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[読了時間: 10分]
TechWave編集チョの増田です。年の瀬でご多忙中に失礼します。
この二十数年、スタートアップの立ち上がりシーンを見続けてきている中で、今年は一つの節目になったように思います。
TechWaveが立ち上がった2010年1月頃ではまだごく一部の人しかスタートアップに注目していない段階で、TechWaveのスタートアップ支援プログラムVANGUARDの企画が立ち上がった2011年では、シードアクセラレーターブームが起こりつつあるとはいえ、まだまだ北米をコピーしているだけの状態。
ところが2013年は、一気に投資家側の動きが強まりました。ご存知のようにIT系企業の事業投資やVCではなく、テレビ局や通信会社などの投資へ取り込みが活性化、さらに来年2014年にはさらに巨大なファンドがいくつも立ち上がりそうな様相です。
今まで、スタートアップというといわゆるシード(立ち上げ期)やシリーズA(次の成長段階)投資が主体で、次のフェーズ(シリーズB以降のなどとよろ大きな額に)への投資家層も厚くなるということになります。つまり一言でいえば、短期間で上場を目ざすための環境がかなり整理されてきたということです。
こうした環境の変化に、日本中が関心を寄せていると思います。国や政府、地方自治体もスタートアップ支援に動き出しました。
正直いって、急成長分野における有望スタートアップが量産されるような状態にはまだなっていないと思いますが、これからチャレンジをしようという人にとって、追い風となるのは間違いないでしょう。
リスクについて
以前「生き残るスタートアップ、消えてしまうスタートアップについての長めの雑感 【増田(@maskin)真樹】」という記事でも遠まわしに説明したのですが、投資を受けて短期成長を狙うというケースのリスクは(起業家も投資家も支援者もオーディエンスも)安易にとらえるべきではないと感じています。
そもそも、どんな事業だって計画通りにいくわけもなく、予想しなかった事案のオンパレードの中で、何とか自分(たち)だけの強みをしっかり守りながら突き抜けていくのが経営であり、それを短期間で成功させるというのは、どれほど濃密な体験かということを頭においてもらえればと思うんです。
この2~3年、日本のスタートアップシーンで頻繁に発生している話ですが、「お金も出すし、全力支援するよ」といっているのに、1~2年で金銭的な数値が見えていなければ「成長してないし」と全てをひっくりかえし、株式ごとひっぺがされるケースもあります。プロダクトを完成させた、少なくともその道筋を創造した、そのがんばりも努力もゼロ。結局、最終的にはお金につながらない、結果が出ないとなれば、ドライ(いやそれ以上)な判断が下されることがあります。
ある種、お金がからむことだから仕方ないかと思う面もありますが、夢を追い、新しい価値を創造した人のポテンシャルって一体なんだったのか、スタートアップに期待するってどういうことなのか、そもそも投資って何なのか、そんなことを考えさせられます。
また、よく出資以上のリスクはないからといいますが、それも微妙です。「出資といっているのに」失敗したらマイナス分の返済を求められ、うまくいかなかったら、最悪の条件で追い出される。行動が制限され、再起も困難になる人も大勢います。成功すればニコニコ、失敗すれば鬼みたいなあまりの豹変ぶりにビックリすることもあります。
なかなかこういう話が外に出ないのは当人が言及できないからです。お金がからむ話だし、そして善悪をつけるのもむずかしい。また、ニュースになるのを恐れているのか、投資をした事実すら公にしないケースも増加している状況です。
もちろん全ての投資家や投資機関がそういうわけではありません。そして同じ組織でも、投資担当者一人一人でもスタンスがかなり違います。つまり、スタートアップと投資の関係は、起業家および経営者と投資家との関係でもあります。「俺たちは成長するから投資してくれ」とVC(Venture Capital)に乗り込んでも、投資担当者とのウマやスタンスがあわなければ成立しないでしょう。その逆もありますし、タイミングもあります。
投資を受けると「おめでとう」といってしまいたくなりますが、(もちろん評価が高ければおめでとうです) 出資を受けた側は、それがゴールでは決してなく、スタートです。だから、社会的イノベーターを支援するスタンスのTechWaveでは基本的に出資そのものにフォーカスした記事は書かない傾向にあります。その出資では、何が評価され、そのお金で何をするかということを見た上で、その後をウォッチし続ける必要があると考えているからです。
(どうか華ばなしい投資劇のその後をウォッチしてみてください。世界ではメディアなどが投資にからむなど悪質なケースもあります)。
大切なことは、冒頭で紹介したこの記事でも伝えようとしていますが、成長する力がない状態での投資にはそれなりのリスクがあるということを理解することだと思います。リスクというのは言葉だけでなく、「本当にヤバイ!」というレベルのリスクです。
北米シリコンバレーのように金融ビッグバンからの歴史があり投資家も起業家も支援者も豊富な地域と比較して、日本はまだ未熟という言い方もできるのですが、シリコンバレーのほうが安心して成長できるかというと、また別な重荷とリスクがあります。
じゃあ、逆にリスクないからやってみろ、となったら恐らく誰だって無責任になると思いますから、適度なリスクと夢の大きさとのかけ算、そして成長する意欲と力とチームが揃った時、絶妙の投資の機会とのスパイラルで成長していくのが理想のように感じています。
すべては必然。
「事業計画ではなくチーム」を見るという投資家もいますが、結局、あらゆるものを突破する力と、誰よりも早く多くのことをこなすことで、こういった多様性のなかでチャンスをつかむ力に投資という後押しがからみ、そのスパイラルがチームを急成長させるように思います。
まとめ
- 投資についてもっと知ったほうがいい
- 残念なケースが日本で一杯出てきている
- 成長できる力とスピードとチームが必然的に受ける投資を模索しよう
スタートアップの萌芽について
この2年ほど、TechWaveに寄せられるスタートアップ関連の情報提供が何倍にも増加しました。増加ペースはかなりのものだと思います。
特徴としては、ベテラン勢の起業やスピンアウトが増加したことです。大企業などで実績を積み、その経験やノウハウを活用し事業を立ち上げ、かなりのスピード間でユーザーを獲得し、黒字化までもっていくパターンの企業が増加しました。
また、ファンドを運営する組織等が、投資先を探すために開催する目的の事業プランコンテストなども大量に開催されるようになり、続々とスタートアップが生まれる環境が良くなっていっているように見えます。
が、3年後、5年後、10年後を描がけるビジョナリーが誕生しているかというと、まだまだと感じています。
つまり、投資を受け成長する前提のスタートアップとなると、それなりの利益率と市場の大きさを獲得する必要があります。ところが、日本は高齢少子化で国内経済の成長はまったく無い状況。企業として急成長するには、既存の市場を塗り替えるか、世界で戦うしかないわけです。
ところが、大半がシリコンバレーの二番煎じかコピーなんだけど日本なりに改善してあるタイプ。マーケティング的な世界視座を感じることがあまりありません。これは海外で起業すればいい、という話もでありません。
ここで問いたいのは以下の通り。
まとめ
- 日本を軸でいいけど、世界視座を持っているか?
- 日本そして世界のマーケットを数字や肌感覚として知っているか
- シェアを獲得する具体的なプロセスを描けているか?
TechWaveが2011年6月のLINE登場に率先してフォーカスしたのは、上の3つが明確で、それが開発プロセスにまで落し込められていたからです。
とはいえ、頭で理解してもすぐにはできっこない。では、どうするか?
そんな中、昨日、世界的音響機器メーカー米Monsterと提携したファウディオの宮崎社長から大きなヒントを得ることができました。彼は「日本人は世界の誰もが気がつかないような細い部分まで見ることができる」といいます。
その資質を活用するのはセクショナリズムにおちいらず、ソフトからハード、特定分野の知識をトータルで活用できるような組織が、一つのことに没入するように創造性を発揮すれば世界に通用するような完成度になる。いわゆるプロダクトアウト型の発想だけど、それをもって世界に出れば、必ず良い反応が得られるといいいます。
確かに、Made In Japanの製品力は高いのかもしれません。主戦場が変わっただけのことで。
今、私達は色々な意味で復興の時代にいるのだと思います。その中で、みかん箱に立ってでっかい夢をかかげることは必然であり、とても重要なことだと思います。そんな立ち上げ人が本当に大きく成長する時、そのチャンスはほんの一瞬しかありません。それを逃がさないために資金や支援者が必要であり、その層が厚みを増しているのが今ということだと思います。
TechWaveも現在、一人で復興するスタートアップです。でっかい夢を、より多くのアントレプレナーや支援者と実現していきたいと思います。
【関連URL】
・生き残るスタートアップ、消えてしまうスタートアップについての長めの雑感 【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51657643.html
日米で出資を受け、上場の鐘をならすのを見てきた経験の中で、説明が不十分だったり、知識不足の部分もあるとは思うのだけど、自分が知りうる範囲で思っていることを延べさせて頂いた。なぜ、このタイミングかというと、ちょうど今、開催しているウミガメウィークの中で、世界とつながり活躍している人達の声をきき感化されたからに過ぎない。
僕自身もそうだけど、世界の人とつながることは誰にでもできることだし、今、そうすることがとても重要だと思っている。大切なのは、日本と海外を分断しないこと。日本とアメリカ、日本とシンガポール、国や文化、価値観、言語を超越して人と人とは連携できるし(加藤順彦さんの映画「恋するミナミ」は、国と言語と文化をまたがるラブストーリーだったりする)、そういう世界視座をもった人が増えることが日本のスタートアップシーンを化けさせるエネルギーになると思う。
1990年代ソフト/ハード開発&マーケティング → 海外技術&製品の発掘 & ローカライズ → 週刊アスキーなど主要なIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ブログCMSやSNSのサービス立ち上げに関与。ネットエイジ等のベンチャーや大企業内のスタートアップなど多数のプロジェクトに関与。オンラインメディアとリアルイベントや事業と連携させる手法で、イノベーターを現場目線で支援するTechWaveをリボーン中 (詳しいプロフィールはこちら)