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ブルーオーシャンを探そうと思っても、そんなに簡単には見つからない。もっともっと小さな隙間。いわば「ブルーパドル(水たまり)」を探しましょうと提案する面白法人カヤックの意匠部デザイナー佐藤ねじ氏。「ブルーパドルの話をきいたとき、アイデア創出のファシリテーターという活動している私自身がブルーパドルだなと共感した。人生ブルーパドルなハブチンが、佐藤ねじさんに「自分のブルーパドル」という切り口でお話を伺った。
「普通の人」だからこそ「ブルーパドル」は見つかる
ハブチン はじめまして、私「ハッカソン芸人」という肩書きで、アイデア出しのファシリテーションをさせていただいております。本日はねじさんの「ブルーパドル」のお話に興味がありましてお時間をいただきました。
ねじ ハッカソン芸人って素敵ですね。こちらこそよろしくお願いいたします。
ハブチン 以前、ブログで書かれていた「ブルーパドル」について改めて教えてもらえませんか。
ねじ よくビジネス用語で競合が多い市場をレッドオーシャン、まだ未開拓の市場をブルーオーシャンという言い方をしますよね。でもブルーオーシャンなんてほとんど見つかりません。そこでレッドオーシャンに戻ってよく観察していくと、まだ誰もやっていない小さなスキマがあったりします。そのスキマのことをブルーパドル(水たまり)と呼んでいます。
ハブチン たとえばブルーパドル的な作品としてはどういうものでしょうか。
ねじ 最近の事例でいうと、タップダンスのタップ音を、いろんな音に変化させたタップボード「SOUND OF TAP BOARD」ですね。今までタップダンスは、あのタップ音だったために、あのタップダンスの動きになっていたので、もしタップ音が変われば、タップダンスはどう変わるのか?を問うた作品です。
ハブチン なるほど。ダンスパフォーマンスとデジタルコンテンツの組み合わせは、レッドオーシャンになりつつある領域ですよね。一般的に「ダンスに合わせて、光や視覚効果でどう演出するか」という考え方ですけど、「音を変えて、ダンスの方が合わせる」という考え方は、まさに誰もやってない「ブルーパドル」ですよね。
ねじ はい、この作品は3331α Art Hack Day 2015というハッカソンから生まれたもので、サービス・プロダクト部門最優秀賞を受賞しました。3331 Arts Chiyodaで行った展示では、タップダンサーだけではなく、来場者もこの装置を体験をできるようにしました。
ハブチン 確かにハッカソンっぽい。でもブルーパドルってちょっと邪道な気もします。「ダンスに合わせて、光や視覚効果でどう演出するか」という考え方が主流で、真っ向に挑戦する人たちもいると思うのですが、あえてブルーパドル(水たまり)を見つけようとするのには何か理由があるんですか?
ねじ 真っ向勝負では、私のような「普通の人間」では勝つのが難しいからです。
ハブチン「普通の人間」。「普通」は佐藤さんのキーワードのひとつですよね。
ねじ はい、子供のころから「普通」だったんですよね。スクールカースト(自然に人気の度合いで生まれる序列)ってあるじゃないですか。スポーツができるとか、ゲームがうまいとか、それが全部中くらいだったんですよね。だから自然と自分の存在意義について考えるようになりました。
ハブチン 子供の時は漫画を描いていたと聞きましたが。
ねじ はい、描いてました。でも漫画の世界にもスクールカーストがあって、ドラゴンボールの悟空をうまく描ける人がすごいみたいな風潮があったんですよね。
ハブチン 確かにありました。
ねじ でもそこで僕がドラゴンボールを描いてもレッドオーシャンなのでおもしろくならない。もっというとクラスの中で一番うまく描ける人も鳥山明先生のコピーにすぎない。だから自分で「おにぎりくんと神様」というオリジナルの漫画を描いていました。
ハブチンえっ
ねじ いろいろマンガを描いて、週刊少年ジャンプみたいにコミック形式にしていました。ワンピースみたいにメインの漫画があって、箸休め的なギャグ漫画もあって。3巻くらい出したと思います。結局、妹にしか見せてなかったですが。
ハブチン 妹だけ!?子供のころから「ブルーパドル」な生き方だったんですね。
ねじ はい、当時はまだ「ブルーパドル」という言葉はなかったですが、「普通」であるからこそどうすればいいか工夫をする。それが今のアイデアや考え方につながっていると思います。
ハブチン だから今までにないおもしろいものが生み出せるのかもしれないですね。
「自分のブルーパドル」を見つけるために継続することは大事
ハブチン 僕も普通の人間なので、普通に頑張っても優秀な人たちには敵わない。「普通」であるからこそどうすればいいか工夫して、行き着いた先がアイデア出しのファシリテーターという仕事でした。
ねじ まさに『自分のブルーパドル』ですね。
ハブチン そう『自分のブルーパドル』。『自分のブルーパドル』を発見したら、仕事を通じてどんどんおもしろい人と出会うようになりました。ねじさんの中で「自分のブルーパドル」を見つけたって瞬間ありますか?
ねじ ありますね。基本つくることはずっとやっていたんですが、プライベートでつくった作品が文化庁の賞をいただいたときから変わった気がします。
ハブチン そうなんですね。どんな作品だったんですか?
ねじ 「prototype1000」っていうグッズのアイデア提案サイトです。その中の本能寺ストーブという、ストーブで本能寺の変を表現した作品があって、ツイッターでバズりました。
ハブチン 本能寺ストーブ(笑)
ねじ カヤックに入ったのもこの作品のおかげでした。
ハブチン おもしろい、プライベートの活動が評価されたわけですね!実は僕もファシリテーターをするキッカケになったのは、プライベートの活動だったんです。
ねじ なにがキッカケになるかはわかりませんからね。まずはプライベートでもなんでもやってみること、そして継続していくことが大事だと思います。
ハブチン たしかに継続することは大事ですよね。
ねじ 継続できる人って意外と少ないんですよね。年を経るにつれ、飲み会だとか、子育てだとかいろんなイベントがあるので、つくるのをやめていく人が多い。たとえ「普通」でも、継続することで差につながると思います。(たくさんのノートを取り出して)日頃からアイデアを見つけたらすぐメモって、毎週休日になったらまとめるという作業をずっとつづけています。
ハブチン 継続することが、今のねじさんに繋がってるんですね。勉強になります。
「自分のブルーパドル」は掛け合わせで進化していく
ハブチン でも「自分のブルーパドル」ってブルーオーシャンよりも水分が少ないと思うんです。つまりニッチすぎて、その仕事がなくなってしまうんじゃないかとかと不安になったりします。
ねじ どうなんでしょうね。「自分のブルーパドル」は、その人が持つ性質みたいなものなので、その時に合わせて変化することはあっても、無くなることはないと思います。ワンピースなら悪魔の実の特殊能力だったり、HUNTER×HUNTERだったら念能力だったりそういうものです。
ハブチン 「自分のブルーパドル」は性質みたいなものですか。
ねじ まず最初はその性質を極めていくんです。
最初はルフィも「ゴムゴムのピストル」だけだったのが、性質を極めて「ゴムゴムのガトリング」とかになる。
ハブチン 性質を極めていくことでアウトプットが進化するということですね。
ねじ あとは他の性質をかけあわせていくというやり方があります。
例えばゴンは強化系でグーという攻撃がありますが、変化系でチョキ、放出系でパーになったりします。
ハブチン 他の性質と組み合わせてアウトプットを変えるということか。
ねじ たとえば自分でいうなら、「アイデア」と、「デザイン」という感じですかね。
オシャレなロゴを作るような「デザイン」だけもできるし、「アイデア」と「デザイン」を組み合わせておもしろい表現をすることもできる。どちらか一方だけだと、やっぱり弱いんですよね。
ハブチン なるほど。僕なら「アイデア」と「ファシリテーション」みたいな感じですかね。
ねじ 世の中は常に変化するので、その時々にあわせて自分が持ってる性質を掛け合わせてアウトプットを変えていく。そうすれば枯渇することはないと思います。
ハブチン なるほど。ちょっとワンピースとHUNTER×HUNTERを読み直します(笑)
何をするかよりも誰とするか
ハブチン 何かつくるうえでこだわりとかはありますか?こういう作品を作りたいとか。
ねじ こだわりですか……。あんまりWebでなければいけないとか、こういう技術でなければいけないとか、そういうこだわりとかはないですね。
ハブチン アートディレクターってこだわりが強いイメージでした。
ねじ 周りに面白いエンジニアやディレクターがたくさんいるので、
その人たちの特徴というかオタクな部分を引き出して生み出した方がおもしろいかなと。
ハブチン いろんな性質を持つの人と組むことで、作るものも変わってきますしね。
ねじ はい、何をするかよりも誰とするかは大事ですね。
ハブチン 将来的にどういう方向に進んでいきたいとかあるんですか?
ねじ 必殺技レベルの大ヒット作品を一発あてるというより、強パンチレベルのヒット作品をコツコツ作り続けていきたいです。
ハブチン なるほど、数で勝負していくわけですね。
ねじ そうですね、おじいちゃんになってもずっと創り続けていきたいです。
ハブチン ステキです。すごく勉強になりました、ありがとうございました!
佐藤ねじさんの個人サイトはコチラから
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