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インターネット上では情報が上から下の一方通行ではなく、相互に横に流れるー。そう言われるようになって久しいが、実際には「横の情報の流れ」の形ってはっきりと体系だって語られることが少なかった。マスメディアに代わって力を持つと言われるようになったインフルエンサーからの情報発信だって、所詮は上から下への一方通行の情報の流れ。
ところが最近読んだ「Grouped: How small groups of friends are the key to influence on the social web (Voices That Matter)」という本の中には、横同士の相互の情報の流れについて興味深いデータや考察が幾つも掲載されていた。
参考までに代表的なものを幾つか見てみよう。
大半のコミュニケーションは親密な数人が相手
本の中で紹介されていたのは、Stefana Broadbent氏の調査結果。携帯電話の中に何百人もの電話番号が記載されていても、電話件数の80%は最も親密な4人が相手なんだそうだ。
また著者のPaul Adams氏はFacebookの従業員なんだが、同社の内部データによると、Facebookユーザーの平均的な「友達」の人数は160人。実際にコメントしたり、「いいね!」したり、メッセージを送る相手は、週に平均4人。月で見ても6人しかいないという。
どれだけコミュニケーションツールが発達しても、人間のコミュニケーションのほとんどは仲のいい少人数が相手、というのがこの本の最大の主張。マーケティングも、この少人数に向けてどう情報発信すべきかを考えるべきだという。
実はこの本、2002年に出版された「The Tipping Point」という本が広めたインフルエンサー重視のマーケティングに対する反論という形で書かれている。Groupedを執筆したPaul Adams氏は「インフルエンサーを見つけるのは大変で、影響力も限定的。インフルエンサーを核にしたマーケティングはコストパフォーマンスが悪い」と主張している。
インフルエンサー重視のマーケティングに反論するため、この本の中で同氏はいろいろなリサーチ結果を紹介している。
・7400万件のTweetのうち、1000回以上のRTを記録したのは20数件、1万件以上のRTを記録したのはわずか2,3件。「一人が多くの人に影響を与えることは非常に珍しい」E.Bakshy氏のTwitterに関するリサーチ「Everyone’s an influencer:Quantifying influence on Twitter」から
・ブランドに関する口コミの70%は、インフルエンサーではない一般のユーザーによるもの。残りの30%が、人口の15%を構成するインフルエンサーによる口コミ。(マーケティング・コンサルティング会社The Keller Fay Group)
消費行動に関する決断は、インフルエンサーからの影響ではなく、仲のいい人からの影響で無意識に行うものであることが分かってきたのだという。
同氏によると、米国のマーケターは、インフルエンサー重視から、少人数の仲のいいグループを重視するマーケティングに移行し始めた。これがマーケターにとって2010年代の重要なテーマになるだろう、としている。
We’re at the beginning of a cycle in business where we can move away from this idea of “influentials” and instead focus marketing activity on small connected groups of close friends. This shift is what marketers are starting to think about, and what will be the prominent theme for this decade.
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