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[読了時間: 2分]
筆者がシリコンバレーでスタートアップに従事していた1990年代。行き付けの理髪店の香港人オーナーが「何で日本人はアメリカにきているのに、日本人同士で群れてるんだ。何しにきてるんだ?」とよく言っていた。今でも同じ指摘を、しばしば現地人に言われる。戦う人は群れない。その代わり仲間が必要で、その出会いには国籍なんて関係ないし、打算も不要だ。
ところが、日本にいるとなかなそういうことが起こらない。なぜなら戦う前に勝負が終わっているからだ。ちょっと変わったことをすれば「ダメだね」「迷走だ」「終わった」と不毛な批判があって終わり。いわゆる「出る杭は打たれる」である。
そういう意味ではTechWaveがスタートした2010年1月、時事通信を退社した湯川鶴章 氏らと共に行動できたのは奇跡だった。会社でもない、旧態以前としたPV狙い&広告重視のメディアでもないTechWaveが3年続けられたのは稀有な出来事だと自負している。
そして2013年1月、TechWave2.0という門出を迎えるにあたり、大きな壁に直面した。
それは仲間だ。
ともに戦える「仲間」
TechWave2.0は、筆者によるイノベーティブプロジェクト。既存の価値を壊さず、次のビジョンを明確化して実行に移すというもの。ただ、急遽1月に編集長を引き継ぐこととなったものの、2月にはアプリ博を控え頭の中を整理する余裕はない。スポンサー収入は2012年末で無くなっており、収入なし、仲間なし、ビジョンなしという状態で3か月間を過ごした。
これまで数十のスタートアップに関与してきたんだ、と強がるものの、難産を極め、目の前が真っ暗な状態の中、ある人にあった。この本「ともに戦える「仲間」のつくり方」の主人公 ビズリーチ 代表取締役社長 南壮一郎氏だ。
南氏は、「将来メジャーリーグの球団オーナーになりたい」という夢を抱え、楽天イーグルスの創業メンバーになるべく三木谷 楽天社長に直談判。その後、年収750万円以上を対象とした「求職者課金型」の転職サイト「ビズリーチ」を開設した人物。その後、ECサイト「LUXA(ルクサ)」を立ち上げたり、シンガポールを拠点とするビズリーチのアジア版「RegionUP」を2012年10月立ち上げている。
2013年3月15日、彼を尋ねた時は、ルクサ(別法人)がVCより5億円を追加調達したことを受けての取材だった。(3月21日、ジャフコ・スーパーV3共有投資事業有限責任組合を引き受け先とする第三者割当増資。調達額5億円で、増資後の資本金10億500万円。創業期の2010年11月に続き2回目)
ルクサは、ビズリーチとターゲットが重複しており、高所得者層に向け贅沢な体験を提供するECサイトで、会員は35万人 (取材時)。よくクーポン系サイトと比較されるが、そうではない。特定の高級商材を扱うものの、靴だけ、服だけ、というよりは、「プレミアム・アウトレット」をイメージしたECサイトという色が強い。優れたバイヤーを雇い、常に魅力的な商品を幅広く販売する手法で、今回の増資はバイヤーを中心とした営業体制の強化目的となる。
実際に会ってみると、南氏は非常に不思議な魅力を持っていた。物腰やわらかく、明るい。そして、謙虚だった。
日本のIT系で大型増資を決めたり急成長するサービスのCEOは、総じて強気になり過ぎているケースに陥っている。まず「自分たちのサービスは最高なんで」と言い、成長のビッグピクチャーを語り出す。
ところが南氏はそうではなかった。非常に不思議で、お会いした後、偶然手に取った本書「ともに戦える「仲間」のつくり方」を即座に購入し、読了することでその理由がわかった。彼は、大な夢を描く、苦労の人だった。仲間と邂逅し、チームを信頼して自分を過信しない。ひとりよがりを客観視し、本当の仲間を得て邁進する人だったのだ。
TechWave2.0のことを考えた時、筆者はとても多くの仲間に支えられていることを改めて確認していた。記事についても、多くのイベントの運営についても、個人や企業が「増田真樹」という一人の人間に対し多大な労力やコストを提供してくれている。IT業の先端を行く人、スタートアップする人、学生、投資家、TechWaveと何かをやりたいと思う人。中には会社を休み手伝ってくれる人もいる。上場企業が一個人に会社を上げて強力してくれたりもする。ただただ、感謝の気持ちがあふれるばかりで、何をすることもできずにいたというのが正直なところだった。
この本を読んで変わったのは、仲間の大切さだった。 筆者にはむしろ “それしかない” ということを理解することができた。権威やレッテルではなく、打算ではなく、活動に共感し協力してくれるみんなを「仲間」として、しっかり受け留め、これからのTechWaveを、そして自分自身の人生を歩もうと思うことができた。
それが新TechWaveのコンセプト「共に突き抜ける」である。
本書はビジネス啓蒙書ではなく、あくまで南氏が経験したことが淡々と綴られているもの。ちょっとしたドラマとしてさくっと読むことができると思う。フィクションほどの起伏はないので、中にはあっさりし過ぎと思うひともいるかもしれない。
ただ、何度か読み返している内に大切なことに気がつく。それは、一つの思いにかける人の情熱は、人と人とをつなぎ、奇跡をおこすのだということだ。本書のノウハウはエッセンスの断片に過ぎず、それを読んだ各人の中で咀嚼し続けることで、物事は具現化していくのだ。
【関連URL】
・ともに戦える「仲間」のつくり方 | Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/dp/4478017727/
・LUXA[ルクサ]のプレミアムチケットで、お得に贅沢体験を
https://luxa.jp/
・転職サイトのビズリーチ|ハイクラス求人情報
https://www.bizreach.jp/
「共に突き抜ける」というコンセプトは2012年初頭あたりから自分の胸の中にしまっていたキーワード。そんな新興メディアはないし、そもそもこうした漠然としたビジョンが実現できる可能性もあるとは思えなかった。不安一杯。
2013年2月のアプリ博は多数の仲間によって成功することができた。その上で、南さんの本に出あうことで、仲間と共に突き抜ける道を進むことに不安がなくなった。
これから何度かこの本を読み返すことがあるだろう(すでにクシャクシャw)。同じように一人で悩んでいるイマジニアに手にとって欲しい一冊だ。
変化し続ける高エネルギー生命体。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてのIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなどほとんど全てのIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ブログCMSやSNSの啓蒙。ネットエイジ等のベンチャーや大企業内のスタートアップなど多数のプロジェクトに関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。活動タグは創出・スタートアップ・マーケティング・音楽・子ども・グローカル・共感 (現在、書籍「共感資本主義」「リーンスタートアップ」執筆中)。@宇都宮ー地方から全国、世界へを体現中。
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