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献本多謝。フェイスブック 若き天才の野望
以前にも書いたが、この本の原文であるthe Facebook Effectという本は、僕が読んだFacebook関連の本の中で一番よかった本。なぜよかったのかというと、原文のタイトルにある通りFacebookの社会に対するeffect(影響)にまで踏み込んで書いているから。それまでのFacebookの本って物語としては面白いんだけど、Facebookの本当のすごさにまで言及していなかった。
Facebookのすごさって何だろう。一番近いところでは、プライバシーの概念を揺さぶっているところだと思う。
イケダハヤトさんが寄稿してくれた「結局はプライバシーの問題」というエントリーの中で、「人々がより豊かに暮らすような世界を作るためには、オンライン/オフラインで露出することを肯定的に捉え、露出のメリットを享受していく姿勢が求められるのだと思う」と主張しているが、これこそFacebookのMark Zuckerberg氏の主張そのもの。この信念に基づいて、露出メリットを享受する方向にわれわれのコンセンサスを少しずつ押し進めているのがFacebookなのだと思う。
FacebookがNewsfeedという機能を最初に搭載した際に米国で大変な反対運動が起こった。例えば自分の交際ステータスを「交際中」から「シングル」に変更すれば、その内容が友人のNewsfeedに一斉に表示される。「今日は5番街でランチ」と書けば、その情報がすべてNewsfeedに流れる。そういう情報をいちいち流すのはプライバシーの侵害だというのが反対者たちの意見だった。
反対者たちは「Students Against Facebook News Feed」というグループを組織し、ピーク時には75万人近くがこの組織に参加した。当時のFacebookユーザー全体の8%に当たるユーザーがNews Feedに反対したわけだ。
反対を受け、FacebookはNews Feedに流す情報をユーザー個人が簡単にコントロールできるように仕組みを微調整した。しかしNews Feedというサービス自体は継続された。
反対運動から2年。今ではNewsfeedはFacebookで最も人気の機能の1つだし、ユーザーはTwitterなどを通じて現在地や現在の状況を平気で公開するようになった。「Students Against Facebook News Feed」を組織したBen Parr氏は、米MashableにSocial Media and Privacy: Where Are We Two Years After Facebook News Feed?という記事を寄稿し、その中で「僕自身そして多くのユーザーのプライバシーの考え方に、いったい何が起こったのだろうか」と書いている。
Ben Parr氏、そして多くの米国人Facebookユーザーが、イケダさんの言うところの「露出のメリットを享受し」彼らのプライバシーの概念が変化したのだと思う。
これが一番最初に現れるFacebook効果なのだろう。そしてイケダさんの言う「『露出リテラシー』を身に付けた人が増えてくれば、世界中でより多くの『つながり』が発生するエキサイティングな世界が訪れる」というのが、長期的なFacebook効果なのだろう。
こうした長期的なFacebook効果にまで言及しているという点で、「フェイスブック 若き天才の野望」は類似のFacebook本の中で際立っていると思う。
さて今日偶然にもNew York Timesが、日本でFacebookのユーザーがまだ少ないのは実名制を強要しているからだというような論調の記事を挙げている。確かに実名制だからFacebookは日本で普及しないという意見は根強い。しかしそうした状況も変化するのだと思う。米国人のプライバシーの概念が2年で変化したように、日本人の実名に対する考え方もいずれは変わるのだろう。
日本人は日本人が考えるほど特殊な民族ではない。これは自分の人生の半分近くを米国で過ごした僕の結論の1つである。