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LINEプラットフォームの完成形が見えつつある一方で、LINE取締役 CSMO 舛田淳氏(写真)がまだ不十分だと考えるのが「スマートフォンの普及率」だ。彼が2016年3月24日に開催した「LINEカンファレンスTOKYO2016」の檀上で見せたのは2015年末時点における国内スマートフォン普及率49.7%という数字(出典:日経BPコンサルティングとのこと)。
スマートフォンのポータルを標ぼうする同社としてはこれを押し上げる必要がある。決済やポイントサービス( LINEがカード事業&ポイントサービス展開、LINEプラットフォームの中核が完成へ 【@maskin】 )を拡充しようもフォーカスしているスマートフォン利用者層という土台が十分に成長しなくては本領発揮に至ることができないからだ。
その打開策の一つが、今回発表されたモバイル通信事業「LINE モバイル」といえるだろう。通信キャリアから回線を借り、それを再販することでサービスを展開するMVNO(仮想移動体通信事業)モデルで、価格は月額500円から。2016年夏にもサービスインしたい考え。LINEプラットフォームのサービスで発生する通信には課金しない「無制限」モデルを導入することで差別化を図る考え。TwitterやFacebookという2つの主流コミュニケーションサービスへの無課金やLINE MUSICの無制限対応もあわせて表明することで発表会場のオーディエンスには驚きと関心をもって受け入れられた。
ただ一体どこからどこまでが無料なのか、その線引きや具体的な料金体系は明らかになっていない。過去、LINEはモバイル通信事業への参入を否定してきただけに、決定打といえる事業構造もしくは市場における何らかのけん引要素を明らかにすることが不可欠だろう。もちろん無料を歓迎する声は多く、土台固めが進む決済スキームやポイントサービスと連動した消費者の経済メリットは大きな原動力となる。舛田氏は「これからもMVNO格安モバイル通信は成長する余地があると判断している」と明言する。しかしながら、MVNO型の通信モバイル通信サービスにはやらなくてはならないことが山ほどある。
格安スマホは市場をけん引するか?
そもそもMVNO型の格安スマホの市場は、スマートフォン市場全体から見れば2.1%に過ぎない。スマートフォン端末販売動向をみれば、2016年2月1日より実質ゼロ円などの販促策が廃止されることで多少なりの混乱している状態。MVNO型の格安スマホには追い風が吹いているように見える。この1-2年で多数の事業者が参画したのはご存知の通りで、販売店インセンティブなど加熱傾向が見えてはいるものの、劇的に成長するような兆しがみえているというわけではない。
仮に本当に月額500円でLINEやFacebook,Twitterが使い放題になったとして、競合他社がどう動くかを考えると決して独占的な優位性をもっているとはいいにく状態。また、対応端末は平均2-3万円程度とはいえ大半はおさいふケータイなどには対応しておらず、安いなりの機能にとどまっている。もちろんNTTドコモの端末であればSIMカードを入れ替えるだけで引き続き使用することはできるが、結局、新機種への買い替えには一定の障壁があることを否めない。
舛田氏は「専用デバイス・・・・それは検討している部分ではあるけれど、現時点では何ともいうことはできない」というに留めており、実際「LINEモバイル」の格安&無制限というユーザーメリットが成長原動力としてどれだけ一般消費者層に浸透して業界を巻き込み経済環境を変化させるか、始まってみないと何とも言えないというのが現状のようだ。
ただしMVNO周辺では、これまでの商慣習に依存した多様な規制が解除されつつあり、特に技術面などで劇的な緩和が次々と検討されている。MVNOというと格安モバイル通信ばかりが目に映るが、1996年からMVNO事業を展開する先駆者である日本通信はここぞとばかり多様な技術サービスを展開し始めている(参照)一方「LINEモバイル」には格安以上の優位性がみえにくい。
なお「LINEモバイル」発表翌日の2016年3月25日、日本通信の株価(東証9424)は前日比7.08%下落している。
では、「LINEモバイル」はMVNOモバイル通信市場ひいてはスマートフォン利用者市場を変えることはできるだろうか。おそらく、この疑問はモバイル通信サービスとのものの課題ではなく、LINEプラットフォーム環境の完成度を投影した結果になるように思う。サービス事業者がやる無料サービスは、おそらく他社も追従するのは間違いない(例えば楽天モバイルが楽天アプリの使用を無料にするとか)。価格メリットではなく、LINEという世界観におけるユーザーメリットの原点に振り返らなくては、LINEという巨大な次世代網を強固なものにすることはできないように思う。