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郵便・物流のバリューチェーン全体を変革するオープンイノベーションプログラム「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2018」の最終審査イベント「Demoday」が本日(2019年2月5日)に開催されました。
2018年7月に始まった本プログラムは、日本郵便とサムライインキュベートによって開催されており今回で二回目。応募70社の中から書類審査および面談審査を経て採択されたのは2社。クラウドでロボットを制御できるプラットフォームを開発する「Rapyuta Robitics」と量子コンピュータソフト開発技術を用い、輸送ネットワークの最適化を実現する「エー・スター・クォンタム」でした。
ロボットをオープンプラットフォームにする「Rapyuta Robitics」
Rapyuta Robitics 代表取締役CEO Gajan Mohanarajah氏はスリランカ出身。奨学金で日本の学校に就学後、インターネット上で動くロボットソリューションを開発する会社として創業します。
Rapyuta Robiticsが実現するのは、ロボットのオープンプラットフォーム。複雑で業界同士が分裂しているロボットの技術を統合マーケットプレースによって、国内外のハードウェア・ソフトウェアを簡単に組み合わせ、またかつロボット業界以外の知見や技術を円滑に組み込んだソリューションを開発できるようにするというもの。
当プログラムでは、日本郵便の区分局とよばれる人力に頼っている重要拠点の供給プロセスにRapyuta Robiticsをテスト導入し、通常6か月かかる導入プロセスを45日で達成。ロボットなどの導入をすることで人員の効率を4倍にまで上げることが可能になることを証明しました。
人間では導き出せない物流経路を発見「エー・スター・クォンタム」
エー・スター・クォンタム社は2018年7月に創業したばかりの量子コンピューターソフトウェア開発企業。
「量子コンピュータの世界では日本はトップランナーの一員。その技術を使って日本郵便の輸送を効率かしたい」とエー・スター・クォンタム 取締役兼CMO 大浦清 氏は話します。
今回のプログラムで行われた実証実験では埼玉県東部の30局を走る、夕方夜間の52便をどう削減するかという挑戦でした。既存のデータに依存するのではなく、積載荷量・トラックの数・拠点の数・荷物の数といったパラメーターから推論するという方法です。
実際の組み合わせ数は膨大で「既存のコンピュータでは1000年ほどかかる」(大浦氏)とされているものの、カナダの量子コンピューターD-Waveと富士通の製品を使った演算ではなんと1秒で計算が完了。
結果として便数は8%削減、積載率を12%向上することができました。これを全国規模で適用することで、最終的には100億円コストダウンに直結する可能性があるとのことでした。
この取り組みにおけるもう一つの発見は「人間では気がつかなかった経路を見つけられた点」です。148年に積み重ねられてきた人間の勘だけでは見つけられない経路を技術で発見できたのです。
日本の郵便・物流バリューチェーンを変革するのは誰か
最終選考は2社のみではありますが、本プログラムの審査によって最優秀賞が発表されました。
受賞したのは「Rapyuta Robitics」でした。
ボードを持っているのがRapyuta Robitics 代表取締役CEO Gajan Mohanarajah氏
本プログラムの結果発表にあたり日本郵便 代表取締役社長兼執行役員社長 横山邦男氏は「近年eコマースの物流が拡大するなど事業環境は激変しており、これまでの自前主義の延長線上の発想はだめだ」と自らを戒め、全国2万4000の郵便局の物流バリューチェーンをオープンプラットフォームとしてスタートアップとの連携で価値を高める取り組みに期待を述べました。
日本郵便は全国62の配送拠点を一日当たり3000便の輸送網(自動車・JRコンテナ・船舶・飛行機)により、郵便からゆうパックまでを処理しています。これからさらに変容する市場環境に対しITはどこまで貢献するのでしょうか。その未来像を描く上で重要なイベントといえるのではないでしょうか。
【関連URL】
・[公式] POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM | 日本郵便
超蛇足:僕はこう思ったッス
TechWaveが日本発のオープンイノベーションイベントを開催したのが2012年。熱量は依然として変わらず、全国的な潮流となるのはそれから数年というスピード感だった。しかしながら、オープンイノベーションとは名ばかりで、結果として受託先探しだったり、社員教育の一環にすぎなかったりというケースも散見されている状態。その点日本郵便とサムライインキュベートの取り組みは、関係者一人一人の熱量や意欲を強く感じることができる。横山社長は「今後も継続したい」と述べていたが、僕の楽しみだ。