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SEOツールGinzametricsを開発するGinzamarkets創業者のレイ・グリセルフーバーさんと、先頃日本のカントリーマネージャーに就任した清水昌浩さんに話を聞いてきました。
Ginzamarketsは、読者にはすっかりお馴染み、人によっては憧れのY Combinator~500Startupsという流れで出資を受けています。後半には出資の話も出て来ますので、SEOには興味ないやという方も是非読んで下さい。(運営企業名はGinzamarkets、製品名がGinzametrics)
レイさんはアメリカ生まれ。大学ではコンピューターサイエンスと日本語という二種類の言語を専攻。その後エンジニア・マーケターとしてSEO・SEMに関わり、2008年独立とともに日本へ。コンサルティングなどを経て1年半後Ginzametricsを作成。Y Combinatorへの通過を期に再びアメリカへ。
Ginzametricsとは
レイさんの言葉を借りると、Ginzametricsはエンタープライズ向けSEOのプラットフォームである。
まず、このwebサービスの対象者は、
- SEO業者ではなくサイト運営者自身(そのため操作性や可視化に優れる)
- 大規模(多数の)サイトやグローバルサイトを展開している
- 順位以上に、キーワードからのコンバージョンを気にしている
この3つが揃ったSEOツールは世界中どこにもないとのこと。
出来ることは何かというと、
- キーワード:キーワードに対する流入数とコンバージョン数を自動的に表示
- コンテンツ:クロールし、コンテンツが最適化されているかを表示・診断
- リンク解析:サイト内外のリンク最適化とリンクフローの作成
- アドバイス機能:サイトごとに市場(国や言語)を登録し、それに応じたアドバイスを提案
- コンバージョン:Google Analytics(GA)のゴールやEコマースサイトでの設定(特定のURLへの到達など)を計測。キーワード順位とアクセス解析を紐付けることで、多数のキーワードの中から、順位に対してのコンバージョン(流入、売上額など)を見られる。
これは、もちろん機能のほんの一部。
日本生まれシリコンバレー育ちというだけあり、国際化・多言語化対応も進んでいる。国では30カ国、UIで4ヶ国語(米、日、西、中)に対応。ユーザーからのフィードバックや、独自の調査・研究で市場ごとのアドバイス内容が作られている。例えば、日本を対象としたサイトに対するアドバイス項目は米国よりも少し多いという。
現在世界で数千のアカウントがあり、約20カ国にユーザーが存在する。(以前あった)無料プランと有料プランも含めると:約4000アカウント。有料プランは約100、トライアル中が50。国別では、米国、日本、ドイツ、カナダ、ブラジルが多く、次はドイツ語、ポルトガル語のUIをリリース予定となっている。
日本市場や今後の課題
→日本のSEO事情について
リンクファームが未だに幅をきかす日本市場に対して
大きく分けると2タイプのお客様がいると考えている。一つ目は、自社内でSEOをやっていて、どうやったらもっと上手くいくのか考えている企業。こういった企業さんは、弊社の商品をすぐに理解し、自社の課題解決につながると判断してくれる。
もう一つは、SEOを諦めかけている(優先度を下げている)会社。彼らは今まで、見えなかったから把握出来ない、だから対応も出来なかった。(清水)
彼らに対し啓蒙活動をしていきたい。大規模サイトのSEOは概念的には難しくないが、難しいのは組織の部分。関与者が多く、また各人のスキルや決定権などのレベルが違うことがあり難しい。判断が分かれる時にもデータで意思決定出来るような仕組みを提供している。(レイ)
→Google依存ビジネスについて
パンダアップデートや自社サービスを無料で拡大していくGoogleに対して
例えば、このニュース
「米Google、検索サービスのSSL接続を標準に [詳細版]」
http://www.sem-r.com/news-2011/20111020021735.html
http://googleblog.blogspot.com/2011/10/making-search-more-secure.html
これはもっと早くやるだろうと思っていた。なぜならGoogleにとっては、自然検索のキーワードのデータが取れると、(その効果が見えることで)ペイドサーチの利用者が増えないから。
発表によるとログインしているユーザのクエリーしか暗号化されず、アクセス解析ツールで取得出来るキーワードは最大10%しか減らない。いずれにせよユーザーは自然検索をやめないので、Googleが複雑な環境を作った方がむしろ我々にとって有利だ。(※注1)
アメリカでのデータだが、検索結果のページでクリックされる比率は自然検索の結果(SEO)が90%なのに対しPPCはたったの10%。一方、PPCに書ける予算は3兆円(30B) 、SEO市場は4000億円(4B)。PPC予算の半分でもSEOに使ってくれれば。(※注2)(レイ)
※注1http://searchengineland.com/google-to-begin-encrypting-searches-outbound-clicks-by-default-97435
※注2http://www.slideshare.net/thewoffordgroup/forresterinteractive-marketing-projectionsなどから予測
→SEOとソーシャルメディア
SEOよりも、ソーシャルメディアを利用したマーケティングがトレンドだが
SEOとソーシャルは無関係ではない。SEOでやっていることがソーシャルでのプロモーションにも影響を与えていく。例えばメタデータのタギング次第で、シェアの数なども変わっていく。
また、SEOもソーシャルも、コンテンツが自然に広がるようにすることがポイント。データに基づいて意思決定出来た方がいい。今後ソーシャルに関する機能も追加し、モバイルやスマホにもより対応していく。確かにSEOという言葉自体は古くなっていて、最近はコンテンツの最適化を支援するプラットフォームという言い方をしている。(レイ)
ソーシャルの流れはむしろチャンス。ソーシャルでの施策にお客様の予算や人が移行しつつある中、SEOの効率化がさらに求められている。そこに弊社のツールが活かせる。(清水)
Y Combinatorや500Startupsについて
最後に出資についてレイさんに聞いた。
→Y Combinatorは当時、何を評価してくれたのか?
大きく3つある。まず、私の技術力を評価してくれたこと。共同創業者がいないと落とされることが多いが、私もDropboxもそうだったように例外もある。次に、既に商品があり売上が少しでもあったこと。当時、日本の大きなECが採用し毎月10万円の売上があった。私が外国人であるにもかかわらず、彼らがプロダクトを採用したことがファウンダーの力の証明になった。ソーシャルプルーフ、つまり誰が出資しているかも大事だが、誰が購入・利用しているかも大事。最後に、自分の製品の業界であるSEO業界に詳しかったこと。業界の展望についてよく聞かれた。それに答えられないと、彼らは自信を持って投資が出来ないと思う。
→Paul Grahamは「何の課題が解決されるのか」とよく聞くらしいが、何と答えたのか?
大規模なコンテンツの最適化のプラットフォームを提供したいと答えた。Paul Grahamは、大きなことでなく細かい問題の解決、すなわちビジネスマンが普段苦労していることを解決するようなアイディアが好き。
Y Combinatorに入ると「make something people want(人が欲するものを作れ)」というTシャツをもらえる。その言葉が全て。会社がEXITすると、今度は「 I made something people want(人が欲するものを作った)」と書かれた黒のTシャツをもらえて、それを着ている人は尊敬の目で見られている。
【TechWaveコミュニティからの質問】
→資金調達っていきなり一括で振り込まれるのか?
そうです。入ったときは「よっしゃー!」と思った(笑)
→調達金のうち、お金でなく人や物で支給というのはあるか?
メンターやアドバイザーという意味での人的支援もある。弊社の4人のアドバイザリーボードメンバーは500Startupsが用意してくれた。
なぜGinzaなのかというと、日本で仕事をしていた時のクライアントが銀座に多く、ショッピング街銀座と、自分が手がけていた製品の対象(Eコマース)がぴったりに感じたからだそう。
また、ここでは書ききれなかったY Combinatorでの話はレイさんのブログに詳しく載っています。特にこのエントリは必見です。
Y Combinatorが求めるOutlierが持つ特性
http://ginzametrics.jp/ycombinator-looks-for-outliers.html
写真家、広義の編集者。TechWave副編集長
技術やビジネスよりも人に興味があります。
サービスやプロダクトを作った人は、その動機や思いを聞かせて下さい。
取材時は結構しっかりと写真を撮ります。
http://www.linkedin.com/in/okappan
iiyamaman[at]gmail.com