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2014年11月のオープンから2年半。秋葉原にハードウェア起業家達を集めることに成功した「DMM.make AKIBA」。
10億円近い設備投資。当初、IoTやMakersスタートアップが成長する確証が薄い中(参考「DMM.com会長 亀山氏 「ここがスタートなんです。10億赤字だけど、4-5年後に世界で価値を生み出したい」 【@maskin】」)
、将来の成功に向けて熱く活動する野心家達が集めることに成功。短期間で成果を出し続けた、数少ない「IoTスタートアップの巣」です。
この「DMM.make AKIBA」に新しい風が吹き始めています。
IoTスタートアップを加速
「DMM.make AKIBA」には、Vinclu(「Gatebox」誕生秘話、妄想が産んだバーチャル嫁ロボット30万円が5日間で200台も売れる理由)を筆頭とする大型資金調達などのニュースがいくつも出てきています。
しかし、ハードウェアは、アプリやウェブよりも格段に多くの障壁が横たわっているため、企業として成長するようになるには時間も資金もかかります。そうした大型資金調達など(シリーズA,シリーズBといったファイナンスフェーズ)を狙う前の段階、シードやアーリーとよばれる製品のプロトタイプを行っている段階での支援が不可欠です。
そこで、2016年12月からスタートしたのが「DMM.make AKIBA Open Challenge」という企画です。「先端系のプロダクトで、大きな成長を狙うシードからアーリーステージのIoTスタートアップに対し、今あるプロトタイプを元に、もう一歩先に進むお手伝いをしたいと思いスタートした企画」(DMM.make AKIBA エバンジェリスト 岡島康憲 氏)とのことです。
形式としては、選抜形式でIoTスタートアップ企業を採択し、技術や事業家ノウハウを持つDMM.makeおよびサポーター企業が3ヶ月間にわたりそのブラッシュアップをサポーとするというものです。
その第一弾となる「DMM.make AKIBA Open Challenge 1」が、2017年3月から6月にかけて実施され、2017年7月7日にデモDAYが開催されました。支援企業は「ニフティ IoTデザインセンター」・「オートデスクFUSION360」・「makuake」・「オリックス」の4社。採択企業は以下の11社でした(紹介文は運営元からの情報まま)。
迷子と転倒に素早く対処するスマート杖「コミュニケーションスティック」
高齢者の外出における「迷子」と「転倒」の 2 つの課題不測の事態の対応をサポートし、安心な外 出機会を提供するスマート IoT 杖です。高齢者にも使い易いシンプルかつ直感的なデザインにより、 介護者と常にコミュニケーションを取ることが可能です。James Dyson Award2016 国内最優秀賞受賞・国際 TOP20 受賞。
Communication Stick Project(代表:三枝友仁)
https://jamesdysonaward.org/ja/projects/communication-stick/
読む能力を拡張するスマートグラス「OTON GLASS(オトン・グラス)」
文字を読むことが困難なディスレクシア(読字障がい者)、視覚障がい者、海外渡航者を対象とした、 「読む行為」をサポートするスマートグラスです。視点と同じ位置にある文字をカメラで撮影、文 字認識技術でテキストデータに変換し、それを音声として読み上げることで、ユーザーは内容を理 解することができます。また翻訳機能を搭載し、海外渡航者のサポートツールとしても利用することができます。
株式会社 OTON GLASS(代表:島影圭佑)
http://otonglass.jp/
センサーで野菜不足を管理するベジケアサービス「Vege Plan(ベジプラン)」
食生活が不規則な社会人の体調にあわせ必要な野菜をスープで摂取できるオフィス向けベジタブル ケアサービスです。SHARP の AGEs(糖化)センサーと連携し個々の体調をアプリに記録、未病を察 知することが可能です。さらに記録された体調を参考にアプリから独自のスープメニューを選ぶこ とで、1 食の摂取目安とされる野菜をスープで摂取できます。現在、複数の大手企業の福利厚生と して先行導入が開始されています。
株式会社 AWCLE(代表:遠藤ちひろ)
http://www.awcle.co.jp
重低音を体感できるウェアラブルスピーカー「Hapbeat(ハップビート)」
いつも聞く音楽やゲーム、映画の音を体で感じ臨場感を味わえるウェアラブルスピーカーです。特 許出願中のコアレスモーターと糸による振動生成メカニズムを採用し、体全体に空気の振動を伝え ることで重低音を感じることができます。Bluetooth でスマートフォンと Hapbeat を接続し、本体 にイヤフォン/ヘッドフォンを差し込みあわせて装着することでライブハウスで感じるような音の 響きをポータブルに体験できます。
Hapbeat 合同会社(代表:山崎勇祐)
http://hapbeat.com
ウインクで撮影するカメラ「BLINCAM(ブリンカム)」
見たままの瞬間をウインクするだけで撮影できる小型ウェアラブルカメラです。意識的に強くおこ なったまばたきを感知する独自センサーを搭載しメガネに取り付けて利用することでスポーツや料 理などで手がはなせないときの目の前の様子、また子供と遊んでいるときの自然な表情をハンズフ リーで撮影が可能です。Bluetooth でスマホと連携し、すぐに撮影した写真を確認・共有できます。
株式会社 BLINCAM(代表:高瀬昇太)
https://www.blincam.co/
スマホを遠隔操作できるエプロン「SWIPE APRON(スワイプエプロン)」
料理中にスマホを触ると画面が汚れてしまうイライラを解消するスマートエプロンです。エプロン のポケットにタッチセンサーを搭載し、Bluetooth で連携したスマホのタッチ操作が可能です。画 面が汚れるのを気にすることなくレシピサイトや動画をみながら、キッチンでの作業ができます。
Generative Idea Flow(代表:土田哲哉)
http://swipeapron.info/
ピースをはめると目が光る「おばけパズル」
おばけの形になったピースを正しい位置にはめると目が光るスマートパズルです。おばけの目の部 分に搭載された LED が非接触給電によって点灯することで、小さい子供でも安心して遊ぶことがで きます。木工製で表裏の区別がつかず、似たようなカーブの連続で見た目以上に難易度が高く、子 供だけでなく大人にも驚きだけでなく様々な発想・コミュニケーションを生みだします。
おばけパズル(代表:井上幸人)
http://obakepuzzle.com/
ぼくらの、いいね!が見える服「-A-C-T-(アクト)」
抱き合う、肩を組む、ハイタッチするなどのアクションによって光るスマートコミュニケーション ウェアです。複数人のコミュニケーション行動をトリガーに、服の中に搭載した電子回路が接触し 光ります。触れたところによって光り方が変化し、ライブや音楽イベント、フェスなどで周囲と触 れ合うことをより加速させ場を盛り上げます。
Etw.Vonneguet(代表:designer Olga)
http://www.etw-vngt.com
ペン型オシロスコープ「OscilloPen(オシロペン)」
電気信号の波形を測定するペン型の電気信号波形観測装置(オシロスコープ)です。本体を Wi-Fi のアクセスポイントにしスマホと接続することで、測定した電気信号の電圧値をリアルタイムに送 信し、専用アプリで受信した測定値を波形として表示できます。従来のオシロスコープと比べ小型 でデータ取得を簡易に行えることで、電子回路を学ぶ学生や電子工作をする人が手軽に利用できます。
Azure Lab.(代表:リー・チンホイ)
https://gugen.jp/entry2016/2016-029
途上国未電化家庭に光をとどける「EGAO プロジェクト」
世界で 12 億人もの未電化状態の人々に、ソーラーホームシステム(SHS)による電気 を届けるプロジェクトです。携帯電話に続く大きな欲求が見込まれている TV 需要 をドライビングフォースに、分割払いできる技術 Pay-As-You-Go を導入し、エチオ ピアやバングラデシュにおいて大量普及を目指します。
(株)PEAR カーボンオフセット・イニシアティブ(代表:松尾 直樹)
http://egao.lighting
環境に優しく高機能な植物性プラスチック「バイオワークス」
ポリ乳酸(バイオプラスチック)から耐熱性、耐衝撃性など実使用物性要求を 最大限に引き出す 100%天然素材の添加剤開発プロジェクトです。添加剤をフ ィルム・シート・繊維・不織布・樹脂の素材と組み合わせることで、歯ブラシ、 カップ、服などの生活用品を、耐熱・耐衝撃・難燃かつ温暖化ガスを発生させ
ない素材で成形することができます。
バイオワークス株式会社(代表:今井 行弘)
http://bioworks.co.jp
以上
(これらのデモ&プレゼンはTechWaveのFacebookページでも一部動画でレポートしています)。
ご覧の通り、製品コンセプトはもちろん、技術面での優位性があるチームばかりが採択され、3ヶ月間で何らかの成長を遂げています。これはスタートアップ支援コミュニティとしての「DMM.make AKIBA」の力の表れであると共に、学生からベテランまでをも許容する懐の広さを表しています。実は、混在する今回の11チームは、学生から若年層はもちろん、大企業内の雄志が集まって課外活動として立ち上げたプロジェクト、ベテラン層まで、かつIoTやMakersというカテゴライズを乗り越えたプロジェクトで編成されているのです。
オープンイノベーションの新潮流
DMM.make AKIBAの立役者の一人でもある エバンジェリスト 岡島康憲 氏が「大手企業を中心としたサポーター企業に参画してもらいながら、Open Challengeは継続的なプロジェクトとして展開してゆきます」と説明する通り、デモDAYの会場は、ウェブやアプリのスタートアップ界の集まりとは違い、大企業の担当者らが積極的に連携しようとする雰囲気に包まれていました。
こういったオープンイノベーション(大企業とスタートアップの関係構築によるイノベーション創出)の流れは、「DMM.make AKIBA」全体を包み込んでおり、すでに大企業向けのIoT研修事業などが引く手あまたの状態で準備が進められています。
こうした大企業とIoTスタートアップの調和的発展の周辺で「DMM.make AKIBA」は次々と施策を打ち出す計画です。現在、&ホステル、VAIO社を新たなサポーター企業として加わった「Open challenge 2」が6月から8月まで実施されており、2017年9月に「Open Challenge 2」のデモDAYが開催される予定とのことです。また、VR関連など、モノ作りに直結しないプロダクトなども「いずれは、すべてがIoTに関わる」(岡島康憲 氏)として「OPEN! SHARE! JOIN!」の理念に乗っ取る形で幅広くプロジェクトを展開していく考えです。
【関連URL】
・DMM.make AKIBA Open Challenge
https://akiba.dmm-make.com/form/openchallenge/
・IoTプロトタイプのビジネス化に向けたブラッシュアップをサポートするプログラム「DMM.make AKIBA Open Challenge」2016年12月17日募集開始!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001709.000002581.html
戦後の日本を牽引したのは製造業であり、そこに多数の人材が残っており、技術イノベーションの多くはそこから生まれているのが現状。終身雇用が崩れ、人材流動化が始まっているとはいえ、やはりすべての業界業種に当てはまるわけではない。大手のリソースとスタートアップ的イノベーション創出プロセスとの最適な連携。それこそがTechWaveが5年前に提唱したことであり(カンファレンスプログラム公開、スタートアップx大企業「Penta Tech Meeting」 【増田@maskin】)、モノ作り大国という文脈の中で、いや、日本ならではの復興期待型スタートアップシーンを牽引する原動力となるだろう。そしてDMM.make AKIBAはその象徴ともいえるモデルに近づいているように思える。