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O2O(オー・ツー・オー、Online to Offline)という表現を見かける機会が増えてきた。オンライン情報がオフラインの購買活動に影響を与える、というような概念を示す言葉だ。簡単に言ってしまえば、価格コムで値段を調べて最安値の実店舗で購入する、というようなことだ。
価格コムの例にみられるようにずっと前から存在する事象なのだが、最近になって急に脚光を浴び始めたのは、スマートフォンが予想を上回る速度で普及し始めたからだろう。一昔前のパソコンを上回る性能を持つモバイル機器が一般消費者にまで普及し始めたのである。リアル店舗での購買活動に影響を与えるオンラインの仕組みを構築しようと、世界中のテクノロジー企業が一斉にこの領域に参入し始めたのである。ものすごいイノベーションがこの領域で起ころうとしている。
O2Oは「オンライン経済とオフライン経済の融合」という表現で形容されることもあるが、わたし自身、世界のIT企業の最近の動きを見るにつれ、O2Oは「融合」というような生ぬるいものではなく「オンラインがオフラインを飲み込む」という表現のほうが感覚的に近いのではないか、と思い始めている。なぜそう感じるのかを、何回かのシリーズ原稿として書き連ねてみたい。
半年ぐらい前からO2Oの動きを追っているのだが、今、世界で最も先行しているのは、もちろんモバイル大国日本である。先日のコロプラのリアル物産展の記事のように、成功事例では日本が一番進んでいる。(関連記事:コロプラのリアル物産展に四万人来場【湯川】 : TechWave)ただ欧米のIT企業はここにきて急にペースを早め、今にも追いつきそうなところまで来ている。
中でも一番先行しているのはebayだろう。O2Oに必要な技術やサービスを持つ企業を次々に買収しており、ebayに出資する有力ベンチャーキャピタルVenrockのDev Khare氏は「(一連の買収が)ほぼ完結。これからいよいよ動き出す」と語っている。ebayは、これから各技術を統合し攻めに入るのだろう。
ebayが買収した企業や戦略については次回以降の記事で解説するとして、ebayが昨年末に7500万ドルで買収したmilo(マイロ)社のJack Abraham氏が今年4月にシリコンバレーで開催された位置情報系カンファレンス「Where2.0」での講演の中でおもしろい資料を公開していたので紹介したい。
この図は米国内でのEコマースの伸びを示すグラフだ。右肩上がりで順調に推移していることが分かる。
とはいうものの、オフラインの経済と比べればEコマースのマーケットはまだまだ微々たるものだということを示すのが次のグラフである。
ところがオンラインの情報の影響を受けたオフラインの売り上げは、下の黄色の領域が示すように伸び続けているという。
2015年にはこの黄色の領域がEコマースの売り上げの6倍にもなるという。
残念ながらこの予測を出した調査会社がどこなのかは分からなかったし、原典にあたることができないので、どのようにして黄色の領域の数字をはじき出したのか、どういった根拠で6倍になると予測しているのかは分からない。
ただその主張は十分に理解できるし、納得できる。リクルートのRecoCheckのように多数のクーポンを搭載した位置情報系アプリが生活の中に浸透してくれば、オンラインの情報がオフラインの購買活動にかなり影響するようになると思う。あまり土地勘のない街で昼食を何にすべきか迷ったとき、割り引きクーポンがスマートフォン上に表示されれば、わたし自身そのレストランに向かうことになるだろう。(関連記事:これぞリクルートの底力 「RecoCheck」にクーポン55000件【湯川】 : TechWave)
もちろんすべてのリアルな購買活動がオンライン情報の影響を受けるわけではないだろう。しかし多くの人がクーポンなどのオンラインの情報を参考にするようになれば、店舗側はより多くのクーポンや参考情報をスマートフォン向けに出すようなになるだろうし、そうなればより多くの人が利用するようになるだろう。好循環に入るわけだ。そうなれば、リアルな購買活動のかなりの部分がオンラインの情報に左右されるようになる可能性は大きい。その意味で、「融合」という表現よりも「オンラインがオフラインを飲み込む」という表現のほうが実感に近くなるのではないかと思っている。
追記:
いろいろとデータを見つけることができました。
米調査会社BIGresearchが2006年に行ったアンケート調査によると、米国の消費者の87%が、リアルでの買い物の前にネットで情報を調べているという。(Industry Statistics – 87% of consumers research products online, buy offline – Internet Retailer)
米調査会社JupiterReseachが2007年に発表した予測によると、米国内でのオンラインでの情報に影響を受けるリアル店舗での売上総額は年間12%のペースで増え続け、2011年には1兆ドル規模に達するという。(Industry Statistics – Offline sales influenced by online research to hit $1 trillion – Internet Retailer)