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年の瀬。これまでの僕のコラム記事を総括するとともに、来年のネット周りの予測をしたい。来年は「リアル」で「クローズド」なソーシャルメディアの年になると思う。その理由は以下の通り。
【背景】
Facebookの日本での普及が始まった。10月ぐらいからユーザー数が急速に拡大しているようだ。これに対抗すべくmixiも、すごい勢いで開発を進めている。この両社の競争が、リアルな人間関係を核にしたSNSの可能性を多くの人に気づかせることになるだろう。(関連記事:2011年 Facebook、mixiはともに成長 変わるのはマーケティング【湯川】)
Facebookを題材にした映画「ソーシャル・ネットワーク」が米国で大反響を呼んでいるようだが、これが日本でも年明けの1月15日に封切りになる。米国ほどの成功が日本で見込まれるかどうかは不透明だけど、この映画をきっかけに一般的な日本人でも「ソーシャル・ネットワーク」「Facebook」という言葉を知るようになるだろう。(関連記事:映画「ソーシャル・ネットワーク」は日本でヒットするのだろうか【湯川】 : TechWave)
【結果】
上の2つの動きの結果、企業がFacebookやmixi上でのマーケティングに力を入れるようになるだろう。企業ファンページを持つところも増えるだろう。米国ではほとんどの企業やブランドがファンページをFacebook上に持っている。持っていない企業はない、と言っても過言ではないくらい。10年前のホームページ製作ラッシュのようなFacebook、mixiファンページ製作ラッシュというのが起るのではないだろうか。
また企業ファンページだけではなく、SNSのリアルでクローズドな人間関係を通じたマーケティング施策がいろいろと試されるようになると思う。mixi上で行ったキットカットのマーケティングは、無料クーポンが当たったユーザーはその情報を発信すれば友人二人にクーポンをおすそ分けできるというものだった。親しい友人との空間というmixiの特性を活かしたキャンペーンだ。同様にリアルでクローズドな人間関係をベースにした施策がいろいろ試されるようになるだろう。(関連記事:mixi&キットカットのプロモーションに見るリアルソーシャルグラフマーケティング【ループス岡村健右】 : TechWave)
【仮説】
これまでの日本のソーシャルメディアは、どこのだれか分からない者同士で交流するという形が中心だった。2ちゃんねるやニコニコ動画がその代表例だ。
ところがFacebookは実名主義。実際のオフラインの友人たちが中心の人間関係で構成されている。mixiは実名以外もOKだが、出会いがオンライン、オフラインに関わらず、自分にとって大事な友人、知人の暖かい空間を目指している。つまりそういう意味では「リアル」な人間関係で構成されている。
しかも友人間の情報発信は「友達に限定」設定されることが多く、友人間のやり取りは外から見えない。「クローズド」な空間であるわけだ。
2ちゃんねるやニコ動のような「バーチャル」「オープン」な空間は、ユーザー間の交流が可視化できるため、非常に賑わっているのが分かる。一方でFacebook、mixiなどの「リアル」「クローズド」な空間は、友人間のやり取りが外から見えないので賑わっているのかどうか可視化できない。
しかし「リアル」「クローズド」な空間のほうが、「バーチャル」「オープン」な空間よりも、実は賑わっている、交流が盛んになる傾向がある、という仮説がある。
【兆候】
その仮説が正しいのではないかと気づかせてくれたのが、ソーシャルゲームの大成功である。農園系ゲームなど一人で耕し、種をまき、収穫しても、何も楽しくない。自分にとって大事という意味の「リアル」な友人とプレゼントし合うからこそ楽しいのである。
こうした「リアル」「クローズド」の交流のほうが盛んになる可能性がある、という仮説が正しければ、ソーシャルゲーム以外の領域も、今後大きな変革の波に飲み込まれるのではないだろうか。
そう考えたシリコンバレーのベンチャーキャピタルKleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)は総額2億5000万ドルのsFundを創設し、ソーシャルな企業に投資しようと考えているわけだ。(関連記事:いでよ!業界に激震起こすソーシャルベンチャー Amazon、FacebookらがsFund創設【湯川】 : TechWave)
【可能性】
ソーシャルゲームの次に大きく変革するような業界はどこなのだろうか。コンテンツ系業界は変化が早いと思う。音楽、書籍、映画、ニュースなど。
コマースも大きく変わるだろう。
旅行なども変化するかもしれない。米旅行サイトのTripadvisorがこのほど、Facebookのインスタント・パーソナライゼーションに対応した。Tripadvisorのサイトにアクセスするだけで「Hi, Tsuruaki」というメッセージで出迎えてくれて、僕のFacebook上の「友人」のアクティビティーが大きく右コラムに表示される。また「友人」が行った都市や、お気に入りの都市、これから旅行する予定の都市、出身地、現在居住地などが地図上に表示されている。僕の「友人」の間で人気の都市がランキングされるコーナーもある。旅行の際に「友人」にアドバイスを聞くことができるわけで、友人とのコミュニケーションを促進してくれる効果があると思う。
こんなようにいろんなサイトやサービスが「リアル」で「クローズド」な人間関係を取り込むことで、大きく変化するのだと思う。
この変化の時期にいち早く動くことで業界の勢力図を塗り替えることができるだろう。
ということで来年のソーシャルは、「リアル」「クローズド」がキーワードになると考えている。
【TechWaveとしての取り組み】
「TechWave塾」第4期は、この動きを理解しビジネスモデルを検討するということがテーマの少人数勉強会です。わたしく湯川が中心になって行います。ご興味のある方はtsuruaki@gmail.comまで
また優れたビジネスモデルに優れたアプリは鬼に金棒。そこでマスキンが中心になって「TechWaveソーシャルアプリ部」を立ち上げてくれました。変化をチャンスととらえる開発者を支援していきたいと思います。
来年もTechWaveは、情報化社会に向けて日本を、個人を、変革するために頑張っていきたいと思います。