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TechWaveが、LINEプロジェクトに注目したのは2011年4月の頃。理由は「入念に調べあげている」点、「絆をケアするというキーメッセージにフォーカスしている」点、そして「無駄のないチームの形」がある点に注目したからだ。
LINEがリリースされた際の記事で僕は「スマホ以前のプライベートメッセージングをまるっとカバーする可能性がある」とまで記しており、その通りになった。数千万ユーザー規模まで育つまでLINEチームは10名程度にすぎなかったが、彼等の奮闘に僕は夢中になっていたのだ。
ずっと謎だった部分がある。なぜ、このチームは1点にフォーカスして突き抜けられたのか? という点だ。
日本のみならず、事業というのはまずどれだけ儲かる?という前提で動くもの。金の匂いがはっきりと見えていないと、企画書やら稟議やら負の遺産ともいえるビジネス慣習によって人が動く前につぶされる。ところがLINEは、企画書もなく、収益を得るための計画もない。ユーザーが触れるアプリのデザインを前に、プロジェクトの牽引者があれこれ奮闘していた。常識ではありえない、しかし、この創造プロセスに感動すら覚えていた。
そして遂にその謎が明らかになる時がきた。LINE株式会社CEOを2015年3月一杯で退任し、新しい動画メディア「C Channel」を創業した森川亮 氏の著書「シンプルに考える」には、LINEがうまれるべくして生まれた基本となる要素がまんべんなく語られている。
森川氏の仕事に対するスタンスは、本のタイトル通りとてもシンプルだ。仕事の本質は「ユーザーに対する価値を高めること」。「ヒット商品を作り続けること」とまで言う。極端に聞こえるかもしれないが、ユニクロ柳井正 氏が絶賛するハロルド・ジェニーン 氏の著書「プロフェッショナルマネジャー」にも同じような表現が散見される。ユーザーに対して事業をやっている以上、それを達成することが経営であり、会社の存在意義である。ブランドや収益、社員満足などは後からついてくるものという考えだ。
森川氏はそのために、率直に意見を言う社風を作り、無駄な会議やユーザーを無視して自分の利益だけを追求するような破壊者的存在を排除し、ただ1つの目標のためにユーザーとプロダクトと相当な熱量をもって向きあう人だけを集め「ユーザーが本当に求めることを提供し続けること」を最重要事項だと提言する。表層的な価値なんていい実質のみを追求しようという考えだ。
LINEチームに浸透していた「シンプルに、1点に」
振り返ると、LINEプロジェクトには「シンプルに考える」エッセンンスが含まれていると感じさせられることが何度もあった。
・急成長「LINE」の真実、一周年記念独占インタビュー 【増田 @maskin】
http://techwave.jp/archives/51742831.html
・その他、TechWave内のLINEの記事
http://techwave.jp/tag/line
・「企画書はない」→
ユーザーが触れる画面デザインを徹底的に検証して、納得がいくプロダクトとして成立するかを判断してから作る。「チームがイメージを共有し現実を見据えられる」ように心がけていた。すばらしい企画書でも、不十分なプロダクトが生まれるとは限らないので納得。
・「要素追加ではなく1点にけずる」→
LINEは、リリース年の2011年12月にTV CMを投入している。放送はたったの3回。しかし大きな話題を呼んだ。当時、舛田氏は「CMも、LINEと同じように、目て見たものをその場で何度も修正しながら短期間で作り上げました。要素を追加するのではなく、削りまくって、伝えたい1点を表現する。だから制作コストも押さえられ、パフォーマンスも見えやるくなるんです」と語っていた。
・「手っとりばやく広告や金になる企画はやらない」→
LINEのアプリ内には広告がない。手っとりはやく稼ぐなら広告やソーシャルゲームなどを展開すればと思われがちだが、LINEチームは「快適なコミュニケーションが最も重要」と、その1点に反するものを排除する方向に動く。
じゃあ、何で稼ぎ、どう成長計画するの?という質問には答えが出ない。書籍「シンプルに考える」では、当然リソースも限定的だしチームも不安になるけだが、未来が見えないからこそ可能性は無限にあり、考えつくすことで成功が生まれると語る。最終的にはユーザーに価値を提供することができれば、差別化も競争も必要ない強みが生まれる、ということ。
・「コアメンバーがユーザーレビューを見ながら企画をきめる」→
書籍「シンプルに考える」では、計画者と実行者を分割しない。ということを強く推奨している。
どこの会社にもあることだが、何もやらない何もしないのに仕切る人がいる。現場でユーザーと対峙して奮闘する人が中心にならない以上、ユーザーに価値なんて提供できないというのは少しでも考えたら当然の話。ただ、これができている企業、チームは思いのほか少ないのだろう。LINEは、当初からコアメンバーが主役で、現在もユーザーレビューをしながら企画を詰めるというスタンスは変わっていない。
・「スマホやPCのシェア調査などもやめました」→
LINEの企画が生まれる際は徹底した調査をしていたが、無駄だとわかればやめる。「LINEがどうしてノンプロモーションで成長するのか。どうして世界で普及するのか、調査して究明しようとしていましたが止めました。前例がないんです、仮説が通用しない全くの未知の領域へ突入しているんです」(2012年6月 舛田氏)。
以上、過去のLINEチームへの取材と、書籍「シンプルに考える」に書かれていることを整理してお伝えした。どれもこれも、普通の会社にはない発想だし、批判などを乗り越える勇気が必要だ。「うちの会社は無理だわー」と思う人が大半だと思う。
しかし、書籍を読めばよむほど「何でこの仕事をやっているんだろう」「この会議は何のためにやっているんだろう」「自分はどこにむかっているんだろう」という気分にさせられると思う。それは、ビジネスの本質に最も近い概念が詰め込められているからだと思う。
「働く」を再定義するきっかけに
社会には表面的な価値を追う風潮が蔓延している。
本書でも触れられているが、今の新卒面接では「あなたはどうしてこの会社を選択したんですか?」ときくとホームページの理念を完璧に暗記して、コピーロボットのように返事をするのだという。森川氏は「当然不採用」と書いているが、こういった話はよく耳にする。
「ブランドから離れられなかったり」「社風を守ったり」「差別化」を計ったり、「成功に奢ったり」、やたらと「戦いを挑んだり」。これらはすべて、ユーザーへ価値提供することとは直接関係ないこと。有名人や大御所を呼んで、結局中身はゼロというのも本末転倒。
会社は気持よく働けるようにすべき。そうだとは思うが、それは目的ではない。一体、何を誰のためにすべきか、それらをシンプルに1点に見定めることは、とても大変なことではあるが、これらの話は、「働く」ということを再考する上でとても重要なことのように思うし、全てのビジネスマン、マーネージャ層、経営者に爆発的なパワーを与える内容だと思う。
【関連URL】
・シンプルに考える | Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AB%E3%81%AB%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B-%E6%A3%AE%E5%B7%9D%E4%BA%AE/dp/4478066345/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1433573658&sr=8-1&keywords=%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AB%E3%81%AB%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B
・家族・仲間との絆をグループチャットでケアしよう! NAVER「LINE(ライン)」がイイっす
http://techwave.jp/archives/51677385.html
夢中になって読んだ。電子書籍端末にいれ、何度も何度も読みなおした。LINEチームにおける、すべての謎が一気にクリアになったと共に、全身がふるえるほどの感動に包まれた。
彼らは本当の1stペンギンなのだと思う。一つの光明をたどり、危険に満ちた未知の世界へと突き進む。
僕達は、彼等の轍をふみつつ、さらなる前進を続けなければならないと思ったッス。