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「iPhoneとツイッターで会社は儲かる」(株式会社EC studio代表取締役 山本敏行氏 著)
とてもシンプルでインパクトのあるタイトルの書籍ですね。発売前(2月23日発売)ではありますが、拝読させて頂く機会があったので、書評としてまとめさせていただきます。おそらく国内初の書評ということになるのではないでしょうか。
まず初めに触れておきたいのですが、この本、なんと初版が3万3千部なのだそうなんですよ。新書ではかなり異例、新書じゃなくてもこの出版不況の中で、ここまでのボリュームで初版を出す人はいないのではないでしょうか。
しかも、山本敏行氏は「10万部、死ぬ気で売ります」とかなり本気モード。すでにAmazonの予約では1位を獲得していますし、もしかすると本当に10万部届くのかもしれません。
さて、本書の内容についてですが、タイトルの通りiPhoneとTwitterの企業導入について書かれたものですが、実は、書籍発行のきっかけと思われるブログエントリーがありました。山本社長によよるTwitterの全社導入レポート「Twitterを全社導入して気づいたこと」です。
EC studioは、iPhoneも全社導入していて、徹底的にTwitterを会社に浸透させようとしています。このブログエントリーには、そのような試みで得たことや気づいたことなどを整理して完結に伝えています。「iPhoneとツイッターで会社は儲かる」の内容の半分は、このブログエントリーを膨らませたもの、と思っていただいてもいいと思います。
目次
・1章 ? ツイッターを会社で導入する目的とは
・2章 ? ツイッターを全社導入して起きた事例
・3章 ? ツイッターのメリット・デメリット
・4章 ? アイフォーンとツイッターが会社にもたらすもの
・5章 ? グーグルアップスとアイフォーン
・6章 ? コミュニケーションのクラウド化で会社は儲かる
・7章 ? スペシャル・インタビュー グーグル辻野晃一郎社長
目次には「Twitter」「iPhone」「クラウド」「Google」、やたら今時のキーワードが並びます。ここで誤解する人もいるようですが、この書籍で伝えようとしているのは、「iPhoneとTwitterを使って流行に乗ろうよ」という話ではありません。
今日、東京IT新聞(3/9号)の取材で山本社長に話をうかがってきましたが、彼の話を聞いて驚きました。だって、EC studioは営業部すらないんですよ。広告はもちろんネット、マーケティングや受注もすべてネットに限定していて、「会って話をしたい」というリクエストも拒否するんです。私は、地方事務所をもつフリーランスなので、似たスタンスを持っていますが、ここまで徹底的にネット&IT化を実践している人はもちろん、日本の企業を見たことはほとんどありません。
ですから、この書籍におけるTwitterやiPhone導入の核心はコミュニケーションにあります。情報収集だけでなく共有、そして伝達までを可能にするTwitterは、企業内におけるチームワークやコラボレーションを円滑にする効果があります。この辺は、過去に注目されたブログ&SNS社内情報共有と共通する部分もあるので、もしかすると気づいている人が多いかもしれないですが、大半が踏み切れない状態にあるのではないでしょうか。導入に踏み切れない理由は、社内交渉ではなく、会社の体制そのものとの不一致であることも気づいているのでしょう。
そう、この本は、実はTwitter導入ハウツー本ではないんです。ITとネットをドラスティックに導入することで、会社の場所に依存せず、営業しなくても売れるし、効率を追求した高利益率体質へと変貌できるという経営指南書といっても過言ではないのです(いい過ぎか)。5章と6章でGoogle Apps(アップスって何?と思った…)などが登場するのは、その流れといえるでしょう。
本の目玉としてGoogle社長との対談がフィーチャーされていますが、私として注目したのはEC studio社員一人一人に対するアンケート一覧です。しっかりと、Twitter全社導入に対する不安な点も書かれています(笑)。しかし、他のサービスとの比較であったり、こういった会社への外部からの反応に驚きを隠せていないというコメントがあったり、へたげなレポートよりも価値があるんじゃないでしょうか
社員全員がパブリックなTwitterアカウントを使用することで、コラボレーション的なチームワークで業務の効率化を果たし、これまで以上のスピード感で、外部を巻き込みつつEC studioそのものを大きく進化させています(実際に個人Twitter経由で売上も発生しているそうです)。興味深いのが「逆にアナログというか、人の存在の大切さを知った」という発言が社員から出できていること。これは、ここまでIT&ネット化を徹底したが故の発言かなと、思いました。
山本氏は「おわりに」でこんなことを言っています。
インターネットの最も素晴らしい点は、「弱者に光を当てる技術」であるということです。リアルの世界では強者が強いのが当たり前でしたが、インターネット上においては、リアル世界の強者が必ずしもネット上でも強いとは限りません。
とても共感できるこの言葉。IT&ネットを徹底的に実践することで、これまで埋もれていた発言に光が差し込む。山本氏は、Twitter全社導入でそれらのことを強く実感したそうです。彼は将来「発展途上の国にもIT化支援をしたい」と言っています。この本は、決して背伸びしない、等身大の彼の姿勢がありのまま出でいるような印象を受けました。
本書は、ハウツー本ではありませんから、正直言って「iPhoneとツイッターで会社は儲かる」かどうかわかりません。しかし、この本を読んで、実践することで本当に大切なものが何か見え、儲かる体質の企業ビジョンが浮かんでくるのではないかと思います。
iPhoneとツイッターで会社は儲かる
著者:山本 敏行
販売元:毎日コミュニケーションズ
発売日:2010-02-23
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(増田(maskin)真樹)
1990年より執筆およびネットメディアクリエイターとして活動を開始。
週刊アスキーを初め、日経BP、インプレス、毎日コミュニケーション、ソフトバンク、日経新聞など多数のIT関連雑誌で活躍。
独立系R&D企業のマーケティング部責任者の後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの立ち上げに参画。
ネットエイジでコンテンツディレクターとして複数のスタートアップに関与。ニフティやソニーなどブログ&SNS国内展開に広く関与。
現在、複数のメディア系ベンチャー企業にアドバイザー・開発ディレクターとして関与。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。
書き手として、また実業家として長年IT業界に関わる希有な存在。詳しいプロフィールはこちら。