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「東京国際ブックフェア」と同時開催の「デジタルパブリッシングフェア2010」。今回はGoogleエディションの発表(@maskinさんの記事)が話題をさらった一方、DNPや凸版といった印刷会社主導による国内のプラットフォームが出揃ってきた印象です。
ここでは、そういった大手ではなく、一定のスケールを作れる可能性のある電子書籍ビジネスを3つ紹介します。
BookGate
【運営】
廣済堂
【概要】
iPhone・iPad向けStore型電子書籍サービス(アプリ)
アプリ内課金方式、データはPDFベース
持ち運べる総合書店がキャッチフレーズ。
印刷会社としてこれまで出版社のDTPデータを扱っており、そういったお付き合いを中心に、出来るところから電子化を始めたとのこと。
売上に対し出版社とレベニューシェアを行うビジネスモデル。
【サービス開始時期】
7月末〜8月頭(現在審査中)
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アプリ内課金はApple上でビジネスをするなら、現在最も安心出来る方式。現在この方式による日本語の書店が確立しておらず、ユーザーにメリットを提供できれば、iPhone利用者を中心に一定の利用が見込めるのではないだろうか。
※無料ビューワーをアプリとして置き、自社サイトでユーザー登録・コンテンツのダウンロード・課金をする方式は、ユーザーにとって大変手間であり、電子書籍ビジネス発展の阻害要因でさえある。また、アプリ内課金をappleが推進している以上、このビジネスの存続可能性も疑問だ。
国内ではDNP、凸版と印刷会社主導のシェア争いと合従連衡が予想される。また当然、google、amazon、appleといった巨大勢力も控えている。ラインナップの規模勝負になるのであれば、大型書店でなく、この「書店」に来店してもらう差別化が必要だろう。
Fan+(ファンプラス)
【運営】
NTTプライム・スクウェア(NTTと角川書店の合弁)
【概要】
マルチデバイス向け・クラウド型
特定の趣味・興味を持った「ファン」に向けた媒体の電子化支援
DTPデータの単なる電子化ではなく、素材から再オーサリングし、そのためのツールも含めたサービス。
サンプルとして、新人物往来社の歴史本、ネコ・パブリッシングの鉄道本などが展示されていた。
【サービス開始時期】
9月末以降リリース予定
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既存の出版社だけでなく、プロゴルファー・古閑美保らを擁するマネージメント会社など、人そのものがキラーコンテンツである企業と組んでいる点が特筆される。ゴルフの場合、優勝争いに関わらないと既存メディアでは全く取り上げられなかったり、本人サイドの意図が伝わらなかったりするが、「タレント」側が自主的に情報を発信し、ファンと交流できるパッケージングが可能になる。
ターゲット化戦略だが、ファンとのつながり(コミュニティ)をプラットフォームとして提供するには至っていない。イベントやグッズ販売など総合的にサポートしていきたいとのことなので、ここは期待。
また電子化とはいえ、動画を出す程度にとどまっている。歴史本のサンプルを見たが、例えば位置や時間情報についてもう少し立体的な軸が見せられれば、紙の本にはない体験が得られるだろう。
クラウド型であり当然iPhoneなどでも閲覧できる一方、有料のwebサービス(ファンクラブサイト)との違いをいかに見せられるかが課題。とはいえ、現在のところ、webサービスよりも課金させやすい形態という意味で「電子書籍」を名乗る意味は大きいのだと思う。
Renta
【運営】
パピレス
【形式】
マルチデバイス向け・クラウド型
webブラウザで見る「電子貸本」
【概要】
漫画・雑誌中心(雑誌は記事売りも)
1冊100円〜48時間閲覧可能という「レンタル」のモデル
気に入って「所有」したい場合は、追加コストで無期限レンタルも可能に
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1回読んだきりで二度と読まない本が多いのであれば、「電子書籍のレンタル」はスマートな方法かもしれない。カジュアルに本と付き合いたい時、人向けだろう。
個人的には、例えば新幹線で出張する際、駅の書店やコンビニで雑誌や文庫本を買う代わりに、こういうサービスで軽く読書がしたい。が、移動中も回線がつながらないといけないのは、サービスの傾向と技術的課題がマッチしていないことになる。(N700系なら大丈夫か)
電子書籍がwebサービスと異なるのは、パッケージングされていることだ。それは感覚面によるところが大きいが、ここが辛うじて、今日の電子化コンテンツの課金可能性でもある。
このモデルが、ツタヤディスカスのような月額定額課金として確立出来れば、新しいスタンダードになるかもしれない。
まとめ
「デジタルパブリッシングフェア2010」全体は、出版社に電子化の二次利用を促す業界内の発表会という印象。このフェアの存在意義を考えれば当然ですが、新しい技術が我々のパブリッシュあるいは読むという行為をどれだけ楽しくしてくれるのか、そういった可能性を全く感じさせませんでした。Googleは個人の出版も受け付けるようなので、このままでは堰を切るように優良コンテンツが流れだすのではないでしょうか。