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ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市、CESに参加してきました。
このCESで一般公開日の前にメディア向けに開催されるプリイベントCES Unveiledがあります。私は2015年から2017年まで3回のUnveiledをCerevo社の出展スタッフとして参加し、今年は始めて展示する側ではなくメディア側として参加してきました。過去に展示者として参加したことがあるという視点から、今年のCES Unveiledで見つけた面白い製品や、今年のCES Unveiledについての雑感を紹介したいと思います。
CES Innovation Awardsへの応募ルールが大きく変更
まず、今年のCES Unveiledでは大きな変化がひとつあったことに触れておきたいと思います。CES UnveiledにはCES Innovation Awardsを受賞した企業が優先的に展示参加できるようになっています。しかし今年のCES Innovation Awardsへの応募要件には例年までとは大きく異なる条件がひとつ追加されました。
新しく条件として追加されたのが、応募される製品は2017年4月1日から2018年4月1日までの間に初めて米国で発売される製品であること。
CES Innovation Awardsへの応募は8月から開始され、9月中に応募が締め切られ、その後結果が応募者に連絡された後、多くの企業がCES開催時に受賞の告知を行っています。昨年までであれば、応募される製品がいつまでに発売される製品であることと、という規定がなかったため、多くのハードウェアスタートアップがこのCES Innovation Awardsへ応募しており、私の前職の日本のハードウェアスタートアップCerevoもその一社でした。
しかし新しいルールでは、2018年1月に開催されるCES向けの賞に対して、その数ヶ月以内には製品が米国で販売されていなくてはいけないことになります。逆算するとCES開催の頃には量産が開始されていなくてはならず、夏に賞への応募が開始された時点でプロトタイプを元に応募をしようと目論んでいた企業にとってはかなり高いハードルが生じることとなりました。
結果的に、今年のCES Unveiledではすでに2017年に発売された製品や、他の展示会などでも出展されていた製品の顔ぶれが増えていました。CES Unveiledに関する全体的な印象を語る前に、まずはそうした中で筆者が注目した7つの展示製品を紹介したいと思います。
親指の動きだけでドローンを操作する「shift」
親指を上下左右に動かすことで直感的にドローンを操作できる韓国のthis is engineering社(http://www.thisiseng.com/)のshift。親指にリング上のアダプタをとりつけた片手にコントローラを持って操作する。既存のドローンのコントローラを代替して操作することも可能。
体全体で音楽を体感できる「Aurasens Lounger」
フランスのAurasens社(http://www.aurasens.com/)のLoungerというリクライニングチェア。中に30個の振動子が内蔵しており、音楽にあわせて椅子のいろいろな部位が、背中にあたる部分、お尻にあたる部分、腕、ふくらはぎにあたる部分などが振動します。クラシック音楽で体験してみましたが、バイオリンの弦の振動、ドラムの強弱などが体感に変換され、新しい体験が飽きない興味深い製品。
注目を集めていた次世代電動車椅子「WHILL」
今年のCES Unveiledの中で、人だかりができていたブースのひとつが日本のWHILL社(https://whill.jp/)CES Innovation Aardsの中でも、特に評価の高い製品が得られるBest of Innovation Awardを「Accessible Tech」部門で受賞していました。
持ち主についてきてくれるロボットスーツケース「CX-1」
巨大な空港でも重いスーツケースを自分で運ばずに住む中国Forward X社の製品。類似製品が同じ中国の90Fun社からもCESで発表されていました。この手のスマートスーツケースの持込、預入の規制が米航空各社から発表されており、そうした動きへの対応が気になるところ。
イギリス発のフルキーボードスマホ「Gemini」
PDAの名機Psionシリーズのデザイナーがデザインした、Planet Computers社(http://www.planetcom.co.uk)による最小のフルキーボード。日本語キーボードも含め、30のキーボードレイアウトをサポート。展示されたいたのは最初の量産品からのものということで、まもなく始まる販売が待ち遠しい背品。
アマゾンが買収したスマートセキュリティーカメラ、ドアホン「blink」
こちらはシンプルなセキュリティーカメラとテレビドアホンを製造しているblink社。スマートではあるが、機能的には目新しいところはない。但し、blink社の製品は販売実績が多く、先月アマゾンが買収している(米記事)。筆者は偶然、起業した会社で始めたhackfonという製品のクラウドファンディングがきっかけで、このblink社の製品を製造している会社から問い合わせがあり、中国東莞にある巨大な工場を昨年末に訪問してきて衝撃を受けたばかり。幾つかのスタートアップの製品の生産を担当しているこのEMSについては、下記の記事でレポートさせていただいています。
参考「クラウドファンディングを始めたら深センの大手工場から連絡がきた」
http://www.hiroumi.org/2018/01/blog-post.html
光無線通信を利用したワイヤレス通信・照明器具「MyLiFi」
LEDを使用した光による無線通信技術であるLiFiを利用したoledcomm社(http://www.oledcomm.com/)のMyLiFi。ワイヤレス通信端末だけではなく、照明器具としての機能もそなえ、色調も変更可能。驚くことにLEDが点灯していなくても通信が可能で(実際には点灯しているが、人間の目の認識以下)、WiFiの輻輳の影響を心配する必要がない。
全体的に出展者が多くなり、熱量が下がったUnveiled
今年のUnveiledは前述の通り、CES Innovation Awardsへの応募規定が変わったこともあり、全体的に堅実なものが多く、すごく尖った製品が少なかったという印象を受けました。
またCES Unveiledの会場自体が昨年よりも3,4倍大きくなり、混雑していた通路が倍以上の幅になったため、見やすくはなったが、前年まで私が経験した出展者がブースから身動きがとれないと感じるほどの取材が殺到する風景があまり見受けられなかったです。
昨年80ほどだった出展者数も今年は、200以上に増えていましたが、CES Innovation Awardsを受賞した企業以外の出展の割合が増え、半分以上がCES Innovation Awards未受賞な企業が出展を占めているように見受けられたため、これも会場の熱量が下がったように感じた原因ではないかと思います。
CES Unveiledは出展料はAward受賞者であれば割引があるものの標準価格は7500ドル。3時間半の短いイベントであることを考えるとかなり高額です。おそらく昨年までの熱いイベントの熱量を感じて、出展を希望した会社が増えたことから、今年は会場を広くし、Awardを受賞していない会社の出展も増やしたのではないかと思います。
ですが、そのことによって今年は少しイベントの熱量が失われ、出展する側にとっても費用対効果が低下したのではないか、と昨年までのイベントの光景に思いを馳せながら感じました。
それでもCES Unveiledは世界で一躍有名になることができる晴れ舞台。来年以降、筆者も自分の力でいつかこの場に立てられるよう頑張りたいと思っています。