ad:tech tokyo2018のアドバイザリーボードメンバーは総勢35名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんからのデジタル広告、マーケティング業界への問題提起を事務局が連載形式でインタビューします(特集一覧はこちら)。
[もっと読む…] about マーケターに欲しい2つの視点、PLとBSのマーケティングとは 【ad:tech tokyoボードメンバーインタビューvol.3】
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サイバーエージェント社は2018年4月4日、東京・渋谷エリアに点在する事業拠点を2019年に同エリアの2つのビル「Abema Towers(アベマタワーズ)」と「渋谷スクランブルスクエア」に集約することを発表しました。
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広告とテクノロジーの祭典「ad:tech tokyo」は今年で10周年を迎えます。2018年の10月4日5日に開催されるこの記念すべき今年のad:tech tokyoのアドバイザリーボードのメンバーは総勢35名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんにad:tech tokyo事務局が連載形式でインタビューを行います(特集一覧はこちら)。
今回は株式会社NTTドコモプロモーション部長石川貴浩氏が登場。膨大な量の顧客データを抱える通信キャリアのこれからのデータ活用についてお話を伺いました。
—通信キャリアである皆さんが取得可能なデータというのは行動履歴、購買履歴、位置情報までと幅広く、アドテクノロジーやマーケティングの世界からはとても注目度が高いと思うのですが、自社戦略としての活用というのは実際どのぐらい進めていらっしゃるのでしょうか。
実はまさに今年から来年がデータ活用へのチャレンジの年で、具体的なことを詰めている段階です。外部の方から見ると、「意外とゆっくりだな」と思うかもしれませんが、そこは私たちが通信会社であるということが大きく関係しています。いわゆるレガシー的な顧客情報、例えばご契約時にいただく氏名、生年月日のような情報は今までもありましたし、個人情報の取扱の許諾や匿名化の処置を施した上での活用をしていました。しかし、通信会社ですから、実際に端末同士でやりとりされている情報というのは通信の秘密を守らなければいけません。法的な制限もあるので、非常に慎重かつ丁寧に進めてきたという経緯があります。webからスタートしたサービスとはその点の発想の違いが大きくありますね。
—まさに進行中とはとても楽しみです。
データの活用が本格化していくからには各社には負けられません。リーディングカンパニーにしていきたいと同時にドコモのビジネスそのものも変わっていくのではないかと私は感じています。実際にdTVやdマガジンといった新しい事業も大きくなっていますし、「+d」というパートナー企業の皆様との取り組みで事業が広がっています。蓄積されていくデータはどんどん拡大していき、、、そのデータを活用することで、お客様をもっと理解した高度なプロモーションが実施できるのではと考えています。そうすることでお客様へ提供していくサービス自体も更に幅広く柔軟なものになっていくのではないでしょうか。
—事業の幅を広げていく中で、プロモーションの方向性としてはやはり強みのあるスマホシフトでしょうか。
そんなこともなくて個人的にはデジタル上での出目とでも言いましょうか、もっと新しいコミュニケーションの面というのがないのだろうかと感じています。いくらデータを活用して個人個人にフォーカスを絞った適切なアプローチをしたとしても、接触の場所がいつまでもお決まりのサイズのバナーでは、従来の追い掛け回すような「広告」と同じと捉えられてしまう。もっと多様性があってもいいんじゃないかなと。
またそこに出していくコンテンツとしても、見た人の購買を促していくような「広告」というジャンルに括られてしまうと限界が来てしまうので、自然と納得感を与えられるようなエンゲージメントを構築できるようなものを作成していきたいと考えています。
私はよく映画「マイノリティリポート」みたいな世界が早く実現されないかと楽しみにしているんです。街中のOOHがデジタルサイネージ化して、通行人にパーソナライズされたクリエイティブが出てくる。そして、それが車内広告や別のところとも連携して、目の前を通る人に話しかけてくれる……。きっと実現はもう間も無くですよね。昔のSF映画はもう未来の夢物語ではなく、今現在や数年後の世界の答え合わせができるものになっています。
—何か注目されている技術などがあるのでしょうか。
新しい可能性として出て来ているのはやはりAIです。今は入力のインターフェイスとしてスピーカーが多く使われていますね。音声認識もどんどん精度が高くなっていっているので、興味があります。また人とAIの間を繋ぐインターフェイスとしての役割にしろ、プロモーションの出目にしろ、様々なデバイスが今後登場し、マイノリティレポートのような世界が実現されていくのではないでしょうか。
—非常に前向きなお考えを持っていらっしゃるという印象ですが、課題感などはお持ちですか。
人材です。お客様の価値観が分散して、特に若年層の興味関心を追いかけるのが難しくなってきています。チャネルやクリエイティブの手法にこだわらず横断的にプロモーションを考えなければいけないなかで、マーケターを育てるためにはハードもソフトも改革が必要ではないでしょうか。急速な変化についていくからには、育成だってスピーディにやらねばなりません。その点については同じ悩みを持っている企業、業界全体で考えていきたいです。人の気持ちに寄り添うことを忘れずに、技術を進化させて活用するために学んでいきたいですね。
—ありがとうございました!
<プロフィール>
石川貴浩
株式会社NTTドコモプロモーション部長
1989年NTT入社、1994年NTTドコモに移り、本社ではプロダクト部、プロモーション部等を歴任。前職のマーケティング部戦略担当より2017年6月に現職。同社のプロモーション業務全般を統括。
広告とテクノロジーの祭典「ad:tech tokyo」は今年で10周年を迎えます。2018年の10月4日5日に開催されるこの記念すべき今年のad:tech tokyoのアドバイザリーボードのメンバーは総勢35名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんにad:tech tokyo事務局が連載形式でインタビューを行います(特集一覧はこちら)。
初回はエステー株式会社 執行役エグゼクティブ・クリエイティブディレクターの鹿毛康司氏が登場。今、業界に対して抱いていらっしゃる「期待」と「課題」についてお話を伺いました。
—2012年の初登壇以降、スピーカーやモデレーターのお立場、そして今回はアドバイザリーボードとしてad:tech tokyoに携わっていらっしゃいますが印象的なプログラムなどはありますか。
昨年の糸井重里さんとJR九州の唐池恒二さんの対談Keynoteかな。その中で糸井さんが言っていた「人間って何万年も変わっていないよね」という言葉がすごく腑に落ちたんです。人間は変わっているように見えるけれど、変化しているのは技術で、人の意識や感情さらには横たわる心は変わっていないと私は思っています。そして、その「心」を動かすことこそがビジネスでありマーケティングであるとも思っていました。
今のアドテクノロジーは人間の行動をダイレクトに分析できるようになってきました。ほんの一例ですが複数のクリエイティブを作ってABテストでどちらが良いかを評価することもできます。ほかにも行動履歴を分析することもできます。素晴らしい進歩であるとは思いますが、それは行動の分析であって「心」までは見えていない。だからそのことを認識するかどうかが重要だと思っています。
—それはマーケティングにおけるテクノロジーの限界ということでしょうか。
いえ、限界ということではありません。むしろ発展だと思います。問題はテクノロジーで分析した結果だけをもってして、分かった気になってしまうと危険な気がするわけです。この「分かった気」というのが非常に厄介で、「全てが解決する」と思考停止してしまうことが問題だと私は思っています。将来的にはある程度の心の分析もテクノロジーでできるとは思うのですが、やはり自分という「人間力」で思考することが必要です。
先ほどお話した糸井さんは「自分と会話する」という言葉を使われていましたが、まずは自分が「何万年も変わらない人の心をもった消費者」だということを前提にテクノロジーを使うことが重要なんじゃないかなあ。そうやって自分の心と会話して、その上で日進月歩のテクノロジーを使いこなす。そのふたつの能力がマーケターには問われていると思うんですよね。その上ではad:tech tokyoは、テクノロジーをどう乗りこなすのかのヒントだらけで素晴らしい場だと思います。一方で「技術さえ使えばなんでも解決する」と思考を停止した人はアドテックに触れても表面上の「これは使える、使えない」の判断で終わってしまいがちです。それはとってももったいない。そんなことをad:tech tokyoに参加した人の感想を聞いて思っていました。偉そうにすみません。
—エステーブランドはCMとネットコミュニケーションでしっかりと作られてきました。例えばCMづくりにおいてもご自身との会話をなさって生まれるのでしょうか。
そうですね。むしろ自分と会話しないとCMはつくれないかもしれません。「消臭力」「脱臭炭」「米唐番」だったりと、もちろん商品としての機能があってお客様は買っていただくのですが。それだけではない購入態度がそこには確実にありますね。それは単純に調査してもどうしたって出てこない。例えば米から虫を守る「米唐番」。機能は「唐辛子ゼリーでちょいと置くだけで防虫できる」ということなんですが、それだけじゃないお客様の心があります。野菜が腐ったら「もったいなかった」と思うけどお米に虫がついたら「申し訳ない」という感情が生まれるんですよね。これずっと続く日本人の心だと思うんですよ。それをCMづくりには味付けしました。というか、その上で歌詞と曲を自分でつくったんですけどね。そういう「当たり前だけど大切な心」って技術では発見できないでしょ?自分の心と会話して、さらには人と話して、その上で調査してマーケティング手法を利用して、そしてアドテック手法でコミュニケーションを設計して展開していくという流れになっていました。その結果、米唐番がお米防虫のシエア70%につながっていると思っています。
—鹿毛さんのクリエイティブにはそのような過程があったのですね。
人の心にどう触れるかがクリエイティブだと私は思うのです。一方でアドテクノロジーだけが全てを解決するという行き過ぎた論調があるのが気になります。私はアドテクに非常にポジティブです。テクノロジーでできることがどんどん産まれている。その両方を使いこなすことが重要だと思っています。そして、アドテク業界にそういう人がたくさんいます。元LINE現スタートトゥデイの田端さんなんかは、ご発言や活動内容を拝見するに、まさしくその両方を持っていらっしゃるようにお見受けします。オイシックスの奥谷さんなんかも、そういうタイプの方ですよね。そういう人がどんどん登壇するad:tech tokyoになればいいなあと、今年も期待しています。私も勉強します。
—2018年のad:tech tokyoはプログラムが公開されたばかりで登壇者の方の発表はまだ少し先になりますが刺激的な2日に作り上げていきます!ありがとうございました。
<プロフィール>
鹿毛康司
エステー株式会社
執行役 エグゼクティブ・クリエイティブディレクター
エステーCMの父、ミゲルの日本の父、自分の子供達の父。2004年に自社サイトで動画配信、2005年からコンテンツマーケティング、2006年から別名「高田鳥場」でツイッターを開始。クリエイティブとアドテックの融合をテーマに活動して今にいたる。コミュニケーション戦略/CMクリエイター/戦略PR//作詞作曲、時々CM監督 2014ad:tech tokyo セッション部門(モデレーター)1位、2015 同3位、2013WEBグランプリWeb人貢献賞、2013マーケターオブザイヤー、2012ACC GOLD賞
LINEは2018年3月22日、IFTTTを使ったAIスピーカー「Clova」の機能カスタマイズサービスの提供を開始したと発表しました。