あの “非常識な会社”がまたやった。売り上げのある事業をすべて手離してシリコンバレーで挑戦開始 【増田 @maskin】

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 「会社に電話がない」「顧客に会いにいかない」非常識な会社として一斉を風靡したEC Studioは2012年6月15日、会社名を同社が開発するビジネスチャットサービスと同じ「ChatWork 株式会社」に変更した。

 「ChatWork」は。最近はKDDIとの業務提携、10万ユーザー突破とノリに乗っている主力製品。代表取締役社長の山本敏行氏は「まだまだ、これからだけど、有料化率の動きを見ている限り、世界でも通用するパフォーマンスを出せているので、これにかける」と宣言。全ての事業を譲渡し、米国支社を設立、2012年8月から本人自らアメリカ・カリフォルニア州に駐在している。

 “収益のある事業をやりながら継続すればいいのに” と思うだろうが、山本氏は「選択と集中」と宣言する。「(事業は)本当にあげちゃいましたよ」とまでいう非常識ぶりだ。

 そんな彼らはカリフォルニア州サンフランシスコで9月8日から12日にかけ開催された米TechCrunch主催イベント「TechCrunch Disrupt 2012」に出展した。日本からの出展は2社。昨年と比較して日本人来場者が激減する中での、単独出展である。

ChatWorkが 「TechCrunch Disrupt」出展で得たもの


 出展の目的は「プロダクトのフィードバック」。最近、日本からいきなり海外にサービスを持ち込んでユーザー獲得や投資を期待するスタイルを取るプロジェクトが目立つが、山本氏は「ユーザー獲得については全然考えていません」と慎重に構える。

 「TechCrunch Disruptに出展するという目標を作ることで、手薄だった英語版サイトやプロダクトを仕上げるなどの副次的メリットはありますが、関心があったのは、これまでのやりかたで10万ユーザーを獲得したChatWorkが「海外でどう受け取られるか」、そのフィードバックを得たかったという一点です。

 実際にプロダクトに触れてもらい、説明をし、時にはこちらから「ビジネスチャットは使っていますか?」と問い掛け、そのコミュニケーションの中から、北米やアジアに展開する足がかりを作りたかったのです」(山本氏)。

 ブースの写真を見てみれば分かる通り「日本から来ました」的な演出は皆無。現地のビジネススタンダードのスタイルに乗り、オーソドックスにサービスを伝え対話する、ChatWorkが現地のビジネスシーンにどうマッチするのかをぶつける形となったが反応はどうだったのだろうか。

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 「反応は、予想以上に良かった。アメリカでも社内チャットのChatterやYammerのアクティブ率が下がっている状態で、ChatWorkが狙うメールの代替というレベルに至っていない。それらのチャットが「Social Content Discovery」だとすると、私達のChatWorkは「Immidiate Discussion」として目的あるメッセージなのでほぼ100%のアクティブ率が維持できという説明は、きちんと現地にも通用しました。

 一方で、タスク指向のサービスは一部の人に受け入れられているという意見も多数受けました。ChatWorkもタスクとコミュニケーションが深く連携するためゴールは一緒。しかし、一般のタスク指向サービスは “タスクからコミュニケーション” が生まれる仕組みですが、私達は “コミュニケーションからタスクを作る” のです。

 その点、アメリカの社内でも二分するケースがあるようですが、ChatWorkは “コミュニケーション主体” ということで、タスク指向の人には面倒となってしまうかもしれないけれど、全ての社員に受け入れられるという印象を受けました。タスク指向は技術系の会社に多いので、テック系以外のアプローチも含めた視野が広がりました。

 また、ビジネスでのチャットで「こんな問題起きてない?」と率直に質問をすると、想定通りの回答が山程得られる状況です。逆に、ChatWorkの40人まで無料で使える仕様について「ええ?40人テストなんだから10人以下でいいじゃない」と丁寧に教えてくれる始末。実際、3日の展示会期でいきなり有料版が売れていく動きを見て納得です。と、そういったやりとりで、現地のスタンダードが見えてきたんです」(山本氏)

サンフランシスコ&シリコンバレーから世界をつかむ。

 こうした地道な対面コミュニケーションを行ったChatWorkは、世界のメディアからの取材のみならず、世界展開をするプラットフォーム企業やキャリア、現地オフィス視察など様々な機会を得ることができたという。

 サンフランシスコ&シリコンバレー(あわせて通称ベイエリア)では、世界展開をする企業がひしめく地域で、そもそもChatWorkのベイエリア進出はその目的もある。ただ、最近の日本人スタートアップでこうした展開ができているのは、Orinoco Peatixなど数少ない状態なので、有意義な機会となったといえそうだ。

 「ブースを構え、率直に対話を続けるといろいろな方との接点が生まれます。例えば、クラウドプラットフォームでウェブアプリマーケットを持っている会社の方との話で、マージンは30-40%マージン取るけれども、色々な国のキャリアをつながっている人と出あいました。

 一番のクライアント(キャリア)はEU某国で600万人ユーザー。ChatWorkはアメリカとアジア展開をまず考えていますが、こういった企業を付き合いができれば一気にヨーロッパや南米などにリーチすることが可能になるります。もちろん日本のKDDIと組んでいるということもあり「アジアのキャリアがオフィスに来るんだけど、君たちも来てみない」といったアポイントのチャンスも出できました。

 ビジネスアライアンス面でも、対話の中から色々なヒントが得られます。「日本で10万ユーザーいるんだけど、君達は何つかってる? どうやったらうまくいくと思う? 」というと必ず教えてくれる。「競合サービスを導入しているオフィスに行って働き方を見てみるといいよ」という人もいる。同じ規模のスタートアップとも沢山接点が生まれてくるので、インテグレーションを含めた多数のリクエストがその場で生まれていくんです。得るものが多い3日間でした」(山本氏)。

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【関連URL】
・ChatWorkシリコンバレー挑戦日記
https://www.facebook.com/silicon.valley.challenge
・TechCrunch Disrupt参加者からのレポート、日本の存在感は? 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51762185.html
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・「お客に会わない」で有名 日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方 【増田(@maskin)真樹】
http://techwave.jp/archives/51523657.html

蛇足:僕はこう思ったッス
僕自身も20年程まえから同じような場で、同じようなやりとりをして、ベイエリアにいる人達の熱気とスピード感にかなり影響を受けてきた。山本氏の話を聞いて、当時の雰囲気を思い出した。そう、こういうスタイルで、同じ土俵に立ち、対話をすることがITで成功をする時の秘訣なのだと思う。
ChatWorkがかなりの売上を切り捨てた、この英断はすごいなと正直いって思ったけど、彼等が狙うのはもっともっと大きな世界なのだろうと感じている。投資を一切受けず、借金もない。そういう絵を具体的に描き、分析して、行動して前に進む山本社長はある種のカリスマなのだなと感じた。
著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。TechWaveの活動タグは創出・スタートアップマーケティング・音楽・表現・ミディアム・子ども・グローカル・共感。

メール maskin(at)metamix.com | 書籍情報・ 詳しいプロフィールはこちら


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Editor In Chief at TechWave.jp
1990年代初頭からソフトからハードまで50以上のスタートアップ立ち上げを国内外で経験。平行して雑誌ライターとして疾走。シリコンバレーでガレージベンチャーに参画後は、国内でネットエイジを筆頭にスタートアップに多数関与。ブログやSNSの国内啓蒙、ソニーの社内イノベーション事業など関与。通信キャリアのニュースポータルの立ち上げ期の編集デスクとして数億PV事業に育てた後、TechWaveにジョイン。世界最大のグローバルIT系メディアであるスペインの「Softonic」の元日本編集長
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