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スタートアップよ企業の活力となれ 【増田 @maskin】


[読了時間: 5分]

 「かつて栄光に輝いていた企業たちがみな元気がありません」というのは大企業の経営指導などに当たってきたブレークスルーパートナーズの赤羽雄二氏。

 実際、かつては日本の独壇場だった製品カテゴリにその影はなく、日本以外の企業の名前を多く聞くようになっているのが現実だ。

 一方で、かつてのITバブル時代とは異なり、あらゆる業界にインパクトを与えようと着々と実力を付け続けるのがITスタートアップだ。まだまだ、小さな種の段階だが、これを殖やし育てることで、企業活力になる可能性がある。




 ITは知識と技術と才能で価値が生まれる世界。国土の少ない日本には最適だ、というのが筆者の意見。例えば、ソーシャルゲームは日本をリードし、世界と戦える体力をつつあるのは一筋の希望と言える。

 一方で、これから始まるであろうITスタートアップの活性化により、あらゆる業界業種に力を与えられるようなチームが生まれつつある。まずは、このようなITスタートアップを支援し、育てる必要があるものの、これをオープンイノベーションとして企業が取り入れることで、より多様な業界の活力なる可能性が高まりつつあるのだ。

 では、どのようなコラボレーションの可能性があるのか、ごく一部ではあるが、この1~2年のスタートアップと企業との関係で顕著なケースを紹介したい。

将来の市場形成、ex.大カテゴリ「スマホコミュニケーション」

 TechWaveが早期からフォーカスしていたスマホコミュニケーションの分野で成功したスタートアップとしては2011年5月12日にリリースされたソーシャルプリクラ「Snapeee」がある。開発したマインドパレットの代表 小林佑次氏は、ありがちなデコアプリをではなく「コミュニケーションの多様化を通じ日本のカワイイの流通網を形成したい」と、現在一大カテゴリをなったスマホコミュニケーションの可能性を見すえていた。

 それ踏まえ「将来有料アイテムの提供や企業とのコラボレーションなども計画」した上で、ノンプロでアジア成長。グリーと資本業務提携することで企画開発力を増強することに成功。次なる展開が始まっている。

 このようにマーケットリーダー的に少しずつ市場を開拓し、一定のユーザーを獲得したコミュニケーション頻度の高いサービスには、消費者の接点として企業ブランディングのための「公式アカウント」の需要が生まれることになる。Snapeeeでは、あのPEACHJONとのコラボを実現するなど、日本のカワイイを伝えるプラットフォームとしての地位が確立されつつある。

公式アカウント

 このように一定のユーザー数もしくは、そのコミュニティ密度 (つまり特定のカテゴリーに属すると考えられる層が集まっているか、またコミュニケーション頻度) に左右される面はあるが、CGMやコミュニケーション型サービス等の公式アカウントを販売する方法が定着しつつある。

 例えば、Snapeeeと同時期、2011年6月23日にリリースされたスマホメッセンジャー「LINE」は、ずばりスマホコミュニケーションという未開の地を開拓したサービス。Snapeeeと同じくノンプロで世界を席巻する勢いを身につけ、今や公式アカウントの雄となっている。例えば最もフォロー数が多いローソンでは、1回のクーポン配信で十万単位で人が動くほど。

 ローソン等の大手の事例で興味深いのは、1サービス/アプリに限定せず、複数のスタートアップのサービスで公式アカウントやコラボを展開している点。大企業のスタートアップ連携は、適材適所で蜘蛛の巣状展開をしているケースが多い。

 スタートアップのサービスにおける、公式アカウント展開で最近最も注目されているのが電通→GQ JAPAN(コンデナスト)編集を経て起業、2011年11月28日にサービスインした山本 憲資氏の「Sumally」だ。

 スタート直後からNTTドコモやリーバイスなどの公式アカウントを運営し、最近ではジャーナルスタンダードを筆頭とするブランドとのコラボ展開、パルコとのキャンペーンでは、パルコ側サイトを巻き込んだ展開に発展している。


コ(共同)・ブランディング

 公式アカウントは、企業と消費者の接点として、消費者のコミュニティの中に投入されるモデルだが、食写真アプリ「miil (ミイル)」のように、「ミイル」× 映画「009 RE:CYBORG」×「宅麺.com」といった、他者サービスを巻き込み映画のブランディングに貢献するといった共同ブランディングの可能性もある。

 共同ブランディングは「市場を食いあわない」「共同展開することでブランディング力が向上する」という条件で展開される。日本では近年まであまり見られなかったが、キティxモンハンなど「コラボ型アイテム」として多数展開されるようになってきている。

 共同ブランディングはおもに広告予算やソーシャルメディア施策予算で展開されることが主になるが、取り組み自体に綿密な設計が必要となることから、企業担当者が直て仕掛けるケースも出てきている。効果が見えにくい部分もあるが、キャンペーンのKPI(最重要指標)を定義して評価すればいいだけの話で、逆にスタートアップのようなフットワークの軽いチームが中心となって仕掛けるのには最適なモデルのように思える。

意外と注目されない企業向けサービス、求める声も

 2010年頃から活気を帯びてきた日本のITスタートアップにおいて、完璧に欠如していたのは「企業向けサービス」という感覚だ。広大なブルーオーシャンを見過ごし、多くが消費者向けアプリという荒波に突っ込んできた。

 「企業側にスタートアップからサービスの需要があるのか疑問」という意見も聞かれるのだが、筆者がヒアリングした限り資金力のある大手企業のトップ数人に聞く限り、「業務提携だけでなく、投資したいくらい。紹介して欲しい」という声ばかりが締める。

 ただもちろん、企業には企業なりの課題と問題解決の手段があるわけで、それとマッチするかが最大の焦点となるわけだが、そもそも消費者向けにしか向いていなかったスタートアップが、企業向けに舵を切ることで大きく転換する可能性もあるのを忘れてはならない。

 例えば、現在企業向けSNSを展開するスタートアップ「Talknote」は、当初消費者向けの汎用サービスとしてローンチしていたが、企業向けにピボットすることで大転換。某展示会では、たった2日で数千人規模の社員を抱える企業との提携が決まり、現在も成長中だ。


 スタートアップの最大の問題点は「マーケティング感覚」だと言える。何がどのようの動き、どう成長するか、何が障壁かが見えていないばかりか、調査も不十分で市場の存在すら確認できていないケースが多い。

日本企業のオープンイノベーションとスタートアップ

 この問題は経験値に直結する問題とも言える。スタートアップという未知の領域を開拓するのだから、見えなくて当然と思われがちだが、「良いものを作ればいい」と何が良いかわからないまま猛進しても成功するのは一握りにもならない。確実に成長するには、力のある企業とのコラボレーションが一つの解であると思う。単独でやる以上の苦労もあるだろうが、収益にも繋がる可能性があり何よりスタートアップの成長に寄与することだと思う。

 また、企業側にもスターアップ支援の必然はあると考えられる。前出の赤羽雄二氏は「中堅・大企業の改革と新事業立ち上げへのヒント 日本企業の組織的課題を打破  | 日本が世界を動かす」という記事の中で、スタートアップを企業の改革に取り組むオープンイノベーションの必要性をといている。

 世界ITの中枢である北米シリコンバレーは、まさにスタートアップを取り込んだイノベーションで大企業を新陳代謝させ成長させてきた事実があり、今や力のあるスタートアップの立場の方が強いケースも散見されるほどになっている。

 日本のMOVIDA JAPANは「2030年までに日本をアジアのシリコンバレー」にと、1000の革新的なスタートアップに投資をして、10万人の雇用を生むと主張している。同じように考える投資家も多いだろう。

 スタートアップとは、経済における前向き発想の集大成だ。企業を活性化するようなスタートアップが沢山登場することで日本は大きく変わるだろう。しかし、まだまだ事例としてもイノベーションと言える状況とは言えない。今こそスタートアップ支援を日本全体でやるべき時期にきているのだ。


11/21 「club VANGUARD」
豪華ゲスト登壇! スタートアップのための定例ネットワーキングパーティ
11/27 「Penta Tech Meeting」
オープンイノベーションのためのスタートアップショーケース

【関連URL】
・中堅・大企業の改革と新事業立ち上げへのヒント 日本企業の組織的課題を打破  | 日本が世界を動かす | 現代ビジネス [講談社]
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33705

蛇足:僕はこう思ったッス
大企業 x スタートアップによるオープンイノベーション。11月27日のイベント「PentaTechMeeting」のテーマだが、企画を進めてみて、いろいろな問題に直面している。ただ、どれもこれも意識の問題。今まで、この方向を主張するスタートアップ側の意見が少な過ぎた。だからこそ、11月27日のイベントには、スタートアップ、そして企業側の人に是非参加して頂きたい。ぜひ、オープンイノベーションにおける共通の課題を抱えていただき、スタートアップとのコラボレーションについて考えて頂きたいと思う。
著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 夢を叶える技術者。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。道具としてのIT/ネットを追求し、日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 Rick Smolanの24hours in CyberSpaceの数少ない日本人被写体として現MITメディアラボ所長 伊藤穣一氏らと出演。活動タグは創出・スタートアップマーケティング・音楽・子ども・グローカル・共感 (現在、書籍「共感資本主義」執筆中)。書籍情報・ 詳しいプロフィールはこちら


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