ソーシャル広告はミクシィが完成させFacebookが普及させる【湯川】

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 ソーシャルメディア時代の広告やマーケティングはどのようなものになるのだろうか。それは親しい友人を通じて流れてくる情報をベースに商品やサービスの購買意欲が起るというような形の広告やマーケティングになる。

 こういった新しい広告やマーケティングを形容する言葉で、広く一般的に受け入れられているものはまだ存在しない。一部でこうした広告やマーケティング手法を「ソーシャル広告」「ソーシャルアド」と呼ぶ動きもあるが、こうした表現が定着するのかどうかはまだ分からない。仕方がないので、とりあえず「ソーシャル広告」という言葉を使って、話を前に進めたい。

 ソーシャル広告は、ミクシィが手がけたキットカットのキャンペーンやクリスマスキャンペーンにその原型を見ることができる。当たったクーポンを友人にも「おすそ分けしたい」という気持ちが、商品のメッセージを広く伝播させる結果になるわけだ。親しい友人を助けたい、支援したい、知人に見栄を張りたい、よく思われたい・・・。こうした人間関係の中に生じる感情をベースに情報が流れ、購買意欲が起る。こうした仕組みこそがソーシャル広告になるわけだ。(関連記事:mixiクリスマスアプリに見るバナーに頼らないソーシャル広告の形【湯川】 : TechWave2011年のソーシャルメディアは「リアル」「クローズド」がカギ【湯川】 : TechWaveネット上の価格競争に巻き込まれない「リアル」「クローズド」なウェブ【湯川】 : TechWave

 こうしたソーシャル広告が成立するようなオンラインの人間関係の空間がまだ十分に整備されていない。なのでまだまだソーシャル広告は未発達のマーケティング手法だ。今日のソーシャルメディアマーケティングの主流が「傾聴」、つまり消費者の声に耳を傾け商品の改良に努力するという領域を出ないのはこのためだ。しかしいずれ企業側の情報発信がリアルな人間関係を通じてより効率的に伝播する時代がくるのだと思う。

 その仕組みを世界で最初に完成させるのがミクシィになるのではないかと思っている。そしてそれを真似る、真似ないは別にして、同様の仕組みを世界的に普及させるようになるのがFacebookだと思う。


 それは2社をめぐるそれぞれの環境から推測してもそういう結論にならざるを得ないし、実際にわたしが知り得る情報を総合してもそういう結論になりそうな状況だ。

 2社をめぐるそれぞれの環境の中で、最も注目すべきことは、単純なことだが株式を公開しているかどうかということだ。ミクシィは公開企業であり、Facebookは未公開企業である。ゆえにミクシィは、ソーシャルメディア時代の新しいマネタイズ手法の確立に関して、現時点ではFacebook以上に株式市場からプレッシャーを受ける立場にある。単純に考えてもFacebookよりもミクシィのほうがソーシャル広告を先に手がける可能性が高い。

 実はこの市場からのプレッシャーは大きな影響を両社に与えている。FacebookのCEOのMark Zuckerberg氏のインタビュー記事やFacebookに関する本を読んだり、ミクシィの幹部と長時間に渡った議論した結果思うのは、Facebookもミクシィも同じ未来を見ているということだ。考え方はほとんど同じである。しかしそれでも直近の戦術に関しては、両社のスタンスは微妙に異なる。

 例えば、ミクシィは「居心地のいい空間」を構築し、リアルに仲のいい友人たちの交流の場にしようとしている。一方でFacebookは、本音を話せない居心地の悪い空間になっても実名にこだわっている。これはミクシィがソーシャル広告の確立を急いでいるからだ。ソーシャル広告は、リアルに仲のいい友人の間でこそ成功する確率が高くなる。どこのだれか分からないユーザー同士で盛り上がっている2ちゃんねるのような空間で、当たったクーポンをおすそ分けしたいという感情は起こらない。ソーシャル広告が成立しやすいように、ミクシィはFacebook以上にリアルに仲のいい友人の空間の構築にこだわるわけだ。

 Facebookがソーシャル広告の可能性に気づいていないわけではない。ただマネタイズ手法の確立を急ぐ前に、すべきことがあると考えているようだ。

(関連記事:Facebookの収益源は仮想通貨に、将来の広告配信も否定せず=Zuckerberg氏【湯川】 : TechWave

 Facebookユーザーが友人を引き連れてくることを期待しFacebookとデータ連携するサイトが米国で増えているが、今後こうした連携サイト上でのユーザーの行動履歴などを利用するなどの方法で、これまでにないような効果的な広告配信の仕組みが完成する可能性があるのは、だれの目にも明らか。 Web2.0 Summitを主催するTim O’Reilly氏やJohn Battelle氏もこの点に注目し、Facebookが広告配信事業に乗り出す考えがあるのか質問している。

 「Facebook Connectや「いいね!」がウェブ上に広がったことで、もうそろそろソーシャルグラフを利用した広告ネットワークに乗り出すのではないかと思っているのだが。Googleは創業6年後に検索連動型広告でマネタイズの段階に入った。Facebookも、もうそろそろマネタイズの時期では?」(Tim O’Reilly氏)

 これに対してZuckerberg氏は「Googleがマネタイズの段階に入ったときよりも、Facebookはまだ手前の段階だと思う」と答え、収益を追求するよりもまだすべきことがあるという考えを示した。

 そのすべきこととは、業界を変えるようなビジネスを生み出すプラットフォームに徹すること。

 この辺りは、ローカルプレーヤーとグローバルプレーヤーという目標の違いからくる現時点での課題の違いだろう。。

 一方でミクシィは、キットカットの事例やクリスマスキャンペーンの事例に見られるように、ソーシャル広告の実験をいろいろと進め、ノウハウの蓄積に努めている。またノウハウの蓄積以上に重要なのが指標の確立である。ソーシャル広告がどの程度有効なのかを計測できるような指標がなければ、広告主を説得することが難しいからだ。反対に指標が確立し、だれの目にもソーシャル広告の効果が明らかになれば、広告がいっせいにソーシャルメディアに流れ込むだろう。なのでミクシィは指標作りにも最大限の努力を続けている。前回の決算資料に初めて登場したコミュニケーション投稿数などは、つぶやきも「いいね!」もコメントも、同じ重みで計算する非常にシンプルな指標だが、ミクシィでは、より影響力のある情報発信の形を特定できるような指標を確立できないか、いろいろと試行錯誤を繰り返しているようだ。(関連記事:mixiの新指標「コミュニケーション投稿数」で、1月は6億件突破【湯川】 : TechWave

 そうしたソーシャル広告のノウハウや、新しい指標が、次回のイベント「Mixi Meetup」で発表になるのだと思う。昨年9月に2000人の入場者を集めたMixi Meetupは主に開発者向けイベントだったが、夏までに開催される次回のMixi Meetupはマーケッター向けのイベントになるといわれている。前回のMixi Meetupが、日本のウェブのソーシャル時代の幕開けの象徴的なイベントになったように、次回のMixi Meetupは新しいマーケティング時代の幕開けの象徴的なイベントになるのではなかろうか。

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