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米メディアが指摘するFacebook時代=ソーシャル広告でGoogle直撃【今週のピックアップ】

 この1週間で最も多くのページビューを集めた記事はTech Wave : AdobeついにiPhone向けFlash開発中止=「宣戦布告受け入れた」【湯川】(63,318PV)だし、スティーブ・ジョブズのTech Wave : 「ブルーレイなくてもYouTubeがあるじゃん」Tech Wave : 「ポルノが欲しけりゃAndroidケータイ買えばいい」といった発言にも注目が集まったんだけど、僕はFacebookのソーシャル戦略の発表が今週最大のニュースだったと思っている。

 Facebookの新戦略は、Facebook内でのデータやツールをサードパーティのサイトにも自由に使えるようにすることで、Facebookをウェブ全体のインフラにする壮大な戦略だ。このニュースを取り上げている米のメディアやブログの記事を見ていると、米国ではウェブが「検索の時代」から「ソーシャルメディアの時代」へと移行しつつある、というのが支配的な認識になってきたように思う。

 僕の考えはTech Wave : 【解説】Google時代の終焉宣言するFacebook新戦略に書いた通りなんだけど、TechCrunchはFacebookはついに次世代ウェブの主導権を握ったのではないか?という記事の中で次のように書いている。
【関連記事】「検索」から「つながり」のウェブへ=Facebook公式ブログが新機能を解説【湯川】

Facebookのf8デベロッパー・カンファレンスのキーノートは比較的短くてシンプルだった。しかし見誤ってはいけない。このスピーチにはウェブサービス全体に巨大なインパクトを与える可能性のある発表がいくつか含まれていた。(中略)

いちばん興味深かったのは、「ウェブではソーシャル関係〔ソーシャル・グラフ〕が現在のハイパーリンクに劣らず重要になっていく」というのが Facebookのビジョンであることが分かったことだ。Facebook自身がウェブで最大のソーシャル・グラフの保有者なのだから、ある意味当然の見解ではある。しかし、ここ数カ月のFacebookの驚異的な成長を考えると、このやはりビジョンは正しいだろうと考えざるをえない。

となれば、Googleには脅威だ。


 Googleはリンクの張られ方で情報の重要度を判断している。多くのサイトからリンクを張られているページを重要な情報を含むページと認識し、その重要な情報を含むサイトからリンクされているページも重要なページと判断する。こうしたルールに基づいて重要度を判断し、重要度の高いページから順番に検索結果のページに表示している。ページとページの関係性を分析して、情報の重要度を決めているわけだ。

 一方でFacebookは、だれがどのような情報に関心があり、だれとだれが友達であるといった情報を基に、特定の情報が特定のユーザーにとってどの程度重要なのかを判断する。人間と情報、人間と人間の関係性を分析して、情報の重要度を決める。

 このFacebookによる人間と人間の関係性の分析が、Googleの情報と情報の関係性の分析に劣らず重要になっていくというのがFacebookのビジョンということだ。しかしこれは控え目な表現をわざと使っているのではないだろうか。僕は人間と人間の関係性の分析のほうが重要になっていくように思う。

思惑通りにFacebookはウェブのインフラになれるのか

 さてそのビジョン通りになるだろうか。Facebookはウェブの新しいインフラになるのか。

 サードパーティのサイトがFacebookのデータやツールを自社サイトに取り組む仕組みはFacebookConnectと呼ばれる。この仕組を利用すれば、ユーザー登録が非常に簡単になる。

 ID、パスワードを決め、自分の情報を入力しないといけないサイトは、本当に面倒。もうやめてもらいたい。いい記事を掲載しているのに「続きを読みたい場合は登録してください」と書いてあれば、急に読む気がなくなる。データを入力するのが非常に面倒だし、これ以上アチラコチラのサイトに自分の情報を入力したくないからだ。そんなことを要求するのなら、残りの記事を読むのを諦める。ECサイトでも、登録を要求するところでは購入を諦めたことが何度もある。

 だがFacebookConnectに準拠しているサイトなら、Facebookのロゴをクリックするだけで、そのサイトがFacebookから情報を持ってきてくれる。感動するのは、僕の顔写真までFacebookから持ってきてくれることだ。自分の情報だけではない。自分の友人関係まで連れてきてくれる。これが非常に便利だ。友達も一緒に連れて来れるので、新しいサービスでも楽しくなる。この辺りの話はTechCrunchの記事の中でFriendFeedの開発者が語っている。

TaylorはFriendFeedを開発中に面白い事実に気づいた。新しいユーザーがFriendFeedを使い始めたとき、5人以上の友達が見付かるとその後も使い続ける。しかし4人以下だと戻って来ない可能性が高くなる。まだユーザー数がさほど多くないスタートアップの場合、5人の友達を見つけるというのは不可能に近い厳しい条件だ。そこでFriendFeedはさまざまな他のサービスを使ったログイン手法やメールの連絡相手の検索など友達を見つける工夫をした。そして結局FriendFeedの成功を支えたのはFacebookConnectだった。Talorによると、FB Connectを通じてサインアップしたユーザーは他のサインアップ方法で参加したユーザーに比べて、4倍も常連になる割合が高かったという。

「しかし一方で、プログラマーとしてはConnectの利用はまったく厄介だった」とTalorは告白した。FriendFeedにとって FacebookConnectの実装はいつも頭痛のタネだった。この点についてはこの1年、他の多くのプログラマーが同じ感想を持っている。 Taylorは“私は以前からプラットフォームはこんなに複雑であってはならないと考えていた”と言う。そして今日発表されたFacebookの新しいSocial Pluginは利用法が革命的にシンプルになった。

 FacebookConnectはサービススタートからわずか1年間で1億250万のサイト、ブログに利用されるほど急成長を続けている。そのFacebookConnectの使い勝手が「革命的に」簡単になったのだ。FacebookConnectの普及に拍車がかかり、少なくとも米国ではウェブのインフラになる可能性は十分にある。

広告、マーケティング

 Facebookが米国のウェブのインフラになれば、広告、マーケティングはどう変わるのだろうか。AdAgeはFacebook May Not Be Skynet, but It Is Getting Smarter, and That’s Bad for Googleという記事の中で次のように書いている。

The intelligence collected from relationships with others, social micro-interactions (e.g., “likes,” “shares,” comments, updates), location (yup, Facebook’s working on that) and even transactions (see Facebook Credits) will be inherently more valuable to advertisers than click-through and search behavior (as advertisers get smarter themselves about what those kinds of behaviors mean to their bottom lines). And make no mistake, this data will be collected en masse. Facebook expects to serve 1 billion “likes” in just 24 hours. By applying this kind of statistically significant intelligence to its Engagement Ads, Facebook can deliver even more efficient, impression-generating advertising for its customers.

人間関係から得た情報や、「like」ボタンや「共有」ボタンで得た情報、位置情報、決済情報は、検索やクリックスルーといった情報よりも広告主にとって重要になる。そしてこうした情報が莫大な量になることは間違いない。24時間で10億件の「like」情報が集まるとFacebookは見込んでいる。エンゲージメントの高い広告にこれだけの莫大な統計データが集まるのである。Facebookはより効果的で、見られる広告を消費者に配信できるようになる。

 Facebookの中だけではなく、無数の提携サイト上の「like」が集まるわけだ。Facebookの外で集まる「like」情報のほうが、より価値が高いものになるのではないだろうか。

It seems to be an inevitability that all of this intelligence will one day be applied to power a socially targeted ad network as big (or bigger than) Google’s AdSense. It would be a network that would theoretically deliver even better results for advertisers, resulting in higher CPMs/CPCs/CP-whatevers that can deliver higher payouts to publishers, making a choice between the two platforms a not-too-difficult one for those publishers.

 こうした情報がいずれソーシャル・ターゲット・アド・ネットワークとでも呼ばれるような仕組みに応用されることになるだろう。そしてこのアドネットワークは、GoogleのAdSenseと同等、もしくはそれ以上のものになる可能性がある。現在の広告市場で見ても、より大きな結果を出せるだろう、広告主にとって収益増にもつながるだろう。そうなれば、AdSenseとFacebookのアドネットワークのどちらを選択するのか、ということはそれほど難しい選択にはならないだろう。

 Facebookのソーシャルな情報を利用した広告の仕組みが、Googleの広告の仕組みを超える可能性があると指摘しているわけだ。AdAgeは、Facebookの新しい仕組みを利用できるように広告主は準備すべきだ、と呼びかけている。

決済の仕組みにも影響

 FacebookはFacebook Creditsという仮想通貨事業にも乗り出す。TechCrunchはFacebook Creditsは今後どうなる?という記事で概要を次のように説明している。

新機能の一つがApp2user Creditsだ。これは一連の広告キャンペーンなどを通じてユーザがFacebook Creditsを獲得でき、それをクレジットカードによる支払いの代わりに使えるというもの。Liuは3つの例を挙げた。まず、Liuによれば、クレジットカードの新規ユーザになったときもらえる礼金としてFacebook Creditsを使う(Chaseがすでにそういうキャンペーンを準備中だそうだ)。第二の例は、Plastic Jungleといって、ユーザが要らないギフトカードを売れるサービス。第三の例は、TrialPayのようなサービスでFacebook Creditsを使ってショッピングできる企画。

 Inside FacebookのFacebook: We Want to Integrate 200 Credits Payment Options Worldwideという記事は次のように書いている。

Facebook plans on adding “100 or 200″ local payment options worldwide.
New partners are likely to be mobile payment providers, game cards, bank payments systems, or offer providers,

 Facebook上では既にクレジットカードやPayPalなどの決済方法でゲームなどがプレーできるわけだが、今後世界中の100から200ほどの決済方法を利用可能にするという。

 世界中のいろいろな決済方法と互換性のある決済方法をFacebook上で普及させるつもりなのだろう。Facebookの決済方法を国際通貨のようなものにするつもりなのだろうか。

 現時点で分かっていることはこの程度。うーん、何かよく分からない感じがする。

 Los Angeles TimesはFacebook still working on its virtual currencyという記事の中で、Facebook Creditsはまだ10社ほどのパートナー企業とベータテスト中で、主にゲームの開発者などが課金しやすいように仕組み作りを進めている段階といいう。CEOのZuckerberg氏は、まだ自分たちの収益を目的としてサービスを開始する段階ではないと語ったらしい。

 まだ決済の仕組みの全容はつかめそうにない。いずれにせよFacebookの新戦略はウェブの進化に大きな影響を与えざるを得ない。もう少し詳しく調べて、いろいろ考察してみたいと思う。

 さて、この1週間の主な記事のリストは以下の通りです。

 まずページビュー数のトップ5。
1.
Tech Wave : AdobeついにiPhone向けFlash開発中止=「宣戦布告受け入れた」【湯川】
63,318
2.
Tech Wave : 次期iPhone試作品をギズモードが入手=シリコンバレーは大騒ぎ【湯川】
18,623
3.
Tech Wave : 「ブルーレイなくてもYouTubeがあるじゃん」ジョブズが要望を一蹴【湯川】
12,074
4.
Tech Wave : 「ポルノが欲しけりゃAndroidケータイ買えばいい」=ジョブズ氏【湯川】
11,635
5.
Tech Wave : 剛腕Appleに悩まされるFlash、広告会社【今週のピックアップ】
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 続いて、はてなブックマークのトップ5です。

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