サイトアイコン TechWave(テックウェーブ)

「Cu-Hacker」の野望 スケジュール調整を10倍早くする→気づかいエンジン、そしてその先へ 【増田 @maskin】


[読了時間: 2分]

 ジェネストリーム(Genestream)は2013年6月4日、スケジュール調整をスムーズにするウェブサービス「Cu-Hacker (クウハッカー)」のスマートフォン対応版を公開した。それは、彼らにとって重要なマイルストーンとなる。


写真:右からジェネストリーム 代表取締役社長 秋貞雄大 氏、最高技術責任者 粟島正俊 氏、デザイン担当 大堀祐一 氏(Den Desgin在籍) (Photograph by @maskin)

 ベータ版のリリースは5月7日

 「実は、ゴールデンウィーク直前というタイミングで、ほぼ完成していたCu-Hackerを一旦壊して、作り直したんです」。

 そう告白する代表取締役社長 秋貞雄大 氏。

 「当初のCu-Hackerには、メッセージングといったコミュニケーション機能を盛り込んでありました。

 しかし、スケジュール調整機能は、私達が描くビジョンの第一歩。ここでフォーカスがずれてしまっては、先も見えなくなってしまうと考えたんです」。

 あと数日という限られた期間の中での作り直し。しかし、限界までシンプルにしたことで、ニーズを感じていたユーザーからは喜びの声や期待の声が多数寄せられた。

 特に多忙を極める有名企業の社長やアーリーアダプター層からの支持が目立つ。


喜んでもらった要因は「どシンプル」にしたこと

 CEOの秋貞氏の前職はサイバーエージェントの営業職。

 「代理店業務なので、日々日程の調整をすることが多かったんです。いろいろなサービスを模索する中で、よく使用するサービスとそうでないものとがある。じゃあ、良いところを全部集めたサービスを、自分で作ってみたい」と思い会社を辞めてジェネストリームを設立したんです」(秋貞氏)

 やりたいことは明白。「無駄な空き時間を解消し、ビジネスマンに1日あたり30分という時間を増すこと」。

 まずは「空き時間を有効活用する」ということにフォーカスすべきと考え、機能を極限までシンプルにしていく。結果としては、そのシンプルさが多くの人に評価されていった。

 秋貞氏がやりたいのは、カレンダーツールではなく「調整するという行為自体を無くす」ことだった。その観点からコミュニケーション要素は不要ではないものの、当初のフォーカスを絞るという意味ではむしろマイナスに作用すると考えたのだ。


気づかいができるエンジン

 ベータリリース後のCu-Hackerでは、Googleカレンダーと連携し、複数カレンダーから予定を読み込むなどして、空き時間調整そのものの手間を解消してきた。

 今後も「自分が選択した空き時間をURLとして発行し、予定を組む相手が自由に時間帯を選択できたり、ビジネスパートナーはいつでも空き時間をチェックできるようにするなど、予定の調整そのものを自動で処理できるようにする」という。

 「Cu-Hacker開発前の調査で、多くの人がカレンダーに会う人と場所、時間を入力していました。

 それらの情報をいつ見るかというと、ミーティングの直前で、カレンダーと路線図を逐一チェックして、現地周辺でスマホの地図をチェックしているんです。

 もし、事前に入力してくれた情報を元に、事前に出発時間や路線ルート、地図を先まわりして調べて閲覧しやすく出してくれたら?

 Cu-Hakerは、そんな気づかいができるエンジンを目ざしたいと考えているんです」(秋貞氏)

 Appleが20年以上前に提唱した「ナレッジナビゲーター」を筆頭に、昔から人工知能型のエージェントに注目が集まったが、Cu-Hackerは「リコメンデーションエンジンというよりは、ユーザーの嗜好やくせをベースに、適切な機能や情報を提供できるプラットフォームに育てる」考えだという。

 秋貞氏が掲げるシンプルながら壮大なビジョンに、ほんの1か月半前までワークスアプリケーションズに勤務していた最高技術責任者 粟島正俊 氏が共感。続いて、TOKYO OTAKU MODEの初期のデザインを担当したデザイナー 大堀祐一 氏(Den Desgin在籍)が関与することになる。

 大堀氏は、職業柄、予定調整サービスについていまいち可能性を感じていなかったというが「ニーズがあることを力説され、その熱意とチームのおもしろさに魅了されました」と言う。

 秋貞氏が狙うのは、プラットフォーマー。

 「マイクロソフトやSalesForceなど沢山の大手がいるビジネス市場ですが、、ニッチの四隅が埋められていないと感じています。

 多様なツールやサービスといった仕組みをモジュール化し分散的に展開し、「便利になったね」と言ってもらえるようなことを増していきたい」。

 彼等の想定する市場規模は、ビジネスで、Googleカレンダー(Apps含む)を使用しているのは200ー300万人。まずは、この中で10%から15%のユーザーに利用してもらえるようにする考え。

 サイボウズやOutlookといったカレンダーサービスについても、すぐにでも対応は可能だが、まずはGoogleカレンダーだけにフォーカスして、ここでのパフォーマンスを見ながら随時拡大していきたいという。

 将来は、あらゆるカレンダーサービスと連携し、「スケジュール調整はCu-Hackerだね」と言われるようになりたいとのこと。ビジョンが壮大で明確。日本のスタートアップシーンでは、意外とそういうプレイヤーは少ないというのが現状。そんな彼らのチャレンジの今後に注目したい。



【関連URL】
・スケジュール調整を10倍早くする「Cu-Hacker (クウハッカー)」ベータ版登場 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/cu_hacker_beta.html

蛇足:僕はこう思ったッス
 カレンダーに予定が詰まっていて、外部との調整をするのは多忙な経営者や営業マン、そしてフリーの人間に限定されるのでは?という思いが頭をめぐっていた。しかし、彼らにはそれも想定済み。アーリーアダプターを筆頭としたインフルエンサー的な個人に評価してもらうフェーズが今であり、今後予定されている、グループ機能を投入するタイミングで、彼らが関係者を巻き込む役目を果たしてくれると期待しているとのこと。シンプルにしたことで、一般にユーザーが拡大しても、受け入れられやすいと考えているようだ。確かに。
本文にも書いたが、やりたいことが壮大で明確というスタートアップは少ない。実は、彼らはB DashVenturesの「B Dash Camp」に参加する機会を得て、そこにメンターとして参加していたインキュベイトファンド和田氏の支援が大きいようだ。なお、ジェネストリームはインキュベイトファンドからシード投資を受けている。
著者プロフィール:TechWave 編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
変化し続ける高エネルギー生命体。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてのIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなどほとんど全てのIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ブログCMSやSNSの啓蒙。ネットエイジ等のベンチャーや大企業内のスタートアップなど多数のプロジェクトに関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。活動タグは創出・スタートアップマーケティング・音楽・子ども・グローカル・共感 (現在、書籍「共感資本主義」「リーンスタートアップ」執筆中)。@宇都宮ー地方から全国、世界へを体現中。
mail メール maskin(at)metamix.com | ChatWork(Voice/Video) | 書籍情報・ 詳しいプロフィールはこちらTwitter @maskinFacebook
モバイルバージョンを終了