形成することによって高いリテンションを実現しました。Instagramがこのコミュニティ形成に力を入れていたことが良く分かる事例が採用です。ケヴィン・シストロムとマイク・クリーガーの2人で始めたInstagramの一番最初に採用したのがコミュニティマネージャーでした。後述しますが、一貫した超厳選採用でいかに熱狂的なユーザーと居心地の良い空間を作るかの優先順位が高かったを象徴する事例ですね。初期のPopular機能など、コミュニティの活性化を目的としたインセンティブの設計など初期はかなりグロースに寄与していたと思います。
4.スピード、スピード、スピード
機能と同じぐらい彼らが重視していたのがスピード。Googleでも「スピードには製品にオプション機能を追加するのと同じぐらいユーザーの利用頻度を高める」と言われているそうですが、Instagramのサービス設計においてもこのスピードが重視されています。写真投稿系のサービスならスピードが最も重視されるのが当然そのアップロード時。この写真アップロード時における問題解決が秀逸で、ユーザが写真のタグなどを始める前にアップロードを開始することでユーザーの待ち時間を感覚的に無くし、操作上のアップロードをする時には既に写真をアップロードされている状態を作ることによっていわゆるサクサク体験を実現していきました。
5.何があってもサービスをダウンさせない
上記スピードと同じ思想で、かつ密接に絡む部分がこれ。シストロムは「動いている、これに勝るフィーチャー(機能)は無い」とも言っています。初期のTwitterはしょっちゅうサービスがダウンし、皮肉にもクジラが嫌われるほ乳類になってしまいましたが、それを傍らで見ていた彼はサービスを爆発的に成長させるには、とにかくダウンさせないことを肝に銘じていたようですね。グロースに対して、一見ディフェンシブな動きにしか見えませんが、結果的にこれがInstagramのスムーズで2次曲線的な成長を実現していた訳です。
6.セレブエフェクト
これは彼らにどの程度コントローラビリティがあったかは定かではないのですが、Instagramの成長を語る上でいわゆるセレブと呼ばれる有名人の存在は欠かせません。ジャスティンビーバーやオバマ大統領など影響力の大きいユーザーがさらにその存在を確固たるものにしていきました。物理的な成長はもちろん、サービスの格を1段階上げる上で大きく役立ちますね。最近ではホリエモンが推薦するGunosyなどがそう言ったセレブエフェクトをうまくいかしている事例でしょうか。
7.あり得ないぐらいの超厳選採用
最後に書き留めておきたいのが採用方針。こちらもサービスのグロースとは一見関係ないように思えますが、2人ではじめたInstagramは500万人を越えた時点でも社員数は4人、1500万突破時で10人、3000万人を突破しAndroid版をリリースしFacebookが買収を発表した時点で13人でした。3000万ユーザーになるまでiOSのみで展開していたのも、単純にサービス成長のためにむやみに人を増やさないという超厳選採用の方針が、逆説的に高次元のユーザー体験を生み出し、結果的にiOSフォーカスや着実なバックエンドの構築につながり、サービスの成長を加速させたと言えるでしょう。
【補足】Instagram年表
2010.10.6 AppStoreにてリリース
2010.末 リリース3ヶ月で100万人突破
2010.12.20 日本語など7カ国語に対応
2011.2 API公開
2011.4 300万人越え 50%がアメリカ国内、25%が日本からの利用
2011.6.13 500万人越え 社員数はまだ4人
2011.8.4 投稿写真数1億5000万枚突破
2011.9.27 1000万ユーザー突破 v.2.0へ初のメジャーアップデート
2012.2 1500万ユーザー突破 社員数は10名に
2012.4.4 Android版リリース
2012.4.9 Facebookが買収を発表 ユーザー数 3000万人、買収額は10億ドル(810億円)
2012.4.23 5000万人
2012.7.27 8000万人 投稿写真は40億枚
2012.8.16 v.3.0へメジャーアップデート
2012.11 PC版公開 閲覧やコメントのやりとりができるように
2013.1.17 MAUを初公開を初公開、9000万人と発表(これ以前の数字は登録ユーザー数)
2013.2.28 MAU1億人
2013.6.22 ビデオ機能搭載、公開24時間で500万本のビデオが公開、MAU1億3000万人、写真投稿数は160億枚
2013.9.9 MAUが1億5000万人 広告掲載開始も発表
少数精鋭、ビジョン/哲学を共有しながらユーザー目線で一貫性のあるサービスを創る会社。Instagramのグロースの歴史を調べれば調べるほど、そんなシンプルで力強いチームワークが見えてきます。グロースの成功要因を一言で表すならば「チーム」かもしれませんね。今回紹介した多くはランディングページをこう改善したとか、いわゆる小手先の”グロースハック”ではなく、もっと本質的で短期間では結果が見えないような成長への哲学ですね(6のセレブは除く笑)
2006年東京農工大学大学院修士課程卒(ビークルダイナミクス専攻)。卒業後、U社にて協業でのモバイル公式サイトを複数立ち上げ。2008年ECナビ(現VOYAGE GROUP)へ転職し、2010年5月にスマートフォン専門に開発を行う株式会社ジェネシックスを設立。
ブログ / Twitter @tommygfx90