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Yahoo!Japanがオンラインの広告マーケットプレイスを4月1日からスタートさせると発表した。企業の株式を売買するのが証券取引所なら、広告マーケットプレイスはいわば広告取引所のようなもの。ネット上の広告枠をリアルタイムのオークションのような形で売買する仕組みのことだ。
電通子会社のサイバー・コミュニケーションズ(CCI)も広告マーケットプレイスに力を入れている。オンライン取引所は幾つも要らない。マス広告最大手の電通とネット上で広告会社としても力を持つYahoo!とのシェア争いは、今後どう展開するのだろうか。
Yahoo!の発表文によると、米国Yahoo!が買収した広告マーケットプレイス大手Right Mediaが運営するRight Media Exchangeの仕組みを導入。Yahoo!Japanが持つ広告配信ネットワークの広告枠の取り扱いをオープン化する。
Yahoo!Japanの広告ネットワークは、日本最大のオンラインメディアであるYahoo!の広告枠に加え、現在70のパートナーサイトの広告枠を束ねて、広告主に販売している。小規模サイトの広告枠を巨大なYahoo!の広告枠と束ねることで、広告主にとっては取り扱いがシンプルになる一方で、小規模サイト側にとっては大手広告主の広告を受けることができるというメリットがある。
これをオークションのようにオープンにし、マッチングを自動化することで、あらゆる規模のサイトの広告枠に対し、あらゆる規模の広告主が入札できるようになる。ただ実際には大手サイトと大手広告主間はこれまで通り直接交渉が行われ、広告マーケットプレイスは小規模なサイトと小規模な広告主の自動マッチングが中心になると思われる。
米Googleは、大手広告マーケットプレイスのDoubleClickを買収しており、米国ではRight Mediaと競合している。わたしが以前DoubleClickの幹部をインタビューした際には、日本進出を準備していると語っていた。日本のオンライン広告業界も、広告マーケットプレイスの時代になるのだろうか。【関連記事:DoubleClick幹部のインタビューの抄訳と動画】
2007年10月に株式会社オプトの当時社長だった海老根智仁さんと、広告マーケットプレイスについて語り合ったことがある。音声ファイルと動画ファイルが残っていると思うので、興味のある方はどうぞ。
海老根さんは、当時次のように語っていた。
広告マーケットプレースなどの仕組みに今後関心があるほか、PCや、ケータイ以外のデバイスで、どうつながっていくかにも機器とどうつないでいくかに関心がある。
5年後に広告主は、「メディアは多過ぎ、消費者の行動は読めない」と嘆いているであろうから、テクノロジーでデバイス機器をつなぎ消費者の行動を把握する必要が出てくる。
究極は、広告マーケットプレースがPOS、EOS(在庫、発注システム)とも絡んでくるかも。
究極の形として、広告マーケットプレイスに店頭のPOSシステムや在庫・発注システムなども絡んで、「この商品は在庫が多く残っていて売れ行きも悪いので、広告を多めに出す」といったことが自動的にできるようになるのではないか、と当時から考えていたわけだ。
そして
グーグル、ヤフー、マイクロソフトのようなテクノロジシー企業が、今後日本でも広告の世界に入ってくる可能性はある。
テクノロジー企業が日本でも広告業界で力を持つようになる可能性を見通していた。ただ、やはり日本と米国では広告業界の風土や歴史的経緯が違うので、何もかも米国のようになるとは考えていなかったようだ。
「近い将来に日本でも広告マーケットプレイスが主流になるのではないか」というわたしの質問に対しては、否定的な見解を示していた。ただ完全に否定するわけではなく、幾つかの課題がクリアされるのであればその可能性は否定できない、というようなニュアンスだった。
あらゆるデバイスをつなぐマーケットプレースができれば、「それでも流行んないって言うんですか」と聞かれれば「流行るかもしれませんね」と言ってしまうかもしれない。。
でも幾つかの克服すべき課題がある。1つは、日本の場合、広告主側が、広告代理店やわれわれのような会社を、プロモーションやコミュニケーションを任せている自分たちの会社の一員のようにとらえるという認識が歴史的に強い。
2つ目は、網羅的に扱える広告マーケットプレースが出るのだろうか、という疑問。網羅的に扱うマーケットプレースがなければ、このメディアはこのマーケットプレースで買うというようになれば余計に手間がかかる。統合的に広告効果を扱うことができない。
3つ目は、そもそも米国では商店主などもインターネットで受発注することに慣れているが、日本ではまだまだである。
これらの課題がクリアされれば、マーケットプレースは流行る可能性はあると思う。
時間の問題かも知れない。どれくらい時間がかかるかは分からない。
2007年12月に行ったCCIの長澤秀行さんのインタビューの動画と音声も残っている。動画はダイジェスト版。全編を知りたい方は音声版をどうぞ。