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Infinity Venture Summit 2011 Fall Kyotoの2日目のセッション「DeNA 強さの経営」に株式会社ディー・エヌ・エーの守安功CEOと川田尚吾顧問が登壇した。セッション自体は非公開なので詳細にレポートすることは控えるが、Twitterで流れている程度にDeNA経営陣の発言を拾っていくことでDeNAの強さの秘訣がどこにあるのかを探ってみたい。
「目標となる売上高を示すだけ。あとは優秀な社員がそれを達成してくれる」。創業者で前CEOの南場智子氏がそう語っているのをどこかで読んだ記憶がある。優秀な経営者の謙遜な発言に過ぎないと考えていたのだが、実際に売上高目標という数字が、DeNAという企業の中で大きな意味を持っていることが今回のセッションで分かった。
守安氏は「基本的に計画って数字だけなんです」と言う。「2003年の売り上げが15億円くらいだったんですが、南場が『今後の3年間は毎年売り上げを倍にしたい』と言ったんです。2004年は30億円、2005年は60億円、2006年は120億円という計画、というか数字だけを提示した。それで死に物狂いでそれを達成しようとする。モバオクがうまく行き、ポケットアフィリエイトも2004年にうまく行った。2005年になり、60億円を一気に120億円にするのって、当然ながら大変な話。僕は現場でがんばって目標を達成しようとする。それでなんとか100億円くらいは可能だということが見えてきたときに、南場はその先を行こうとするんです」
そのときに南場前CEOは「5年計画を作りたい。5年で1000億円の会社にしたい」と切り出したのだそうだ。5年で1000億円ということは、逆算していけば2007年に200億円、2008年に400億円、2009年に700億円に達成しなければならない。「モバオク、ポケットアフィリエイトという2つの事業がうまくいってたときだったんですが、これだけやってたんじゃだめだ、と思いました」と守安氏は言う。
そこで2005年の夏に7,8件の新規事業案を考えた。それぞれに3人ほどの担当者を割り当てスタート。そのうちの1つがモバゲータウンだった。モバゲータウンの事業が急成長し始めたので、リソースをモバゲータウンに集中したのだと言う。
普通の企業では経営トップが無理な目標を提示すれば反発があるものだが、DeNAは違ったようだ。川田氏によると「いわば集団催眠状態にあったんです。最初は驚きがあったんだけど、すぐにみんなでがんばろう、という気になった。またみんながそういう気持ちにならなければ、この数字は出せない数字だと思う」という。
そのような社風はどのようにして作られたのだろうか。その社風はDeNA Qualityという文章に明文化されている。
DeNA Quality
DeNAでは、「世界を切り拓く永久ベンチャー」というビジョンに基づき、以下を「大切にしていきたい考え方」として社員と共有しています。
・球の表面積
自身が担当する領域において、DeNAを代表する気概と責任感を持つ。
・全力コミット
2ランクアップの目線で、組織と個人の成長のために全力を尽くす。
・透明性
チームワークとコミュニケーションを大切にし、仲間への責任を果たす。
・発言責任
階層にこだわらず、のびのびしっかりと自身の考えを示す。
・最後の砦意識
誰かにチェックして貰うことを前提とせず、高いプロフェッショナル意識を持って仕事をする。
川田氏はこのDeNA Qualityが、単なる見栄えがいいだけの文章ではないという。「大赤字のときや多くの修羅場をくぐり抜けてきて、こうした考えがわれわれの体の中に染み付いているという感じです。体に悪いものを食べれば胃が拒絶反応を示すじゃないですか。そんな感じで、どういう行為が会社を危機的状況に落とし入れるのかということが、生命体の防御本能的なレベルで体に刻み込まれている。そんな文章なんです」と川田氏は言う。
守安氏も「実際にこれに書かれているように、発言を求められるし、また南部も下の意見に耳を傾けてくれた。この文章が本当に実践されてきたんだなと思う」と言う。「2ランクアップの目線」についても「あまり会社に教えてもらった、育ててもらったという感覚はない。ただ自分が成長するような仕事を与えてもらったと思っている。なので若い人が、目標を達成しそうになったらさらに上の目標を与えて成長してもらおうと思う」と言う。
また「世界を切り拓く永久ベンチャー」という標語に関して守安氏は「これだけだとどんな事業を目指している企業かよく分からないかもしれない。でも事業に依存したビジョンにはしたくない。われわれはどんな新規事業にもオープンであるという姿勢の中で、モバオクが生まれ、モバゲーが生まれた。今はソーシャルゲームが事業の中心だが、未来永劫ソーシャルゲームの会社であり続けるつもりはない。新しいチャンスがあれば挑戦し続けたい。そういう意味で、こういった標語になっているんです」と言う。
南場前CEOが、具体的な事業内容まで指示せずに数字目標だけ提示したというのも、どんな新規事業にもオープンであるという柔軟な姿勢の表れなのだろう。
守安氏も数字の重要性を強調する。「ベンチャー企業の創業時は、サービスに意識が集中しがち。そのフェーズはそれでいいし、そういう思いじゃないといけないと思う。ただ売り上げを意識するという次のフェーズに行かないと、爆発的成長は難しいと思う。そのタイミングを逃さないということが重要だと思います」と語った。