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Web Summitに向け日本が動いた
編集チョのマスキンです。ITスタートアップの胎動を感じるのに最適なイベント「Web Summit」が遂に日本でも報じられるようになりました。日本人参加者はまだまだ少ないものの、今回はJ-startupとして日本ブースも多数出展。その流れを受けて、すでに多くの媒体やブログでレポート記事が公開されています。すべての人が語るようにWeb Summitには他のイベントにはない熱気があります。もはやWeb Summitのベテランの域に達しつつあるTechWaveでは、さらにこのイベントの魅力を掘り下げるべく、なるべく多くの記事を出したいと思います(寄稿も募集します)。というわけで、今回はレポーターの満木さんの総括記事から。
Web Summitを象徴する巨大なメインホール
Web Summit 2018 からみるネットの未来
テクノロジー業界のダボス会議と評されるWeb Summitが今年も開幕しました。8年目となる今回は参加者もさらに増え、世界から7万人が集結。勢いは止まりません。今年は、日本からもJETROや率いるスタートアップ支援の枠組みであるJ-Startupが出展し、そのエリア内部にいくつかの日本企業が出展を果たしています。来年以降、イベント自体の拡大も計画されており、日本側のこの流れは続くと考えられます。
さて、今回のWeb Summitの キーワードはセキュリティとプライバシー、そしてGDPR です。ネット界の大きな話題となったGDPRについては、EUで発効されただけあって、ステージで繰り広げられるさまざまなカンファレンスでしばしば話題になっていました。中でも初日のオープニングで壇上に立った、ワールドワイドウェブ(www)の発明者ティム・バーナーズ=リー氏が「contract for web」として語ったウェブが人類にどう役に立つか、それに伴う原則を述べたスピーチは会場はもとより世界中で話題となり、あとに続くGoogleやMicrosoftのプレジデントがその話題を取り入れたプレゼンテーションを行う一幕もありました。
ITの浸透に従い、利用者や事業者は新たな認識を持ち原則を見直す必要があるという発想。プライバシーやセキュリティ分野で造形の深い Microsoftのプレジデント 兼 最高法務責任者 ブラッド・スミス氏は、ウクライナや英国でのサイバーアタックにより現実世界に与えた影響を振り返り、新たに始まるネットの未来について改めて警鐘を鳴らしました。
「2017年は警鐘の年だった。多くのサイバーアタックがビジネスや政府に多大なダメージを及ぼした。サイバーアタックは、生身の人間への直接の害でないと思われがちだがそうではない。病院のシステムがハッキングされ手術ができなくなってしまうなど、人の命に関わるサイバーアタック。政府、ビジネス、全てを麻痺させるという脅威。全てがネットに繋がったこの世界において、サイバーアタックは深刻な問題であり、政府、企業、個人が一丸となって戦わなければいけない」( Microsoftのプレジデント 兼 最高法務責任者 ブラッド・スミス氏)。
自動車メーカー以外のナショナルブランドの存在感
AWS、Google、IBM、Microsoftなど米国勢も軒並み出展。GDPRにより米国からの進出は懸念されると思いきや、かなりの規模です。彼らはWeb Summitの米国オフィスとやりとりしているそうで、各企業がウェブサミットを重要視していることが伝わってきます。
またこれまでのWeb Summitは、マルセデスベンツやBMWなどの自動車ブランドの出展や登壇が目立っていましたが、パートナー(協賛)として出展したのはトミーヒルフィガー・IKEA・ロレアルなどの企業で存在感が増していました。エージェンシーもR/GAなどのパートナーをはじめ、Dentsu Aegis、Greyなどがこぞって登壇。ビジネススクールの出展など、様々な分野から参加しているなどWeb Summitの広がりを感じさせられました。
以下、Web Summitの主なパートナー企業を列挙します。
パートナー企業一部紹介
AWS :米国 / パートナーワークショップ、出展、メンターアワー
Accenture :アイルランド/ 出展
Ascent Robotics :日本 / 出展
BMW :ドイツ / 出展
Booking.com : オランダ/ Woman in Techパートナー
Brightline Interactive : 米国/スピーカーラウンジ&メディアラウンジパートナー
ConsenSys: 英国/ 出展
Dell Tehnologies :米国/出展
DHL Express:ポルトガル / 出展
Domo:米国/ 出展
eToro:イスラエル/出展
EDP:ポルトガル/出展
Google: 米国/出展
IBM:米国/出展
IKEA:スウェーデン/パートナー
Kaspersky Lab: ロシア/出展
KMPG:ポルトガル/出展
L’Oreal:ポルトガル/パートナー
McKinsey & Company : 米国
Mercedes-Benz: ドイツ/出展
Microsoft: 米国/出展
PVH: 米国/出展
BOSCH:ドイツ/出展
Samsung:韓国/投資家ラウンジパートナー
SAP:ドイツ/出展
SendGrid:米国/出展
Tapad:米国/出展
Xerox:米国/パートナー
政府関連の出展
Web Summitは、もともとがポルトガル政府が支援していることもあり、各国からのブース展開も盛んです。今回の最大のトピックは日本からも政府主導のベンチャープロジェクトJ-Startupによって日本の存在を訴求できた点です。なにしろ、これまで日本からの参加者はほとんどいない状況でしたから、非常に大きな成果と言えると思います。
その他の参加国は、英国、、ブタペスト、フランス(BUSINESS FRANCE, FrenchTech)、ドバイ、ジョージア、ギリシャ、欧州委員会、ドイツ、カナダ、オランダ、ポルトガル、韓国(KOTRA)、カタール、中国、スウェーデンなど
スタートアップはシニア層もじわじわ増加
Web Summitは「スタートアップの祭典」という表現がふさわしい、起業家や投資家などにとって最適なイベントと言えます。とにかく起業家関連のブースやイベントが大量に開催されています。
この数年のWeb Summitでは、これまで若年層を中心したスタートアップ勢に加え、シニア層の起業家が増加しています。大手エージェンシー出身者が社内でできなかったプロジェクトをやるために起業したり、大手企業のインフラ担当者が倉庫や物流のソリューションサービスのスタートアップを起業するなど。中には、大手企業に勤めている際、スタートアップがよくピッチしにきていて、そこからヒントを得て起業したという人も。
私が会場で話を聞いた投資家によると、シニア層のスタートアップは大手企業に強いコネクションがあったり、ビジネス経験が豊富な傾向があったりするので、安心して投資できるというメリットもあるそうです。
女性比率はほぼ5:5
Web Summitでは、数年前からテック業界の女性の参加を促すべく、Woman in Techという女性参画推進プログラムを行っています。
会場内にはこのプログラム専用のラウンジ(この数年Booking.comがスポンサーしています)があり、ここでは登壇している女性起業家や投資家、企業役員など普段は会えないような人とメンターミーティングを設定することも可能になっています。なお、公表値によると2018年のWeb Summitの参加者7万人のうち、女性は3万4000人だったそうです。
毎年参加している私自身も女性が増えていることを体感していますし、世界的に見てテックイベントでここまで女性が多いのも稀有だと思います。
(了)
【関連URL】
・[公式] Web Summit | Lisbon | Where the tech world meets
蛇足: 特派員より
昨年から環境問題やセキュリティに関する話題が増えましたが、今年になってさらに注目されていました。サイバーアタックやヘイトスピーチなど、オンラインで起こった事件が現実世界に影響を及ぼすということを認識することの重要性を訴えていました。来年は人口の半分がオンラインユーザーになる中で、やはりネットのモラルのある使い方を政府や有力企業は伝えていかないといけないという動きが強まっていました。グーグルやマイクロソフトも自社の位置をただのIT企業と位置付けるのではなく、社会貢献できるIT企業でもあるという姿勢を感じました。AI、自動運転については、着実に進歩はしているもののビッグニュースはなし。全体を通して、これまであまりテクノロジーを重要視していなかった、もしくは様子をうかがっていた業界や参加者もウェブサミットの良さに気づき始めたかな、という印象。トミーヒルフィガーやIKEAなど、テストっぽく出展やパートナーをしていた印象だが、来年以降もっとこういう企業が増えるのではと予測。