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“スマホを眺めながら満員電車でガタゴト揺られ決められた時間にオフィスにくる。終日会議漬け。本当にやるべきかどうかわからない面倒な仕事も多い。上司や部下とのやりとりに膨大な時間をかける。同僚や上司より先に退社できないからダラダラ・・・それが組織というもの、それが会社というもの・・・”
よくある日本の会社の光景ですが、そのあり方に疑問に感じることがあります。やるべきことより会社のルールが優先される。全員で集まらないと伝わらない、イノベーションは毎朝集まって起こるもの・・・という固定観念が人々を縛り付けることもあります。一箇所に集まるという制限が、会社本来の経済活動を停滞させているように思うことも多々あるのは事実だと思うんです。
それに対抗するのが「リモートワーク」の流れです。自宅やコワーキングスペースなど、オフィス以外で働くというものです。 通勤の無駄を排除し生産性を上げるということで、アメリカでは2005年頃から浸透し大手での採用も進みました。日本でも2010年くらいから注目されています。
今、リモートワークは主流になるかどうかの帰路に立たされています。
リモートワークにより、通勤がなくなり、ストレスが減ることでより人間らしい生活ができる。そう述べるのは米37Signals(現在)の創業者ジェイソン・フリード氏です。著書「REMOTE – Office Not Required」(日本語版:強いチームはオフィスを捨てる)では、オフィス勤務のデメリット、リモートワークのメリットを多数あげています。
<<オフィス勤務は・・・>>
・ 会社は 邪魔に満ちている
・ 会社には集中して仕事をする場所がない
・ 通勤は人生の無駄遣いで不健康
<<リモートワークは・・・>>
・ 9時〜5時から開放
・ 都会にいなくていい
・ 場所に依存せず採用できる
リモートワークにシフトすることで、無駄に豪華なオフィスを借りることをなくしたり、成果を生むことができるという主張です。
しかし、自宅での仕事を率先して導入してきた米ヤフーは2013年2月、「生産性が上がらない」からとリモートワークを禁止してオフィスに通勤する社内向け文書がリークされ話題となりました。また、2017年に入ってから米IBMも同じような社内向け通達を出したと話題になっています。
実際のところ、リモートワーク採用といって全員が自宅で仕事ができるかというとそうではありません。「強いチームはオフィスを捨てる」を書いたジェイソン・フリード氏も「リモートワークは魔法じゃない」とはっきり言い切っています。
例えば、自宅に仕事場を作れる人は(住宅が狭い日本では特に)多くはありません。家の中で仕事をすると、ゆっくり休みたい家族からクレームもくるでしょう。近所の目が気になることも増えるはずです。さらには逆に運動不足となり、人と会い話す機会がへったり、ONとOFFの切り替えが難しくなったりします。
実際にやってみるとわかると思いますが、通勤問題は別として、むしろ自由に使える素敵な仕事場がどれだけありがたいかということになります。
例えば、こちらは福岡市でビルを一棟借り切ったヌーラボ社のオフィスの屋上です。実は、37signalsと同じリモートワーク用のプロダクトを展開している会社です。夏は外で仕事をすることもあるなど自由なワークスタイルを採用しています。
テレコミュニケーションを中心したリモートワークのスキルが必要
では、リモートワークという言葉の周辺で期待されていることを実現するには何が必要なのでしょうか?
特に日本で大切なのは「テレコミュニケーション」と断言できます。アメリカは国土が広いこともあり古くから電話を使った会議が浸透していました。チームが離れていたところにいても必ずテレカンファレンス(電話やビデオなど主に遠隔地でリモートで実施する会議)で議決を行います。多数の国と地域からアメリカにきているわけですから、その多様性の中でチームを機能させるための工夫とも捉えることができます。米アマゾンが出したテレカンサービス(「Amazon Chime ストレスフリーの会議サービスをスタート @maskin」
)はまさに、この文脈から誕生したものです。
日本では、特定の関係者が密室で議決してしまうことが未だに平然と行われています。組織の運営がブラックボックスになることも目立ち、チームマネジメントができる管理職も多くはありません。対外的な仕事も、ロジカルに、かつフェアに成果を出すために努力するよりも「まず、会いましょう」から始まるようなことが未だにあるようです。それを打破するのがテレカンの技術だと筆者は考えています。
テレカンは、日本で普及し始めておよそ15年ほどです。2002年頃に流行したSARSの影響で大企業が業務用のテレカン機材を導入したり、Skypeといったツールが普及したことを受けて徐々に浸透しました。特に、この5年ほどは、ITを業界では打ち合わせはもちろん、取材もテレカン用ツールで行えることが増えてきました。主にスマートフォンなどのハイスペックなデバイスの普及が大きいと思いますが、それにあわせてリモートワークのスキルも軒並み向上しているように感じます。
<<リモートワークのスキルとは>>
・ 完結にわかりやすく伝える
・ チームで情報を共有しやすくする
・ 自分の裁量で意思決定をする
重要なのは上司がいらなくなる「新しい働き方」
「強いチームはオフィスを捨てる」では、さまざまなサービスや技術を使いながら、チームで働くというプロセスを実に細かく分解して改善を重ねることを提唱しています。リモートワークのスキルを身に着けたチームであれば、上司が仕事をやっているか監視するような抑圧的なプロセスがむしろ逆効果になることを理解できるはずです。むしろ、情報共有が基本になるため「上司」そのものが不要になるとさえいいます。
米Yahoo!や米IBMのリモートワーク禁止は、こうした「新しい働き方」の定義が追いついてなかった故の決断と考えられるというわけです。
日本で労働改革的な取り組みとしてリモートワークを実践する会社が増えていますが、おそらく多くのところが第二のYahoo!、IBMになりつつあると思います。クラウド上のタイムカードを押して、逐一上司に報告し、定時に仕事をやめる。「新しい働き方」の定義をし忘れたまま、リモートワークを取り込んだとしても、いいところはごく一部だけ。これを回避するには会社全体、ひいては社会全体が上司がいらない働き方を支持する必要があるのです。
【関連URL】
・強いチームはオフィスを捨てる
http://amzn.to/2lxKjR3
・[書評] 「小さなチーム、大きな仕事」 — 37シグナルズ成功の法則 (原題:ReWork)【増田(maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51430235.html
覚えている人は少ないと思うが2000年ごろインプレスのインターネットマガジンという雑誌で集中的にテレカンファレンスの特集を手がけていた。テレカンを躍起になって普及させようとしていたのだ。当時、僕はアメリカから帰国直後で、かつ家族の看病と育児に追われ地方に移住せざるを得なかったため、意地でもリモートワークを突き通すしかない状況だったからだ。それから17年、本当に夢のような状況になった。今も栃木県からテレカンで取材して記事を書いたり事業を開発したりしている。リモートワークは帰路に立たされていると書いたが、実はもう止められない段階にあると思う。リモートで戦っている人はいずれ成長し、そうでない企業はやれることが制限されてくると思っている。