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安定した雇用と給与を捨て「起業の道を選ぶ」ということ。そこには難関が控えているわけで「がまんして会社にいながらやればいものの、、」と起業を冷ややかに傍観するサラリーマンは想像以上に多い。
「しかし、それは機会損失だ」。
高い給与が約束された企業の内定を辞退しスタートアップした「trippiece」や「Creatty」、「Cocoa Motors」のメンバーは言う。「今しかできないことがある」と。
今しか自分にしかできないことを
僕たちがスタートアップした理由 |
孫泰蔵氏率いるMOVIDA JAPANが出版した「僕たちがスタートアップした理由」は、「あなたは今の仕事が好きですか? 誇りを持って働いていますか?」という問いを突き付ける。
ITサービス&プロダクトの場合、これまでのように、何百万、何千万の資金がなければサイトを立ち上げることもできないという時代は終わり、誰でも知識と労力さえあれば、サービスでもアプリでも立ち上げられる環境が整った。情報もコミュニケーションも、数年前よりも格段に良くなっており、勉強するにしてもアイディアを整えるにしても申し分ない。本書では「バンド感覚、カジュアル起業」という表現をしているが、それくらいの感覚でITスタートアップにトライできる環境が整っているのが現状だ。
で、あれば、このチャンスにトライしない手はないのではないか? 今の仕事が好きで、誇りを持っていないのであれば、自分の手で本当にやりたい仕事をスタートアップしてはどうかというのが本書のメッセージだ。
濁りないシンプルな考えをメインストリームに
もちろん、いくら手軽にスタートアップできるからといって、人的ネットワークもノウハウもない状態では無謀だが、MOVIDA JAPANは、種(タネ:Seed)となるアイディアの成長を加速(Acceleration)するためのプログラム「Seed Acceleration」等を展開するほか、人脈形成とノウハウの共有のため定期的に「MOVIDA SCHOOL」を開催するなどの支援策を提供している。
カジュアル起業とはいえ、MOVIDA JAPANが支援し本書で取り上げられるスタートアップは、本気というより純粋な「これをやりたい」という強い気持ちを持ちあわせていることに気がつかされる。もちろんビジネスとしてリターンを求めて支援する以上、いわゆる “お金儲け” が得意なスキルに注目してもいいはずだが、それでは「おもしろくない」という。
例えば「nana music」 CEOの文原明臣氏は「2010年1月にハイチで発生したマグニチュード7.0のお大地震で31万人以上が犠牲になった際、原曲でセッションした80人以上ものアーティストが25年ぶりに再結集してコラボレートした “We are the World 25 for Haiti”に感動しました」というきっかけからアプリ開発をスタート。神戸から月一で東京のコワーキングスペース入りする形で起業している。「やりたいことがあればバイトしてでもやる」という強い意思があるのがとても興味深い。
MOVIDA JAPANの「Seed Acceleration」事業部長の伊藤健吾氏は、米Khosla Ventures創設者 Vinod Khosla 氏の言葉「私達の仕事は単なる投資ではなく、Disruptive Technology(破壊的な技術)により世の中をより方向に前進させる起業家を支援しているのだ」に強い影響を受けたとのことで、MOVIDA JAPANのフォーカスする7つの分野「Mobility of Life」「Global Distribution」「Social Sharing」「Cloud Accelerated Innovation」「Social Curation」「Life with Smart Robot」「Power of Manabi (co-learning)」にしてもITの可能性を最大限に引き出そうとしていることが垣間見える。
そもそも、本書の出張である「ITスタートアップで社会を変える」にはシリコンバレー文化の影響があり、そのエコシステムを学び自らに展開する機運が到来しているのが “今” なのだろう。
MOVIDA JAPAN CEO 孫泰蔵氏を含めMOVIDA JAPANのメンバーはシリコンバレーとの接点が多く、あの地域の多国籍性やスピード感、何でもシェアするオープンマインドを理解した上での “日本に対する思い” があるようだ。
本書には「日本の閉塞感を打ち破る若者たちのスタートアップ熱」「未来の働き方の変化」という2つのキーワードがあるが、群れて何でもそうとする日本文化がもたらした閉塞感は、“何かをやりたい、という一人一人の可能性を支援する” ことで徐々に打破されるだろうと感じさせられた。
スタートアップ用語やシリコンバレー情報、MOVIDA JAPANの事業案内的な内容もあるため万人向けではないが、ITスタートアップを志ざしたい人は、アイディアを充分に洗練させた上で、本書を手に取るといいのではないだろうか。
「僕たちがスタートアップした理由」
監修:孫泰蔵
著:MOVIDA JAPAN
http://books.rakuten.co.jp/rb/item/11907009/THE REASON WE START UP
自分らしい「働き方」はどこにある?本書は、MOVIDA JAPAN株式会社のCEO、孫泰蔵氏が監修し、満を持して出版する
働き方に悩む人のための1冊です。孫泰蔵氏は、かつてYahoo!JAPANの立ち上げに参画、その後も、ガンホーオンラインを上場させるなど、一貫してベンチャービジネスの第一線で活躍してきた人物です。
その彼が今、人生を賭して挑んでいるのが、若いスタートアップ企業の支援と、その仕組み作り。彼らはその取り組みを、シードアクセラレータと定義しています。
彼らの事業を通して、現代の若者のスタートアップの最新潮流を解き明かし、さらにはきたるべき未来に備えて私たちがどのような「働き方」にシフトしていくべきか、本書はそんな未来を予見した1冊になっています。
●目次
1 なぜ彼らはスタートアップの道を選んだのか
2 バンド感覚のカジュアル起業ってなに?
3 シリコンバレーでは革命が起きていた
4 日本を変えるバックパッカー起業ってなんだ?
5 世界を変えるにはどうすればよいか?
6 僕たちの「仕事」はどう変わる?
【関連URL】
・「僕たちがスタートアップした理由」(監修:孫泰蔵,著:MOVIDA JAPAN)
http://books.rakuten.co.jp/rb/item/11907009/
初めてアメリカの人と交流したのは15歳の頃。某所経由でシリコンバレーのBBSに接続した時だった。日本の田舎のおっさんがいうような「それはダメだからダメなんでダメだよ」的なネガティブとは全く違う感触。20歳前後に渡米した時、なんというか人々のオープンさに感動したというか、やっと自分のホームにきたんだという印象を受けた。
日本の閉塞感の根源は「すぐに隠す」「楽しいことだけ頑張る」という村社会システムがもたらしてきており、ソーシャルメディアが普及しても変わらないどころか悪化している風潮もある。そんな中、破壊的な技術やカリスマに媚びてもそれを打破することはできないのだ。
だから、シリコンバレーのITスタートアップエコシステムの話や、そこで本当に成長して社会を変えていったスタートアップとその予備群の話が一杯網羅されていた本書を読んでだんだん元気が出てくる自分がいた。経済が延びIT利用率も上がっている地域は中国とかインドとかあるだろうけど、一人一人を変え社会を前進させるプロセスがエコシステムとして高度化している地域はここくらいだろう。
もちろんシリコンバレーが全てではない。今、僕たちがスタートアップする理由は一つ。自分がやりたいことを全身全霊で実現して、地域を日本を、世界を元気にしたいということではないだろうか。
孫泰蔵さんのあとがきに「一隅を照らす」という言葉があった。これは僕の生涯の命となる考えであり、いつも心の内に大切にしている。それはどんな人にも力があるという意味で、IT&ネットならそれが実現できると信じている。だから今、ITスタートアップの機運に、ありのままの自分の直感を信じ、邁進し、隠さず、周囲の人や地域、コミュニティと共有し、それぞれが実現する新しいメソッドが中心となる社会を作り出すことが大切だと思ったんだ。
誰だって自分の心が震えるメロディーをかき鳴らしたいはず。ITスタートアップ予備軍そして、一人一人が自由に生きられない疎外された村社会的閉塞感を打破するために、全ての人にITスタートアップについて考えて欲しいと思う。
広義のスタートアップ支援をするのは僕も同じ。もちろん自分だって猛烈なシリアルアントレプレナーなわけで、こういった魂の込められた本の執筆に狩り出されるくらい力を付けたいと心から思う次第。スタートアップ応援事業を生涯続けようと改めて思う一冊だった。
夢を叶える技術者。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてのIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。活動タグは創出・スタートアップ・マーケティング・音楽・子ども・グローカル・共感 (現在、書籍「共感資本主義」執筆中)。書籍情報・ 詳しいプロフィールはこちら