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書籍の見本市「第17回 東京国際ブックフェア」が8日、東京ビッグサイトで開催された。会期は11日までで、一般公開は10~11日。
同時開催されている「デジタルパブリッシングフェア2010」で、Googleがブースを構え、来年春スタートを予定している書籍検索サービス「Googleブックス」と電子書籍販売サービス「Googleエディション」がいかに機能的に優れ出版業界に良い影響があるかを15分程度のプレゼンテーションビデオでアピール。8~9日は業界関係者を対象としていたが、多く人が足を止めていた。
展示会場は、ビックサイトの西側だということもあり、ゲームショーなどと比較すると各ブースは小さめ。Googleも座席はこれだけしかなく、大半が立ち見。プレゼンが始まると、通路を埋め、他のブースまで人が入り込むありさまだった。
プレゼンで特に強調されていたのが以下のような点。Googleブックスが出版業界や著作者の脅威にならないということを暗に主張していた。
● 読者は書籍全体の20%までしか閲覧できないように制限されている
● 印刷やコピー、保存はできないようにしている
● 出版社はいつでも内容の追加・削除ができる
● 検索したユーザーは書籍の購入に踏切る傾向がある
さらに、印象的だったのが「古い書籍も登録を」というアピール。今回のブックフェアの出展者は、多くが新たな市場開拓や売上増を狙い、あれやこれやの新商品を展示していたが、Googleは発売からしばらく時間が経過した古い本までカバーした上で「探せる」という価値を追求していた。
実は、Googleブースのすぐそばで某老舗書店が70周年を記念して、貴重な書籍をガラスケースに展示し、歴史の積み重ねを企業ブランドとしてアピールしていたが、Googleブックスは古い本までカバーすることで同等の価値を帯びようとしているのではないか。そんな気すらした。
デジタルパブリッシングを含めたブックフェアの全体的傾向についてだが、コンテンツ寄りの流れは皆無だが、大手の大半が電子書籍に対応するという流れはあった。印刷技術の展示についてはオンデマンド+電子書籍というハイブリッド型が主役となっている他、Googleブックスに呼応してか書籍スキャニングサービスなども出展されていたのが印象的だった。
電子書籍端末の展示もあるが、それよりも電子書籍専門のプラットフォームやソリューションの展示がとても多い印象だ。しかし、Gooleブックス&エディションやApple iBooks、Amazonなど外資プラットフォーマーとの衝突について質問しても「そこまで広く考えず、自分達のビジネスドメインで利益を追求できればいい」という回答が大半。「グループ力を活かす」といった企業はあったが、マーケティング戦略を明確に立案したサービスは全くといっていいほどなかった。追求してみると「大きな資本で総取りされたらどうなるか」と不安をこぼす担当者が何人もいたくらいだ。
あれこれ騒がれる電子書籍であるが、業界全体の売りが少ないだけにこの方向に進まざるを得ない状況にあるようだ。資本力が弱まっている日本出版業界ではあるが、今こそ明確な戦略を持って挑まなければいけないのかもしれない。
■ 第17回 東京国際ブックフェア
http://www.bookfair.jp/
■ デジタルパブリッシングフェア
http://www.digi-fair.jp/
■ Googleブックス
http://books.google.co.jp/
(増田(maskin)真樹)
1990年より執筆およびネットメディアクリエイターとして活動を開始。
週刊アスキーを初め、日経BP、インプレス、毎日コミュニケーション、ソフトバンク、日経新聞など多数のIT関連雑誌で活躍。
独立系R&D企業のマーケティング部責任者の後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの立ち上げに参画。帰国後、ネットエイジでコンテンツディレクターとして複数のスタートアップに関与。ニフティやソニーなどブログ&SNS国内展開に広く関与。
現在、複数のメディア系ベンチャー企業にアドバイザー・開発ディレクターとして関与。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。書き手として、また実業家として長年IT業界に関わる希有な存在。
6月17日 翔泳社より「Twitter情報収集術」を発売。
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